別れの戦場
一足先についていた東山に駆け寄る。
「東山、二班はどうだ」
「あぁ、全員無事だ」
悪寒が走る。
「高山、こっちよ!」
涼香が招く。
「落合、宮崎、片木はすでに到着しているわ」
ならばいないのは八戸だろう。その時無線が入る。
『高山、いますぐ屋上へ来てくれ』
増田のいる屋上へと移動する。
「あの通りの突き当たりで暴行を受けている」
隣の増田が場所を指示する。
双眼鏡でそこを見る。
「あぁ、いた。酷くやられてる。」
そこには多国籍軍の使用している迷彩ではない戦闘服を着ている集団が八戸に殴る蹴るの暴行をしていた。
「うん?急にやめたな」
突然八戸への暴行をやめた集団が何かを取り出し、くわえさせる。
「今なら射殺できる。誰かスポッターをしてくれ」
背中のM110を構えるため前に回そうとしたが、ハンドガードに触れる前に気がつく。
「くそ、M110じゃねえ」
それは閉所戦闘のために持ってきていたM870だった。
「M40ならあるぞ」
それは隣にいた増田だった。
「貸してくれ」
M40を借り、マガジンを叩き込む。ボルトを操作し、スコープの倍率を調整し、照準を敵に重ねる。しかし、すでに敵と八戸の姿は無かった。
「くそ、消えた。司令部、司令部、こちら群一一班、応答してくれ」
『こちら司令部、どうした』
「群一一班、二班と群二二班と共同で治安維持活動をしているときに正体不明の集団に一人連れ去られた」
『了解した、交替の部隊を送る』
「し、しかし」
『損害が出た時点で交替することになっている。これは命令だ』
「了解…後続の部隊と交替する。以上」
後続の部隊と交替、基地に帰還した。
「群一一班、人員的損害発生により治安維持活動より帰還。こちらが報告書です」
「お疲れ様です。本日の任務はこれで終了です。命令が出るまで待機していてください」
「了解、群一一班、これより待機に入ります」
そこに雅人が近寄ってくる。
「なあ、八戸ってどうなったかな」
内容は連れ去られた八戸のことだった。
「暴行されてたからな、よくて拷問、悪くて殺害されてるだろうな」
そして3日が過ぎた。東山たちの活躍によりほとんどの敵特殊部隊は掃討された。その日の任務も3日前と同じく治安維持活動だった。
「昨日と同じく二人一組で行動、俺と雅人で一組、宮崎と片木で一組、涼香は無線を頼む」
群一一班は二組、群一二班と群二二班は三組ずつに別れて行動する。
3日前と同じく通りを歩き、同じように子供たちが出てくる。しかし、一つだけ明らかに違うことがあった。
「なあ瑞生、なんか臭くないか?鼻が曲がりそうだ」
「腐敗臭がするな。子供たちも鼻を摘まんでる」
先程から周りを包む腐敗臭。その出所は近くの小屋からだった。
「ここか。近づくにつれて酷くなってるな。06、聞こえるか?」
『よく聞こえるわ。なにかあったの?』
「小屋から腐敗臭がする。ヤバイもんがありそうな気がするんだ。宮崎と片木を呼んでくれ」
『わかったわ』
数分後、宮崎と片木が到着する。
「そこの小屋にそのまま入って中を調べるぞ」
「了解」
小屋の脇に並び、手信号で合図。入り口から中を覗きこみ、中にあったものを見た瞬間に胃の中にあったものを吐き出していた。
「うっ、ウオォ、ボェ…」
「大丈夫か、瑞生」
「見ない方がいいかもしれん…」
中には、頭部が無く、蛆の湧いた死体が壁際に座らされていた。
「片木、爆発物探知機はあるか?」
「あるぞ、ちょっと待ってくれ」
片木は自分のバックパックを探り、探知機を取り出す。それを操作して小屋内部の爆発物を探す。
「大丈夫だ、入れる」
「いいか、中には頭部が無く、蛆が湧いた状態の遺体がある。無理だったらすぐに小屋から出ろ」
小屋の中に入れる。
「うわぁ…」
「これは…」
周りの壁には血飛沫がこびりついていた。
「これ、爆発物が口の中に入った状態で爆発したのと似ているなぁ…」
近くにドックタグが落ちていた。
「M.HACHINOHE…これ、八戸のやつだ」
「06、こちら01だ、小屋の中に頭部欠損の遺体があった。恐らく八戸の遺体だろう。回収のため、MRAPを持ってきてくれ」
『了解、群二二班のMRAPが向かうわ』
「で、このまま遺体袋にいれる訳にはいかないよな…。そうすると、蛆をとるんだよな…」
片木がオドオドしている。
「そうだな、出来るだけ蛆をとろう」
ゴム手袋をはめ、遺体についた蛆をとる。拾った箱の中にどんどんと溜まる蛆。遺体から染み出す体液が小さな水溜まりをつくる。
「これが戦場なんだな…」
誰かがポツリと言う。
そこにMRAPが到着する。
「よし、袋にいれるぞ」
袋に遺体を納め、ジッパーを閉める。そこに司令部からの無線が入る。
『こちら司令部、治安維持活動をしている班は基地に帰還せよ』
「さあ帰ろう。八戸を家に帰してやるんだ」
MRAPの荷台に遺体を載せ、基地へと帰還する。




