本気
かつて太り御所と呼ばれ、馬鹿にされた男。武を嫌い、政を嫌い、食を愛した男。
動かざる事山の如し、働かざる事赤子の如し。
そんな男が立ち上がる。
「是非もなし。ついに本気を出さねばならぬか。ここは任せろ。」
北畠具房の背中に漢気が見えた。
「具房・・・。」
「あっ。」
北畠具房は1歩進もうとして膝を押さえる。そこに巨大カマキリが鎌を振り下ろした。鎌が具房に突き刺さる。
「具房ーーー!!」
何をしに出てきた!?本気って何だ?
消えかかっている北畠具房が何かを呟く。
「まだ本気を出していないだけだ。本気さえだせば・・・。」
北畠具房は霞のように消えていく。
本気、いつ出すの・・・?
戦場の空気は凍り付いていた。透は即座に次のカードを取り出す。
「出ろ!」
古風な大鎧を身に纏いし児山兼朝が姿を現した。
「多功長朝が臣、児山兼朝推参なり!」
手に持つ槍を頭上で旋回させ、石突で地を打つ。
「我が武を見よ!」
まだだ。もう1枚のカードからも呼び出す。真紅の鎧が動き出す。
「武田が赤備え、身をもって知るがいい。」
勇猛で知られた武田の赤備え、その一員である三井弥一郎も現れる。
「今、突然現れたよな?」
「さっきの男は消えたぞ。幻術師か?」
「まさか『ギフト』持ちか!」
荷馬車の男達が騒ぎだした。透に周りの目を気にする余裕などなかったのだが、迂闊であった。それでもまだ男達の相手をしている余裕等ない。
「2人は巨大カマキリを倒せ!」
そして荷馬車の前へと走る。そこには血だらけのベーカー・ルスイエがいた。急がなければならない。
カードを取り出す。このカードでいいのか?
「出てこい!織田信雄!」
それは賭けだった。