3日目
戦場の近くまで近き、日が暮れると眠りについた。怖くて眠れないと思っていたが、疲労のため誰よりも早く眠りについた。
翌日、日が昇る前に一気に戦場へと駆ける。夜明けと共に戦場で鉄の回収を開始するためだ。明るくなければ探し物はできない。しかし、明るければ敵に見付かる可能性がある。ゆえに早朝からの探索であった。
集団の半分以上が周囲の警戒にあたり、いつでも荷馬車を出せるようにしている。鉄を探しているのは僅かに20人程度。
周囲には人と魔物の死体がゴロゴロしていた。
「見つけたモンを寄越せとか言わねぇから、あんたも自由に探しな。ただし、逃げる時に逃げ遅れても助けらんねぇ。」
はい、命が大事です。荷馬車から動きませんよ。
そう思っていたんですが。見付けました。見付けてしまいました。見覚えのあるカードと袋を。袋の数とカードの数が合わないのは、魔物に殺されたカードの人がいるからだろう。夢中になってカードを探す。カードこそが命綱。探せ、探せ。
ピーという甲高い笛の音が聞こえた。魔物を発見した合図だ。
見渡せば荷馬車は離れた場所にある。カード探しに夢中になり、ドンドン離れてしまっていた。
皆が荷馬車に駆け込むのが見える。透もあわてて走り出す。
荷馬車はまだ走り出さない。透を待っていたわけではなかった。
荷馬車の前に数匹の大鴉が現れて威嚇していたのだ。
「どけぇ!」
雄叫びをあげてベーカーが斧を振り回すが、ヒラリヒラリと避けられて反撃を受けている。その間に透は馬車に追い付いた。だが、追い付いたのは透だけではなかった。3メートル程の巨大なカマキリも荷馬車に追い付いていたのだ。
「あかん。」
何故か関西弁になってしまう。
このままでは全滅だろう。
「馬車を捨てて逃げろ!全滅するぞ!!」
「いや、馬車の板を盾に身を守らんと。相手の方が速い。」
透の提案も却下される。
ポケットからカードを取り出す。今こそ力を見せつけろ。世界よ、これが侍の力だ。
「出ろ!!」
これより死闘の幕開けでござる。