停戦の静けさ
IED処理の任務から一週間。国連の安全保障理事会会議において停戦の決議がなされ、全会一致で賛成。これにより、停戦となった。
しかし、中国の侵攻を受けたウイグルなどの地域は中国が拒否権を発動、開放には至らなかった。
予定していた大規模な攻勢は中止になり、不必要なにらみ合いを無くすために集められていた人員は分散していった。
「知ってるか?中国が停戦を拒否しなかったのは中央で反戦デモが起きたかららしいぜ」
装備を整えているところに宮崎が言ってきた。
「デモが起きたというのは多分いいことじゃないか?昔だったらデモを企てただけで逮捕だったらしいからな」
今回の任務は治安維持活動をすることになっている。
停戦により治安は徐々に良くなりつつあり、攻撃を受けることはまず無いが、未だ抵抗を続けているイスラム連邦の残党もいる。もしもの時に備えて治安維持活動を続けている。
しかしこの活動はあとすこしで別の大隊と交替になり、日本に帰還することとなる。
「任務は治安維持活動。場所はいつも通り。いまだ抵抗を続けている残党がいる可能性があるため、注意すること」
「了解、あとすこしだな」
「ああ」
いつも通りMRAPに乗り込み移動する。
『群一一班、こちらは群一二班だ。そちらの車輌を確認した。付近はクリア』
ヘッドセットのイヤフォンから東山の声が流れ出る。
「了解、なにか変わったことはあるか」
『なし、紛争中と変わりが無くて不思議だ』
目的地に到着。MRAPから降りて活動を開始する。
通りを歩き、周りの状況を見る。
「東山の言った通り、なにも変わらないな。住民はいつも通りに生活して、子供たちは寄ってきて菓子をねだるし」
子供たちが自然に集まり、菓子をねだる。
「唯一違うと言えば遠くからの爆発音が聞こえないことだな。瑞生、菓子を持ってるか?」
ダンプポーチから菓子を取り出して雅人に渡す。
「今日がここに来る最後の日かもしれないからな。代わりに配ってくれ」
「お前が配ってやるほうがいいんじゃないか?」
周りの子供たちはすでに手のひらでお椀を作っている。
「広報の方から写真を撮影してほしいと頼まれたんだ」
「じゃあ俺が撮影してやるよ、班長さん」
雅人にカメラを渡し、菓子を配る。その様子を雅人が撮影する。
満足したのかそれぞれの家に戻っていく。
「はい、カメラ」
受け取ったカメラをポーチに戻す。任務に戻ろうとしたときだった。
「瑞生、なにか聞こえないか?」
突然雅人が言い出す。すこしすると音が聞こえるようになってきた。
「自動車のエンジン音みたいだな…」
遠くに一台のピックアップトラックが見えた。その荷台には数人の男たちと機関銃が乗っていた。
「テクニカルだ、活動中の全班に連絡、正体不明のテクニカルを発見」
無線のPTTスイッチを切り替えて司令部へ無線を飛ばす。
「司令部、テクニカルを確認、戦闘の可能性あり。支援をくれ」
すぐさま無線で連絡、路地に身を隠す。
『了解した。動向を見張ってくれ』
司令部から返信がくる。
そして、テクニカルが目の前を通りすぎると路地から出て、物陰に隠れながら追跡する。
途中、何度か進路を変えた。
「この先って…」
「あぁ、宮崎たちの所へ行くぞ…」
『テクニカルを視認、うお!』
ドドドドン!
「発砲音…!」
『テクニカルから発砲!攻撃を受けてる』
宮崎たちが攻撃されている。
「射線に注意、発砲する!」
ドットサイトを覗き、ドットをテクニカルの荷台で機関銃を撃っている敵に重ねる。
タンタン!
弾が命中し、機関銃にもたれ掛かるように倒れる。
テクニカルが道に対して90度向きを変える。
「後ろ、後ろからもう一台来るぞ」
後方を確認していた雅人が叫ぶ。
「わっ、クソ」
路地に転がりこむ。すでにいるテクニカルと平行になるように停車し、荷台から男たちを降ろす。
「瑞生、テクニカルの間だ、そこにいる!」
地面と車体の間を狙う。
タン、タンタン!
ヘッドセッドから無線が流れる。
『こちら群一二班07、敵テクニカルに向けて40㎜てき弾銃を発射する。巻き込まれるなよ!』
「伏せろー!」
ポンポン!
ボボン!
発射された二発はテクニカルに命中、爆発炎上させた。
「助かった、東山」
『こちらランサー01、活動中の全班へ連絡。航空支援を開始する』
「了解、敵の姿を確認し次第攻撃してくれ」
『了解』
独立作戦群のAH-1Sが航空支援をするために駆けつけてきた。
『南東の道路にテクニカルらしき車輌を発見。確認し次第攻撃する』
「06、どこにいる」
通信担当の涼香は別行動をしている。
『MRAPを停めた場所近くの屋上よ』
「そこから25㎜空中炸裂てき弾銃をテクニカルに向かって撃てるか?」
『今日は徹甲弾を持ってないの。あったとしても他の建物に重なって当たらないわ』
「了解」
『こちらランサー01、車輌はテクニカル。攻撃する』
バラララララ!
『命中、撃破した』
その後、司令部から任務終了を告げられ基地に帰還した。




