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外部指導者の是非

内容は少し難しいです

夏と切り離された冷気の効く部室では机と椅子を全員で動かしていた


怒っていた少女は明らかに行動が遅いがやる事はしっかりやっている。それに神無と呼ばれている無口で感情を殆ど露わにしない少女も印象と裏腹にとても良く働いている

その神無は首にε=(-ω―;)フーッと書かれた画用紙を下げ少し不思議に思える


結人は唯に物の配置場所等を聞き働いている。偶に怒っている少女とすれ違うと小学生の様に足を掛けて来るが、その程度の嫌がらせでは引っかからない結人は軽く避け少女は更に怒りを露わにした

これは完全に少女が悪いのだが


そして人口密度と少女たちの運動量で冷房の効いて居る室内は少し熱く感じるように成り部屋全体は完成した


部屋はホワイトボードと進行役の椅子と机が部屋の奥に備え付けられ、それの後方に左右対称で参加者の机と椅子が置いてあった


よく見る会議の部屋と作りは同じである


そして唯が奥の進行役の席に座り左に結人、右に少女達と言う配置に成った


配置に着くと机の運搬で汗を流していた神無が汗を拭きながら手を挙げた


「唯先生、このディスカッションの是非を決める観客たちが居ないのですがどうするのでしょう」


結人に指示を出すと言う名目で仕事量が減っていた大人として汚い唯はわざとらしく汗を拭きながら顎に手を当てた


「他の先生を呼ぶ事は出来ないし、休憩中の学生を呼ぶのは公平かどうか分からないしねぇ。先生が進行役と観客の両方をやるしか無いかな」


その二人の遣り取りを冷房の風が直に当たり涼んでいる結人が軽く手を挙げた


「待ってくれ、俺殆どルール知らないぞ?」


「え?弟よ!知らなかったの?」


「衝撃の事実。元天才詐欺師、常識であるディスカッションを知らないカタ((;Ⅲ゜口゜∥))カタ」


その衝撃告白に各々は様々なリアクションを見せた

少女は呆れを通り越して再び一部業界に大人気の軽蔑の目を結人に向けて

神無は無表情だが画用紙を高速で捲り絵文字を出し

唯は生き別れた兄と初めて対面する兄妹の様に衝撃を隠しきれないでいた


それと対照的に結人は微動だにせず涼みながら続けた


「だってやる機会無かったしな。小学校受験と小学校に入学してから何回かやった思い出はあるが簡易的で幼稚的過ぎるし、尚且つ覚えていないし。それにその後は全部推薦だから受験時は学力テストしかしてないからディスカッションはやって無いしな」


「それでも週に2回は小中高で授業としてディスカッションがある筈?('д'Ξ'д')?」


「入学してやった時何かがあってその後、俺だけ見学だったから分からないな。内容も殆ど聞いて無いし」


その発言を聞いた刹那神無と唯は隅に集合し小声で話し始めた

「どういう事ですか?ん?(。_゜)??」

「そういえば問題になってたわ、4回のディスカッションの授業で4人違う子供を泣かせて今後は見学になるという事件が・・・」


ディスカッションは授業として扱われているが存在は総合や学活、道徳と同列として扱われている

理由は授業数が多くないのと成績の付け方の問題、そして一番大きいのがテストが無い事である。議論等での答えは存在しない。その為テストが無く作れないのだ。

その為成績は付けられず問題児の結人などは見学という対処を取られたのだ


「それで授業の内容を聞かずディスカッションを知らないと言う訳ですか?ヽ(´―`)ノ」

「多分ね」


その会話に参加はしてはいないが聞いて居た少女が結人の無知を突きたく大きな溜息をわざとらしく出して足を組んだ


「ディスカッションも知らないのね。良いわ、私が教えて上げるわよ」


「ありがとう」


「まずディスカッションは一つの議題に関して3対3で否定派、肯定派の二つに分かれて意見を言い合うの。流れ的には意見を否定派が一つ言ったとして、その意見を言い終えたら肯定派の反論。その意見に対する質疑応答を繰り返すわ。そこで論破したり矛盾点を見つけるのがディスカッションね」


「それを観客と呼ばれる人がどちらが優勢だったかを判断して多数決で勝敗を決めるって事か」


結人の理解が早く少し物足りない気分になるが、それを表には出さず大きく頷いた


「そうね、今言ったのが簡易的だけど一般的ね。だけど企業とかがやるディスカッションはその意見を聞いて一つにまとめると言う勝敗が無い物だから間違えないでね。で今回の観客は公平性的に唯先生がやるわ」


観客を唯ではなく学生がやるという選択肢もあるが。学生は公平性に欠けると判断される為原則認められない。

学生の公平性に欠けるとは選挙と同じ感覚である。情報量は選挙と比べ少ない為真面に判断できると考えられるがそれでも理解の苦しむ場面が出る事は多々存在する為認められない。

その為普通のディスカッションでは原則学生の観客は認められないのだ


その一連の流れを見終えた唯はストップウォッチを右手に構えた


「議題は元犯罪者、この議題で言う元詐欺師が外部指導者と成る事は肯定か否定かの議題。結人側は肯定派、神無達側は否定派で良い?」


「問題無い」

「文句はないわ」

「早く始めよう( -д-) 、ペッ」


「では代表者は前に出てください」


これは意見を先に発表する為のコイントスである

そして結果的には少女達が先となった


「では否定派の人達は意見を5分以内に述べてください」


唯がストップウォッチを押すと結人の事を嫌っている少女が椅子から立ち上がった


「一つ目は再犯率の高さです。日本では減少を続けていますがそれでも3割前後の人物が再犯を行っています。これは3人に一人が再犯を起こす高確率だと考えられ学校の名誉は勿論、そんな犯罪を起こす可能性のある人物に指導を仰ぐのは親、私達的にも不安でしかありません。一つ目の意見は以上です」


唯がストップウォッチを止め肯定派の結人に振り向いた


「これに対して何か反論はありますか?」


その言葉を聞き唯の方を向いて頷いた後立ち上がった


「再犯率に付いて再犯するまでのプロセスが理解出来てないと思います。現状、再犯する者の大半が社会に馴染めない事が理由です。日本と言う国は経歴に前科が付くと周りからの扱いが厳しくなります。それにより社会復帰が上手に行かず、また再犯と言う事に戻ってしまいます。これは飽くまでも自分が刑務所に入っていて刑務官と同じ犯罪者に聞いた話なので特にデータは存在しませんが事実です」


「唯先生、良いですか?」

「良いですよ」

結人の発言を聞き終え少女が手をあげ立ち上がった


「まず、データが存在しないと言う時点であなたの主観に過ぎない物だと私達は認識します。それに最近では再犯した者達の社会復帰を手助けする行為も存在するそうです。それの存在に手を借りない時点で情報収集能力等に問題があり元から社会不適合者なのでは無いでしょうか?」


そしてその少女の発言に触発されるように結人は手をあげ再び立ち上がった


「まず、データの話ですが一部のケースではありますがが法務省保護局は有職者と無職者で再犯率が大きく違っているデータを出しています、これを鑑みても社会復帰の大きさが私の主観だけでは無い事が分かります。」


少女が勢いよく立ち上がり微笑を零した


「それは職業を持てる数少ない真面目な人物なのでは?」

「意見を遮らない様に」


唯が指摘すると静かに座り不敵の笑みを浮かべた


「それは前提的に間違っています。職に就いたから社会復帰が出来て再犯を行わなかった。プロセスはこれです。もしあなたの先程の意見が正しいとすれば前科持ちで職に就いた者が再犯を起こしているのが不思議ではないですか?再犯を起こさない数少ない人が職に就いている事が前提なのに職に就いたのに再犯を起こしている事実がある。そうなると少々理論崩壊してますね」


結人がその言葉を愉悦に浸っている少女に向けると少女は少し慌てながら反論を考えるが、咄嗟の事で出て来ず意味の接続語が出て来るだけだった


「そっそれは・・・」


「まだ意見を述べてる最中なので発言は控えて貰えますか?」


そしてそれを見た、結人は子供をあやす様に口に指を置いて更に少女を挑発した


「・・・・・・」


「で、もう一つ。情報取集能力が上手に出来なかったら社会不適合者と言うのも間違っています。一部には自分のした事が後ろめたくてそれを活用できていない人たちが居ます。それも使わないだけで社会不適合者に分類されるのでしょうか?それにあなたのその論理で行くと社会に居る情報が集められない所謂、情報弱者が社会不適合者になりますよね?」


結人の発言に反論をしたいがすれば結人の思う壺であり、それを理解している少女は顔を赤くするだけで立ち上がれなかった


しかし、それを代弁するかのように神無が立ち上がった


「それは前提的に間違っている(`τ´)」

「神無さん、意見は最後まで聞きましょう」


その遣り取りを見ていた結人は微笑を零し神無に手を向けた


「どうぞ続けてください、どんな意見なのか気に成ります」


「ありがとうございます、まず前科持ちと一般の方では立場が違います。一般の情弱と言われる方は追い詰められてはいません。それに対して前科持ちの方は反対にその情報が命取りな訳です。簡単に言うと情報の重要さが違うと言う訳です。レ(゜□゜レ)」


[では老人の情報弱者はどうなりますか?地方等でネットを使いこなせてなく相当不便な生活を送っている老人も捉え方によったらネットと言う情報は命取りですよね?それを使えて居なければ社会不適合者と言う事ですか?」


「えっ、えぇと(・~・:)」


神無が返答に困り大人しく着席をすると、結人はスーツのネクタイを締め上げ再び手を挙げた


「すいません、少々議題が逸れました。以上です」


「分かりました、肯定派は何か反論等はありますか?」


「無いです」


唯はストップウォッチを止めて結人の方を向いた


「では肯定派の意見を教えてください」

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