1/46
0-1
※毎日午前一時更新です。
■0
梯子の上で木槌を振るう。
叩くのは釘。打ち付けるのは板。土台になっているのは、屋根だ。
この作業を朝から続けて、もう太陽は頭の真上ほどにいるが、そのおかげで完成も近い。
「あとはこの一本を……」
そう思うと感慨深いものがある。気持ちも多少、高揚してくるというものだ。
そんな時、声が聞こえた。屋根の下から。
「バイトー、まだかー」
聞き慣れてはいないが、初対面ではない女性の声。
呼ばれはしたものの振り向きはせず、慎重に釘の位置を定めながら、こちらも声だけでそれに答える。
「もう少しですよー。というか、俺にはクエストって名前があるんですから、いい加減に覚えてくださいよ」
「うっさい。いいから早くしろー。開店できないだろー」
「わかってますって」
そんな会話を交わしながら、また木槌を振るう。
やがて釘の頭が板の中に埋まったところで、男――クエストは額を拭った。
「よし、完成だ!」
急ぎ梯子を降りて、見上げる。
その出来に、彼は我ながらよくやったと満足そうに頷いた。
巨大な建物の、大きく開いた入り口の上。そこに取り付けたのは、これも大きな看板。
『ファンシーマジックブックストア・魔本堂』
それが本日新装開店する、この巨大本屋の店名だった。




