海外派遣、開始
「片木!はやくしろ!」
「あとすこしだ!待ってくれ!」
帰還後の片木の部屋の前。
「さっきからずっと同じこと言ってるな!瑞生、いくぞ!」
そう言うと雅人は扉のノブをひねってすこし開け、扉を蹴り開けた。
「うわっ!なんだ!」
「ほらいくぞ。はやくしろ」
「わ、わかったから手を離してくれー!」
『先ほどお伝えした速報です。ジャパンエアサービス20便が、燃料補給を終え、成田空港を離陸しました』
「この航空機って、ハイジャックされたやつだよな」
「そういえば…特別演習に出る前のニュースでハイジャックされたとかでやってたわ」
「…ハイジャックねぇ。どうするつもりなんだろうな、政府は」
「…まず私達が出ることはない」
「なんでだ?柊」
「…SATがやるから」
沈黙がその場を占領する。
「まあ、俺達がでないことを祈ろう」
食事を終え、自室に戻った。
「あのハイジャックどうなったかな」
テレビをつけると驚きの場面が映し出されていた。
『速報です!ジャパンエアサービス20便が本日午後…』
テロップには「テロ発生、旅客機が外務省に突入」と出ていた。
ブー、ブー、ブー
俺の携帯電話の着信音が鳴り響く。
「もしもし?」
『もしもし、高山ですか?マックです』
レンジャーのマックからだった。
「マック、どうしたんだいったい?」
『先ほど日本でテロが発生したと聞きました。同盟国への攻撃とカウンターテロの観点からアフガン、タジキスタンへの出兵が決定しました。それで私達レンジャーやデルタなどが出ることになりました。で、またあなた達と一緒に行きたいのですが…』
「すまない、マック。俺達は全員自衛隊に入った。命令無しには動けないんだ」
『そうですか…では、向こうで会えることを願ってます』
そして電話は切れた。
プルルル、プルルル
今度は構内電話がなる。
「もしもし?」
『群長の田中だ。高山くん、独立作戦群第一偵察隊として米軍と一緒に作戦行動をとってくれ。編成はこの前の特別演習時のものだ』
「ですが群長、なぜ第一小隊が?」
『すぐに動けるのが君たちだけなのだ。今すぐに準備をしなさい。ああ、ちょっと待ってくれ』
すこしたったあと
『すまない、先ほど政府から集団的自衛権の行使が容認された。米軍と一緒に作戦行動をとるようにと』
「わかりました!出撃準備を開始します」
『頼んだぞ』
すぐに準備に取りかかる。
三日後…
俺達第一偵察隊はマック率いる第75レンジャー連隊と機内を暗くしたやC-17グローブマスターⅢに一緒に乗り込んでいた。
まず、浜松基地からC-2に乗り込み、ハワイのヒッカム空軍基地まで移動。その後、ヒッカムからC-17に乗り換え、アメリカ本土のエドワーズ空軍基地、シーモア・ジョンソン空軍基地、イギリスのレイクンヒース空軍基地、ドイツのラムシュテイン空軍基地、トルコのインシルリク空軍基地、ウズベキスタンのカルシ・ハナバード空軍基地へとたどり着いた。そこで数時間協調訓練をとったあと、今に至る。
降下予定地はバグラム空軍基地。元々はアフガニスタン国軍の基地であったが、イスラム連邦側に寝返った。空軍基地が寝返ったことにより、航空戦力を手に入れたイスラム連邦の勢力拡大につながっていた。
ウズベキスタンのカルシ・ハナバード空軍基地からは護衛のF/A-18E戦闘機とAC-130戦術攻撃機、B-52H爆撃機が随伴してきた。まず爆撃機で基地の滑走路などを潰し、その後空挺部隊が降りて制圧するという作戦であった。
『ディスイズファイターワン、アイファウンドジエネミーインレーダー(こちらファイターワン、レーダーで敵をみつけた)』
『敵航空機がいるのか…大変なことにならなければいいが…』
『ミサイル!ブレーク!ブレーク!』
ズン!
『シット!B-52Hイズダウン!(クソ!B-52Hが撃墜された!)』
ズドン!
機体が揺れた。
『エンジンが!エンジンが、燃えている!』
『ストレンジチェンジ!ジャンプナウ!(作戦変更!今すぐ飛び降りろ)』
ロードマスターにより後部ドアが開かれた。
『ゴーゴー!』
「独立作戦群、降下する!」
『了解!』
返事がすぐに返ってくる。
後部ドアへ走り出し、飛び降りる。
亀の子のような体勢になる。
ドドドン!
爆撃が始まったようだ。
そしてレンジャー達はパラシュートを開いた。それに続き、俺達もパラシュートを開く。
バサバサバサ!
今回のパラシュートは操縦性に優れるラムエア型を使用している。夜中の降下は何かしらの危険が伴う。だが、爆撃によって赤々と燃えている火によって周囲は明るくなっている。
着地まで数メートル。
ドサッ、ズザザザァ
着地をした。
『エネミーアウトザビルディグ(敵が建物からでてきた)』
銃撃戦が始まった。
バババババン!
ACRを構え、トリガーを引く。
ダダダダン!
命中。敵兵が倒れる。
「涼香、25㎜を使え!」
『了解!25㎜空中炸裂擲弾を使用する!』
25㎜空中炸裂擲弾銃…レーザーで相手までの距離を計測し、擲弾を発射。相手の頭上で擲弾が炸裂するというもの。これはXM25の自衛隊内の呼び名である。
パス!
発射された。
パーン!
敵兵の頭上で炸裂し、倒れる。
『スタートトゥクリアリング(クリアリングを開始)』
「ラジャー!どこからクリアリングする?片木」
「あのときと同じようにハンガーからだろ」
「わかった。ディスイズISG、リクエストトゥクリアリングハンガー(こちら独立作戦群、ハンガーをクリアリングしたい、許可を)」
『ラジャー、プリーズクリアリング(了解、クリアリングをお願いします)』
「全班聞いたな?ハンガーをクリアリングする!IRマーカー忘れんなよ!」
同時刻 イギリス、ロンドン
市民はバーで飲んでいる時間。ウェストミンスター大寺院近くのウェストミンスター駅構内。
一人の男性がベンチに座り、持っていた鞄をその下に置きながら、スマートフォンを操作していた。
ごく普通の、遅めの帰宅をする人のように。
数分後、男性は立ち上がり、やって来た電車に乗り込んだ。ベンチの下に鞄を置きっぱなしのまま。




