犬猿の仲
『強襲隊による作戦が成功、米英軍の救出作戦も成功した。これ以上無いことである』
「はっ。しかし死傷者は日に日に増えるばかりです。これ以上の損害が出ると…」 基地内でテレビ会議。内容は昨日の作戦についてであった。
「それと回収にきたオスプレイ、あれは自衛隊員が操縦していたとありますが…」
『じつはテロが起きる前から米陸軍第160特殊作戦飛行連隊に人員を派遣していたのだ。我が自衛隊にも第160特殊作戦飛行連隊のような部隊の需要が増えると見込まれてな。派遣終了が一昨日だったのだ』
第160特殊作戦飛行連隊…通称ナイトストーカーズは専用の機体を操り、特殊部隊を戦地に送り届ける役目を担う部隊である。
そんな部隊に派遣された人員が実際に操縦していたのだ。
『そして時期は未定だが多国籍軍は一大攻勢をし、中央アジアから中国を一掃することになる。そのためにまずイスラム連邦によってタジキスタン政府が壊滅したため暫定政府をつくる。これの母体はイスラム連邦となる予定だが』
旧タジキスタンの政府要人はすべてイスラム連邦によって逮捕、処刑されてしまったようだった。そしてその後釜にイスラム連邦がはいるとなると反発は必須のはずだ。
「反発は必須ではないのでしょうか。元過激派が国を動かすなどと」
『もちろん反発はあるが米軍が進駐する前のアフガンはあのタリバンが政治をしていたそうだ。もちろん一定期間国連の監視下におかれるだろうが。話を戻そう、一大攻勢中の多国籍軍は米軍の指揮下にするそうだ』
「そうですか。それと柊の容態は…」
一番気になっていることを聞く。
『柊…?あぁ、君の班のか。私の耳には入っていないが何も聞いていないなら大丈夫だろう。一応こちらでも調べておくよ。それと柊君が欠けた分の補充が明日にはつくはずだ。関係資料に目は通したかい?』
「もちろんです。ぶっちゃけ補充人員はいいんですけどね」
『そうか、まあ所定の定員を満たすことだ。以上だ』
通信はここで切れた。
翌日
司令部の建物内
「えー、今日の任務は治安維持になると思います、はい」
「で、後ろの人はだれ?」
「できれば一緒に居たくないが…」
「一緒に居たくないってなによ、私も居たくないんだけど」
俺の後ろから叫ぶ人物。これが補充された班員だった。
「こいつは八戸真紀、柊の補充としてこの一班に配属となった訳だ」
実は俺と八戸は中学校が同じだった。互いに嫌いあっていたが。
「群一一班と群一二班は先行している群二二班と共同で基地より後方の街にて治安維持活動をしてください。尚、その街に人民解放軍の特殊部隊らしき人物達が目撃されています。こちらが担当区域の地図です」
「了解、群一一班はMRAPにて移動、治安維持活動にうつる」
建物から出てMRAPに乗り込む。
「運転は任せる、宮崎」
「あいよ」
『高山、聞こえるか』
隣の東山から通信が。
「聞こえるぞ。基地から5㎞後方の市街地にて先行している群二二班と合同で治安維持をするのが今回の任務だ。聞いた通り中国の特殊部隊がいるそうだ」
『了解!俺達が先に行かせてもらうぜ』
二班のMRAPは滑り出す。
市街地まであと数分。いままで沈黙していた車内で片木が口を開く。
「そういえば三班から後ろの班が使ってる武器って89式小銃と9㎜拳銃だよな、なんで一班と二班は自由に選択できるんだ?」
「はぁ、高山の班はやっぱ駄目ね。いいわ、教えてあげる。一班二班は試験的な要素があるの。だから強襲隊は一班二班の人員がやることになったのよ」
八戸が呆れながら言う。
「高山、さらっと酷いこというな、八戸とかいうやつ」
と、隣で運転していた宮崎が。
「容姿は変わっても、性格は変わらないんだな」
確かに中学のときより背が高くなっている。しかし、性格はあの時のまま。
『こちら群二二班、市街地に接近中の装甲車輌を確認。聞こえるか?』
「こちら群一一班、よく聞こえる。そちらはどこにいる?」
『市街地の入り口にあるビルの中だ。その近くにこちらのMRAPを駐車した』
『こちら群一二班だ。二班のMRAPはそちらのMRAPの隣に駐車する。一班はどうする?』
「宮崎、二班の隣に駐車してくれ」
「了解」
「こちら群一一班、二班の隣に駐車する」
停車したMRAPから降りる。
「久しぶりだな、高山」
群二二班の班長、増田がよってくる。
「そっちもな。ところでここら辺はどんな感じだ?」
「治安はいいぞ。人々は幸せそうに暮らしている。だがたまに中国の特殊部隊がイタズラしに来るんだ。放置車輌に爆弾仕込んだり、無人の建物を倒壊させたり、あと人さらいもやったらしいな」
「イタズラの域を越えてるな。見つけたらやっていいのか?」
すると増田は
「もちろん、ひとりも残すなよ」
とニヤニヤしながら言う。
「よし、やるぞ」
そして事前に決められた通りに一人ずつに別れて通りを歩く。
「一人だと暇だなぁ。」
両脇の建物から子供たちが出てくる。
「あぁ、なんか集まってきた」
治安維持活動をする隊員の周りに子供が集まるのは当たり前。菓子を配る隊員もいる。そのおかげで増える一方。しかし、今回は菓子を持ち合わせていなかった。
「今日は持ってないよ」
両手を開いてヒラヒラさせる。
子供たちはすこし不機嫌そうな顔をする。しかしすぐにニヤリと笑い、こちらのポケットに手を突っ込んでくる。
「やめなさい、菓子は入ってないよ」
タタタン キャー
銃声、それと悲鳴が。
「クソ、群一一班01だ。銃声は聞こえたか?」
周りの子供たちを振りほどきながら走り出す。
『こちら群二二班、一班の誰かが引きずられていくところが見えた』
見晴らしの良いところで見張っていた隊員たちから無線が入った。
「群一一班の全員につぐ、無事な者は後方の集合場所に下がれ」
『群一二班も下がれ、はやく!』
いったい、誰がやられたのか…まだ誰にもわからなかった。




