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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

新人、頭が回る

作者: 孤独

この仕事に新人さんがやってきた。今年から働く新社会人だ。

随分とやる気があるような言葉を問いかける。


「や、山口先輩。どーやったら、先輩のように仕事ができるんですか!?」


指導係の山口は自分がここに来た頃と重ねた。

厳しい言葉をもらったものだ。


「コツはある。とても簡単なコツがある」

「そ、それは……」

「とりあえず、3年。この仕事をしてみること。まだ覚える事の多い新人が、経験重ねた先輩と並ぼうという事は考える必要ない」


意地悪というか、答えになっていないというか。

教えられないのかと思われる。しかしだ。


「ただ俺達が配達しているだけの仕事だと思っているのか?」

「!い、いえっ……めっちゃ違いました!」

「荷物の整理に、車の運転、お客様個人個人の対応と……。まだまだ仕事を知らない人が、俺達のように仕事ができるには覚えることから。覚えてからコツを教えてもらったり、自分で考えたりするもんだ」


覚えなきゃいけない事をまず、全部覚える必要がある。

英語だったらアルファベットから覚えて、単語覚えて、文法覚えて。そして、ようやく英会話というタメになる技術が身に付くものだ。どーんな仕事もそーいう基礎から始まる。その基礎作りは並大抵ではないこと。一瞬で過ぎ去ったかもしれないが、学生という期間の内に学ばれる身につけ方だ。

この基礎を疎かにしていると、ミスの多発やスムーズな業務が行えないものだ。


とはいえだ。


「でも、なんか。他にあるんじゃないんですか?無駄なことを省くとか」


新人だって焦りがある。1か月なんて研修生程度の扱いではあるが、それからは完全な独り立ちをしなければいけない。焦って技術を欲する気持ちは分かるものだ。誰だってそーして来ている。堪えるとは難しいものだ。

山口はどーいう顔をしただろうか。新人さんにでも、今からできる積み重ね。


「まず、車は安全運転を心がけること。車から降りて配達する際は極力走れ。4階くらいまでなら階段ダッシュ。マンション内も廊下ダッシュな。声掛けする時は、騒ぎ過ぎない程度に大きく声を出せ」

「…………へ?」

「技術や小細工云々より、体力と集中力、気力の持続が仕事において最も必要な能力だからだ。若い内に体力をつけないと、仕事を選べなくなる。明日から頑張って取り組んでみろよ」

「……わ、分かりました……」



◇    翌日    ◇



『1年間もこんな仕事はできません。仕事辞めます。キツイです。若い内に他の仕事を探したいです』


新人さんの辞表が置かれ、辞めてしまったのだった。


「山口テメェ!!どーいう指導してんだーー!!」

「俺かよ!?俺が悪いのか!?これ!」


賢過ぎると、地道に教えて、身につけさせるという事がとても大変だと思う。

そんな一日であった。



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