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休日前の夜は

何もする事がない



居酒屋も

レンタルショップも

いつも二人だった



ゆっくり寛げる部屋が

居心地悪く



TVのチャンネルを変えても

雑音に感じ



行く宛もなく

車に乗り込んでいた



夜景など

見に行かなくても

橋に並ぶ

等間隔の外灯が

夜を演出する



流れるテールランプは

プレゼントを飾る

リボンに輝き



雨でも降れば

幻想的な風景を

醸し出しそうだ




この橋を渡らなければ

街へ繰り出す事が出来ず



何度 この橋を

二人で渡っただろうか




真夜中に

短い渋滞の列



各方面から

若者達が集う店



田舎町のドン・キホーテ



相変わらず

怪しげな改造車が

何台か連なり



一度は誰もが通る道を

辿っている若者達の姿は



やる事のない田舎町の

特徴なのだろう



駐車場さえ

グルリと廻される

混雑



空きのない駐車場を眺め

店前を通り過ぎると

クラクションが鳴った



集合場所にでも

していたのだろう



仲間の車に

合図を送る



ブレーキ外し

現象だけで進む車は

時速など測れる事はなく



ただ溜息が漏れる



不意に窓硝子を叩かれ

横を向けば

昔馴染みの仲間が

得体の知れない顔で

笑っていた



どうやら

クラクションを鳴らした犯人らしい



黒いパーカージャージ

ヤンキーの王道に

身を包む高野



似合う似合わないより

着易さ重視の服が

身についている



窓を下げると

後方から

単発なクラクションが鳴り

振り返る高野は

怪訝な表情を見せた



「停めてくる」



声を掛けると

車から離れた高野が

ミラー越しに後方の車を

睨み付けている姿が映った




何年経っても

血の気は まだ

残っているらしい



役に立たない警備員が

オレンジ色の誘導棒を

ただ横に振るだけで



駐車場整理など

更々 する気は

ないようだ



奥まった駐車場に

車を停め

携帯と煙草と財布を

ポケットに押し込む



店前の照明に照らせれ

寒そうに剥き出しの素足を晒し

小刻みに足を揺らす

茶髪の若い娘達を横切り



ライテェングさえしていない

陳列してある自転車の前に

煙草を燈し

居場所を伝える高野が居る



若くはない証明ように

ひっそりと佇む姿が

若干 大人びて見えた



「独りか?」



見て解る状況を

確認する高野



「お前は?」



高野は正面奥の駐車場に

顎を突き出し



「連れがいるが 帰す

 帰り送ってくれんだろ?」



断る理由が見つからず

苦笑するしかない



「何買いに来た?」



「ティッシュ箱」



高野は鼻で笑い



「近くのスーパーで買え」



御尤もな返答をした



三十過ぎた男 ふたり

陳列する自転車の前



意味もなく通り過ぎる車を眺め

煙草を吸っていても

らちが明かず



「ちり紙 買って来いよ」



痺れを切らした高野が

煙草を地面で踏み潰す



「近くで買うから いい」



高野は無反応のまま

両手を組み夜空へ突き上げ

首の骨を鳴らし



「移動すっか」



活気ある若者の集まる場所には

居場所が見つからなかった



車に乗り込み

助手席を下げる高野



「何処行く?」



高野任せに

投げ掛けた問い



「ラウンド1でも 行くか?」



在り得ない回答に

項垂れる



「男ふたり ミニバイク競って

 何が楽しいんだ」



「乗らなきゃいいじゃん

 ミニバイク」



「そう言う問題か?」



高野は女が飾りつけた

ハイビスカスの灰皿を

手に取り



「冗談だ 飲み行こうぜ」



「……代行か」



「ま そう言うなよ

 お前の愚痴でも聞いてやらねぇとな」



狭い田舎町

情報網だけは

今だに機動してるらしい


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