部活見学
投稿遅くなりました
結人は朝の6時に目が覚めた。
お酒に強い結人は二日酔いとかにはならず目覚めの良い朝だった、これから朝食を用意して唯を起こすまでを頭の中で整理していたら部屋の扉がノック無しでいきなり開いた
「おはよう!愛しの弟よ!凄いビックリしてたけど何してたの?」
「何もしてないよ、てか何でこんな朝早く起きてるんだよ?身支度も完璧で」
結人の目の前にいる唯は顔に薄めの化粧を施し、服装自由と書かれたどんな服装で行くのが正解か全く分からない説明会の模範解答の様なカジュアルだがきっちりとしている服装に着替えてあった
「何って、今日部活よ?だから早く着替えてるの。社会人として当たり前でしょ?」
「OK、社会人は弟の出所に30分遅刻しない事は置いといて。そんなに朝早いのか?」
「午後からよ。文化部が午前とか意識高すぎるでしょ」
「今、何時だと思う・・・?」
そう結人に言われバッグを持っている右手を徐に挙げて時間を確認した
「朝の6時12分ね」
「で、部活が始まるのは?」
「午後の12時よ」
「早すぎませんかねぇ」
唯はその言葉を無視する様に結人から布団を剥ぎ取った、いきなりの事だったが唯との会話で目が覚めていて慌てることは無かった
「ほら、速く行くよ」
「何で俺まで行くんだよ?!それに朝が早すぎるわ!!」
「だって、道に迷ったら遅刻しちゃうじゃない!」
「カーナビは飾りですか?」
手を顎に着けて深く考える素振りを見せて悟った様な目で結人を見つめた
「アウレオラって知ってる?」
「中世キリスト教美術に多い頭の上にあるあれだろ?」
「あれって意味あると思う?」
自分の姉が何を言っているのかいまいち分からず結人はリアクションに困るが唯の悟ったように見える無言の圧力で催促をされた
「聖なる者の頭の後ろに置かれるのがアウレオラだから。分かりやすくする為には意味があるんじゃないか?」
「我が愛しの弟よ、それは違うぞ。レオナルド・ダ・ヴィンチは最後の晩餐の絵に誰一人として光輪を描いてはいない。それが意味する事はレオナルド・ダ・ヴィンチ位の画家に成るとそんな物を使わなくても表現出来ると言う意味では無いか?」
「は、はぁ、」
若干理屈が通ってない様な一抹の疑問を抱きつつ姉の行く末を見守った
「簡単に言えば私くらいになるとあんなカーナビとか言う物は要らないって事よ」
「極度の方向音痴で機械音痴でもあるから使いこなせないって事か?」
「何でこの弟は真理を見抜いちゃうかな~」
そう言いながらゆっくりとしたペースで結人のベットに腰かけたそれとすれ違いになる様に結人は立ち上がり仁王立ちとなった
「で、俺は運転係って事か?」
「違うよ。昨日話したでしょ」
唯はそう言ってバックの中から昨日8割脅しで書かされた外部指導者契約書が出された
「覚えてたのか・・・?」
「何かお酒が気分良く呑めるな~と思ってたら隣が元天才詐欺師だった事を思い出して殆ど割ってたのよ」
結人は唯の記憶を飛ばさせるため完璧な接待を見せたがバレていたようだ
それを聞いてもポーカーフェイスを結人は保が、ひらひらと扇風機の風によって煽られている紙を見て降参した
「分かった、でも生徒が嫌がったらどうするんだ?」
「それは大丈夫、何とかするから!」
「何とかって・・・」
「我が校の教育理念はゲスで屑で最低な詐欺師にも優しく接する事だから」
「まずその教育理念が捏造なのは前提として俺の印象最悪過ぎるだろ」
それを聞いて唯は少し伏し目に成り声のトーンが少し下がった
「結人の事を今知ってるのは私だけ。世間から見たらそういう事よ」
「知ってるよ」
それを聞いた途端唯はいつもの調子に戻り明るく下に駆けて行った
「じゃ、運転係も任せたわよ!」
「俺が運転するならこんなに早く出る必要なくね?」
階段から明らかに転げ落ちた音と唯の近所迷惑ギリギリの悲痛を聞き結人は部屋に拵えてる時計を見た
(まだ6時40分だぞ・・・)
深くは考えず昔のままの姉だと勝手に思っていて足元を掬われた結人は軽い憂鬱を覚えながら唯が転んだであろう廊下を下った
廊下を下り終えソファーに目を移すとピクピクと軽い痙攣なのか遂に頭まで行ってしまったのか分からないが寝ていた。
そして頭は最初からいかれてるから痙攣だなと悲しい事実を呑み込み台所へ向かった
テレビは朝の5分程度で流れる天気予報を流しアナウンサーのお姉さんが
「今日も一日頑張って」
「朝の7時をお知らせします」
と今回も時間の報告に後れを取り被ってしまう放送事故だが最早名物と化してる天気予報を見てパンが焼けた
それと同時に電気ポットのお湯も沸きコ-ンスープを作り終えそれらをお盆に乗せて食卓に向かった
「あのお姉さんまた失敗してたね、愛しの弟はどう思う?」
「刑務所の中だったら一番人気だったぞ」
「嘘?!あの道10年だからもう三十路よ」
厳しい業界だった
そんな知りたくもない情報と共にパンとスープを平らげた
「でね、あのモンスターペアレントが運動会で生き別れの兄だった教頭先生と最後の300メートルデットヒートを駆け抜けて、ゴール寸前で戦う事の愚かさに気付いたんだけど時は既に遅く学校からの刺客により和解寸前で教頭がゴールしちゃって更に亀裂が入ったのよ」
結人が優雅に朝食を取って居たら唯の会話が意味不明な所に移動していた。ちょっと気に成るというか、何が在ったか知りたい内容で話を聞かなかった自分を悔やんだ
言い終えたと同時に朝食の皿も綺麗に無くなり再びソファーにダイブした
「11時に起こすからな」
「後5分が6回続くから10時半に起こして」
「分かってるなら自力で起きろよ・・・」
そして結人が食器を洗い終えテレビの電源を切ろうとしたら
「朕は国家なり・・・」
寝返りを打ちながらそうつぶやいた
「どんな夢を見てるんだよ・・・」
時刻は10時半を回り結人が唯を6回起こして出かける準備が整った
唯の服装は少し寝てたため崩れているがそのままで結人の格好はグレーに近いスーツを着ていて革靴だった
「熱くないの?」
「馴れてる」
短く言葉を交わし唯から車のキーを貰い車の中に乗り込んだ
手慣れた手付きでカーナビをセットし後ろから軽く感嘆の声が漏れているのを無視しながら車を発進させた
「もう一度聞くけどホントに大丈夫なのか?」
「何が?」
「元詐欺師が学校の部活顧問をやる事だよ」
唯は大袈裟に首を縦に動かし親指を立てて
「大丈夫だって!皆良い子だよ!愛しの弟位良い子達だよ」
「元詐欺師が良い子だとは思わないんだが・・・」
「気にしないで!もっと飛ばして!!」
「法定速度は守れよ」
元詐欺師とは思えない台詞が出てきたが唯はそれを意に介さず喋り続けた
30分程度走っているとカーナビが着いた事を知らせ
「最速記録更新です」
と機械音声が車内に響き、恐らく前回までのベストスコアであろう2位の時間を見ると3時間と書いていて良く生きてたなと心中つぶやきながら車を駐車場に停めた
この女子中学は中高一貫の為隣に高校が隣接されていて非常に大きい。それにこの学校は学力が高くそれを更に向上させる為に有志で毎月お金を振り込む保護者が多い、その為他の学校より敷地面積は大きく普通の中高一貫校の2倍位の大きさがある
校舎を見ても最新的でとても清潔感溢れる校舎だ、校庭にはまず学校では見ることは無いだろう電光掲示板まである
そんな光景に結人は軽く圧倒されながらも目的の部室を唯が先導して目指した
1時間位迷った後お目当ての部室が見つかった
「あ、あった...」
「自分の職場で迷子になるなよ・・・」
「だっていつもなら心配してきた生徒が案内してくれるもん...」
「そうですか・・・」
今日は11時半に着いたため、生徒はまだ先生は学校に来ていないだろうと予想し迎えには来なかったのだろう
もう約束の12時は既に過ぎて30分経って居るのだが・・・
それを意に介さず唯は大きく指を指した
「あれだよ!あれ!我が部活の部室!!」
指が指された先は最新の機械と清潔感溢れる校舎の様でも無ければ全面芝生で使われていない所は熱を下げる為スプリンクラーを回す良心的な感じでも無く。普通の公立中学校の部室がそのまま大きく成った様な感覚だった
簡単に言えば少し小汚い
広さは教室の半分くらい在り中々広いのだが先程まで歩いて来た道にある部室と比べると残念としか形容が出来ない物だった
「何でここだけこんなんなんだ?」
捕まっても元詐欺師の為ポーカーフェイスは崩していない
「色々あるのよ、速く入って」
答えるのが面倒な様な口調で適当にあしらった
唯の指示で結人は部室に入った
部室の内部は外側と違って清潔感溢れる綺麗な内装だった
クーラーが効いて居て外に居た体を刺すように冷やし、ホワイトボードは文字で埋まっていた。そして窓側にはブラジャーと思われる物がぶら下がっていて
(これはやばい・・・名門女子中学の部室に忍び込んだ20代前半の元詐欺師、女子中学生の私物と見れれる下着や衣類を見て逮捕。警察は不法侵入の疑いで起訴する予定です。とかに成る?!)
「お、俺出るね!!まだ早かったみたい!」
結人が自分の危機を察知して軍隊の行進顔負けの正確さと速さで回れ右をして後ろに振り返ると
「あ、あんた誰よ・・・?」
「何でここに居るんですか( ゜Д゜)」
時と運が悪く部室に戻って来た女子2人と遭遇してしまった
一人の女子中学生は顔を真っ赤にして結人を睨みつけ、もう一人の女子は無表情に近いが少しだけ警戒感を露わにしていて8103と携帯に打ち込もうとしていた。そしてもう一つの手は画用紙を持っていて、その画用紙を高速で捲り絵文字を再現していた
結人は現代の若者は凄いなと馬鹿な事を軽く考えた後、自分の置かれてる状況を思い出した
そして結人は絶望感を感じ刑務所の朝食の味を思い出すが気持ちを切り替えて首を大きく横に振り手は上にあげて降参のポーズを取った
「まま、待って!!怪しい者じゃないから!」
それでも少女達は警戒色を緩める事は無かった。それも当然ではあるが
「神無!速く電話を掛けて!8103、ハートさんよ!」
「了解( ゜д゜)ウム」
「待て待て!!その番号は被害者の為の番号だぞ?!」
「私達が被害者じゃないって言うの?!もしかして自分の行動を正当化するつもり?!」
神無と呼ばれた女の子が発信のボタンに指を翳そうとすると同時に結人は最後の希望である唯の方を見た
「ちょっと!捕まる前に見れるだけ見ようって言うの?!これは情状酌量の余地もないわね!」
「唯、俺の事をしっかり弁明してくれよ」
「分かっている。ちょっと落ち着け」
唯の言葉で神無と呼ばれた少女は発信ボタンから手を放した、間一髪だった。それでももう一人の少女は依然として結人を睨みつけている
「先生!こいつの肩を持つんですか?!」
「持つ持たないじゃ無くてこいつはお前達みたいなロリには興味がないぞ」
「中学生はもうババアって事?p(≧w≦)q」
「そういう意味じゃねぇよ!」
はぁ、と唯が深い溜息を貰し軽く手を叩いた
「ロリコンでも無いわよ。姉である私にしか欲情、愛情を捧げれない度を越えたシスコンなだけよ。だからあなた達のブラジャーなんかでは興奮しないわ。私の脱ぎたての靴下位持って来ないと駄目ね」
「どっちにしても変態かぁぁ!!!!」
「事実無根だし興奮もしないしシスコンでもない!!グッハァッ!」
少女の絶叫と共に釈明を続けていた結人の腹に綺麗な飛び膝蹴りがクリーンヒットした
結人は衝撃と痛みで地面をのたうち回るが嘘の証言をした唯は意に介さず駆け寄って来た少女たちの頭を撫でていた
「ごめんなさい、先生...私達が先生の事をもっと良く知ってたらこんな変態と二人っきりにさせて居なかったのに・・・」
「私からも謝るm(>д<・.)m」
「待て、信じるグハッァ」
少女が倒れている結人の鳩尾に革靴がクリーンヒットした
「喋るな変態」
「ダメ、こういう人種はこれがご褒美だから逆に喜ぶ(-д-)」
「だから、この弟は私でしか興奮しないから安心よ」
もう一発少女が結人のお腹を蹴り込みオーバーキルを達成した