運び出せ
「片木制圧射撃だ。柊を救出する!」
『了解だ!』
バババババババ!
すかさず柊に駆け寄る。
パーン!
「ウグッ」
背中を大きなハンマーで殴られる感じがしたと同時に地面に倒される。
「瑞生!」
柊の悲痛な声が。
無線のPTTスイッチを操作して、
「大丈夫だ。前方のビル、三階左端の窓からだ!」
『 わかった。窓に制圧射撃!』
タタタタタタン!タタタン!
立ち上がり、柊を抱え上げて近くの建物に退避する。
「こっちだ、全員下がれ」
すぐに外の全員が戻ってきた。
「応急措置をする。終わるまでここを死守してくれ」
「わかった、誰も入れさせないわ」
ベストのポーチからゴム手袋、止血用の XStatを取り出し、用意をする。
「柊、少し痛いかもしれないが我慢してくれ」
ゴム手袋をはめ、傷口にXStatを入れる。シリンダーを押し込み、シリンダーの中のスポンジを入れる。
「よし終わったぞ。助けを呼ぼう。司令部、司令部、聞こえるか?」
しかし応答は無い。
「瑞生、無線機が壊れてるぞ!たぶん撃たれたときだ!」
司令部との通信に使う無線機を撃たれたようだ。そして他の班員は班内通信のためのものしか持っていない。
「クソ!乗ってきたMRAPは!?」
「徒歩機動に切り替えたときに他の隊員が…」
「早く連れて帰らないと死んでしまう…」
「あっ、そういえば」
涼香が相づちをうち、バックパックから多くの筋がはいった筒状の物を取り出した。
「なんだよ、それ」
「これはね、SOSシグナルを発信して通信もできるすぐれものなの。蓋を捻って、投げれば…えいっ!」
外に筒を投げる。バウンドすると筋の部分が広がりアンテナになる。そのアンテナから出ているコードにヘッドセットを繋げる。
「こちら群一一班。負傷者発生、敵に回りを囲まれている!」
「なに言ってるんだ、囲まれていないぞ」
「すこしオーバーに言えばすぐにくるはず…静かに!」
すぐに返ってきた。
「了解、座標は…落合、座標を見せて」
「あぁ、ほらよ」
雅人は腕につけているGPSを見せる。涼香は直ぐに座標を伝える。
「どうだ…」
涼香に聞くとこちらに振り返る。
「大丈夫、すぐに来るって。この建物の屋上って行けるかしら」
「よし、俺が見に行ってくる。ついでに周りの様子と建物内のクリアリングもな」
すると涼香は背中に固定していたM870を外し、手渡して来た。
「ならこれも持っていきなさい。開かないドアや近接戦闘に使えるでしょ?」
「瑞生、俺もついていくぜ」
雅人が肩を叩いてくる。
「よし、行くぞ」
M870を受け取り、階段をかけ上がる。
二階に到着。一通りクリアリングし、まだ開けていないドアがあった。M870のマガジンチューブにダブルオーとブリーチング弾を入れ、フォアエンドを引き薬室に装填する。
「開くか?」
雅人がノブを回す。
「駄目だ、鍵が鍵がかかっている」
「ブリーチング開始」
M870の銃口を蝶番にあて、ブリーチング弾を撃つ。
ダン!
バキン!
ガシャン!
ダン!
バキン!
「いいぞ!」
ドン!
雅人が蝶番を破壊されたドアを蹴ると倒れる。中に入り、確認する。
「クリア!」
「次の階だ」
次の階のドアにもブリーチング弾を撃ち込み、中に入る。すると部屋には人が固まっていた。
「人を確認!」
「了解した、ここの人のようだ」
全身黒の服を纏った女性と子ども達だった。雅人はバックパックから翻訳機を取り出し操作する。
「我々は自衛隊だ、あなたたちは何者だ」
『○%▲×◎~!』
すぐさま翻訳し、音声を発信する。
「×▲◎‰Δ~!」
『ここの者です。この子達は撃たないで!』
「我々はあなたたちを攻撃するつもりは無い。安心してくれ」
『%◎×■μ○~!』
女性の目はほっとした目になった。
サイリウムを取り出し、折る。発光しているサイリウムを子どもに渡す。不思議そうな顔をして受け取った。
同じように他の階を捜索、屋上にたどりついた。
「周りの様子はどうだ」
M110のスコープを覗いて辺りを見るが敵の姿は無かった。
「誰もいやしねぇ」
「さっきの敵はどうだ?」
敵がいた周辺の窓を重点的に探す。
「敵狙撃手発見」
「誰かが殺られるかもしれない。排除しろ」
タン!
鮮血が飛び散るのを見た。
「完了。雅人、下のやつらを呼んできてくれ」
「わかった」
バラララララ
救援のUH-60Jが駆けつけてきた。着陸スペースがあまり無いので機体は建物の縁ギリギリをホバリングしている。
「片木、早く乗せろ!」
「はいよ」
柊を担いできた片木はすぐに乗り込む。
「撤収、ヘリに乗り込め」
全員が乗り込み、ヘリは基地へと帰還する。
「お前さんらに司令部から呼び出しが出てるぞ」
機上整備士が話し掛けてきた。
「なにかしら、また強襲作戦でも?」
「さあな、俺達はお前さんらに司令部から呼び出しが出てるとしか聞いてないからな」