表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神ノ社  作者: 空橋 駆
3章 巫女の瞳に映るのは
9/36

9話 優しさと拒絶から

やはり何度見ても違和感は拭えない。

巫女さんと里遠ちゃんの関係は何処と無く言い表しにくい。


最初にここに来た時は確か、姉妹のような関係に見えていた。

だからこそ、似ている部分もあるのだなと納得していた。

だからこそ決定的な問題を抱えている。

互いの呼び方があまりにも滅茶苦茶ではなかろうか、それこそが後々何か大きな問題になっていくのだろか。


こうなれば、直接聞いてみた方が何とかなる。

里遠ちゃんがすぐ側にいるので、聞いてみた。


「前々から思っていたのだけど、

 何で巫女さんの事は呼び捨てにしているのかな?」

「ん……なんでだろう?」

「いや、出来る事なら理由を教えて欲しい……」


首を傾げるよりも、言葉で説明してもらいたい。

質問はちゃんと理解できていると思うので、答えが知りたい。


「ずっとまえから、ももこってよんでたかも」

「なるほど……」

「確かにこの娘の言うとおりですが、

 何故そんな事を聞くのですか?」

「巫女さん、そこに居たのですか」

「はい、今ここに来ました」

「突然現れると心臓に悪い」


丁度後ろからやって来たらしく、僕は気付かなかった。

不思議な物で、一方に意識が向くとなかなか気付けない。


「質問の答え、教えていただけませんか?」


巫女さんは、僕に迫ってくる。

それを、可能な限り冷静に回避しようとする。


「大した事ではありません。

 ただ、僕は僕で結構気になる事がありまして……」

「その気になる事を話していただけませんか?」

「言ってしまって、良いですか?

 聞いてみて後悔したとしても僕は責任を持ちません」


巫女さんは何故か諦めてくれない。

ならばこちらも少し抵抗してみようか。


「構いません、聞けない事の方が困るのではないかと思いますので、

 正直に思っている事を教えてくださいませんか」

「おにいちゃん、おしえて?」

「仕方ない……ね」


二人に丁寧にお願いされてしまうと、流石に断るわけにも行かないだろう。


「まずは事実の確認から。先日の話では確か……

 巫女さんは迷い込んだ里遠ちゃんを保護して、

 その後もずっとここで面倒を見ているのですね」

「ええ、簡単に説明すればその通りになります」

「だからこそ、何となくですが里遠ちゃんと巫女さんの関係が、

 保育園の先生と園児のような関係に見えてくる」

「保育園の先生と、園児?」

「ほいくえんって、なに?」


ああ、その部分から引っ掛かってくるのか。

これは少々、説明するのに難儀するかもしれない。


「子供を一時的に預かり育てる場所というものだが……

 まあ、とりあえず僕の中では二人の関係がそんな形に見える、

 そんな事を思っていたわけです」

「そうなのですか」

「みゅぅ……」


そうは言ってみたものの、

二人揃ってこちらを向いて頷いている姿を見ていると、

やはり姉妹という関係に近いのではないかと思える所もある。

ただ、実際の関係としてはそこから互いに一歩離れているかのようだ。


「親子とか、姉妹には見えないと言いたいのですね」

「そうですね、親子と見るには関係が薄いのではないかと思いますし、

 姉妹としてみるには距離が離れている気がしています」

「うにゅぅ……そうなのかなぁ?」


巫女さんは冷静に僕の言葉を聞いていたのだが、

内心では焦っているのか、拳を握り震えていた。

僕に対して怒っているのではなく、自分に対して怒りを向けているのだろうか。


対して、里遠ちゃんは納得していないらしく、疑問を浮かべている。

理解できないのではないかと思っていたが、杞憂だったらしい。


「私としては、妹に近い存在として接していたはずなのですが……」

「本当にそうなのか、見ている限りではそんな素振りはあまり見えません。

 特に互いに対する呼び方は本当に気になって仕方ない」


巫女さんも里遠ちゃんも気付いているのだろうか。

もしそれが自然に受け入れられている物ならば、

それはそれで考え方を改めた方が良いのだろうか。


「それは、私があの娘の名前を呼ばないことですか?

 それとも、あの娘が私の事を呼び捨てにしている事ですか?」

「どちらも、心当たりのある通りです。

 ですが、呼び方は二人の関係が遠くに見える理由を表しているだけに過ぎないかなと」


もっと深い部分に、原因がある。

その原因を突き詰めてみた方が良いかもしれない。


「どうして、そんな事を言うのですか?」

「巫女さんは、里遠ちゃんの事をただ面倒を見ているだけで、

 里遠ちゃんは、ここで住まわせて貰っているだけの存在。

 傍から見ている限りでは、そんな希薄な関係にしか見えない」


それを聞くと、巫女さんは軽く溜息をついた。


「実際はその通りなのですけどね……」

「そんなつもりは、ないよ?」

「いえ、確かに間違った事は言っていないと思います。

 嘘を付いたつもりはありませんが、妹として扱いたいと思いながらも、

 やはり何処かで距離を置きたいと思っているのも確かです」

「そうですか……」


やはり、と思った。

それが呼び方にも現れているのだろう。


「しかし、それでも保護しているだけではなく、

 可能な限り一緒に居てあげたいとは思っています」

「それが実現できているかどうかは、微妙な所かもしれませんね」

「みゅぅ……」


里遠ちゃんの寂しそうな表情を見れば、

自ずとそれが上手く言っていない事は解るだろう。


「本当ならば、もう少し関わってあげたいのです。

 しかし、私も最近は体調が優れない事もありまして……」

「そんな感じには見えないのですが……」

「ちがうよ、おにいちゃん」


率直に言わせて貰うと、これは言い訳だろう。

しかし、里遠ちゃんはそんな巫女さんを庇おうとした。


「どうして?」

「おにいちゃんがきてくれるまで、

 ももこはずっとげんきがなかったの」

「本当に、そうなのですか?」


僕は巫女さんの方を向いて、問いかけた。

巫女さんは、軽く頷いていた。


「今はそれなりに落ち着いていますが、

 酷かった時はとても辛かったのです。

 それでも、ご飯だけは作ってあげたいと……」

「無理をしながら、里遠ちゃんの事を見続けていたわけですね」

「はい……」

「みゅぅ……」


自分の事もかなり限界に近いというのに、

人の面倒まで見ることができるのだろうかと問われると、

その質問自体が酷な物になると思う。


「尚更、里遠ちゃんは寂しい思いをするわけですね」

「責められるのは、仕方の無い事だと思います」

「いや、最初から責めるつもりはありません」


仕方ない部分もあったのだろう。

遊んでくれるはずの相手が体調を崩して苦しんでいるんだ。

そんな状態で無理をさせるなんて、考えられない。

となれば、必然的に里遠ちゃんは独りで過ごす事になる……


「原因は、病気か何かですか?」

「いいえ、そういうわけではありませんが……

 事の詳細については、あまり話したくないのです。

 場合によっては、色々と問題になる可能性もあります」

「複雑な事情という物があると考えて……」


巫女さんは言い淀み、かなり難しい顔をしている。

こちらとしても、それを見てあまり深入りすべきではないと感じた。

追求は、止めておいた方が無難だろう。


「はい、そう思っていただければ助かります」

「解りました、余計な詮索をするつもりは最初からありません。

 ただ、理由を知れば対処できる事は山ほどあります。

 それだけは心に留めて置いてください」


それだけは、伝えておかねばならなかった。


「あんまり、ももこをいじめないでね……」

「善処する……」


本当ならばもう少し厳しい事を言ってしまいたかったが、

里遠ちゃんに優しい瞳を向けられてしまい、

僕は少しだけやりすぎたかなと心の中で反省した。



「という事は、最近は調子が良いのかな?」

「はい、ですが……」

「おにいちゃん?」


里遠ちゃんに睨まれた。


「いやいや、問い詰めたりするわけじゃなくてね……」

「そうなの?」


とりあえず、疑われる事をして済まないけど……

僕は改めて巫女さんの方を向いて問いかける。


「巫女さん、何か問題でもありますか?」

「いえ、万が一に備えてなるべく早く寝ていますと言いたかったのです」

「ああ、そういうことですか」


笑顔で答えてくれる、巫女さん。

やはり、笑顔で話しているほうが見ていて安心できる。

先程までの雰囲気は少々悪かった気がするので、尚の事。


「という事は、先日のように遅い時間まで話していたのは、

 巫女さんにとっては珍しい事だったのかな?」

「はい、そうなりますね」

「あの後、大丈夫でしたか?」

「心配していただき、ありがとうございます。

 この通り、風邪など引かず健康そのものです」


くすくすと笑う巫女さん。

その様子をに引っ張られるかのように里遠ちゃんも笑顔になっている。


「おにいちゃんも、ももこのことしんぱいしてる」

「当然だよ、一緒に住んでいるのだからね」

「あ……ありがとう、ございます」


巫女さんの笑顔に、照れが入っている。

何だろうか、僕はそれを見てとても新鮮な気持ちになれたのだが、

これは一体どうしてなのだろう。


「照れてますか?」

「い、言われ慣れていないもので……」

「みゅぅ……」


里遠ちゃんも、巫女さんの事を見ているが……

珍しい物を見るかのような目で見ている。


まあ、僕は僕で何故か当たり前にそんな事言えてしまった事に、

妙に照れくさくなってしまっているのだが……

巫女さんの反応もあって、余計にそれが増した気がする。

何となくだが、これは今まで感じた事のない気持ちかもしれない。


「と……とりあえず落ち着きませんか?」

「そ、そうですね」


巫女さんが照れながらそう言って、浸るのをやめた。

僕は僕で、軽く深呼吸をして気持ちを収めた。



「もう少し、詳しい話を聞かせてもらえますか?」

「はい、私も少し話し足りないと思っていました」


少しばかり和やかな雰囲気で、再び会話が始まる。

何となくだが、今度はもう少し二人の事を知れるかもしれない。

そんな予感が、頭の中を過ぎっていた。


「巫女さんは、僕がここにやってくるまでずっと……」

「はい、この娘の面倒を見てきました」

「だからなのかもしれない……

 姉妹にはあまり見えなかったわけだ」

「確かに妹みたいに思う時もありました。

 しかし、そう思って接して良い時と悪い時があります」

「なるほど……

 つまり、混同は避けなければと思っていたわけですね」

「始まりとしては、保護して面倒を見ているだけの関係になります。

 私としては、必要以上に干渉しない事を常に念頭に入れて接していました」

「そうですか」


僕は、大きく相槌を打った。

その、ある程度距離を置いた付き合い方をしていた事が、

二人の間に溝を作っているかのように見えていたからだ。

しかし僕は、それを指摘する事はしなかった。


「もう少し、遊んであげられれば寂しくなかったのかもしれませんね」

「んみゅ……ももこがいてくれるだけで、うれしかったよ?」


巫女さんも自分で気付きながら止められず、

里遠ちゃんも知っているから求めなかった。

二人だけの関係の時ならば、それで回っていたから。


「里遠ちゃんもそう言ってくれています。

 あまり、必要以上に自分を責めない方がいいですよ」

「そう……ですね」


巫女さんが頷いている隣で、里遠ちゃんが笑顔で頷いていた。

これで、少しは荷が下りてくれれば良いと思う。


「少しだけ、反省しています」

「その心だけで、十分だと思います」


巫女さんは再び笑顔を見せてくれた。

僕もつられて、笑顔になっていた。



さて、話を聞いてきた中で思っていたのだが……

ここまで来ると、僕がここに居る理由も変化してきているのではないか。

特に、里遠ちゃんの面倒を見ることに関する理由が増えているのでは……

そんな妙な考えが頭の中に浮かんでいた。


「逆に、不思議に思う事があります」

「巫女さん、それは一体?」

「どうしてそこまで、この娘の面倒を見てくれているのですか?」


僕は、問われて気付いた。

何で、里遠ちゃんの面倒をここまでしっかり見ているのか。

明確な答えは、無いとは思っていないが……


「解らないのですか?」

「自覚している範囲で良いのなら」

「そうですか。全然解っていないと思ってしまうのですが……」

「正しく、その通り……」


冗談交じりで僕は答えたつもりだったが、

巫女さんが間違いなく怒っている……


「冗談ですよ、冗談。

 怒らないでください、威圧感がそれなりにありますから」

「別に、怒ってなんかいません……」


それでも十分に不機嫌そうに見える。


「それに、そんな冗談を言う人だとは思いませんでした」

「僕、そんなに真面目で堅い人間に見えますか?」

「少なくとも、あの娘の呼び名が変わるまではそう思いました」


言われてなるほどと思った。

僕自身の中に、ある程度の慣れのような物が出てきてるのだろう。

だからこうして、少し冗談めいた事を言えてしまった。


「みにゅぅ……

 ももこのふきげんなかお、めずらしいよ?」

「そうなのか」

「もうっ……

 余計な事は言わないで、お願いだから」

「なんで?」

「それは……」


僕をそっちのけで、二人で口論を始めてしまった。

取り残された僕は、それを見ている事しか出来なかった。



「ふむ……」


今の、この二人のやり取り、姉妹喧嘩のようで見ていて飽きない。

止めてしまった方が言いかと思ったが、多分双方に否定されてしまうかもしれないし、

逆に肯定されて照れ臭い思いをするのも勘弁して欲しい。

仕方ないので楔を打つ形で強引に切り替えることにした。


「とりあえず、巫女さんの問いにはちゃんと答えましょう」

「あ、すみません……」

「うにゅぅ……」


僕の一言で口論が収まったのを感じ、少しばかり安心した。

このまま延々と続かれたらそれはそれで面倒だ。


「僕が里遠ちゃんの面倒を見ている理由……

 まあ、単に放っておけないからだと思っています」

「素晴らしい事だと思います」

「まあ、最初に気付いたのは……

 何となく空をずっと見ているのを、僕が見かけてしまったからですね」

「そうなのですか?」


巫女さんは、それをあまり詳しく知らないのだろう。

預かってはいるが詳細まで立ち入っていないのならば、当然の言葉かもしれない。


「見かけた事はありませんか?

 空を見て、独り言を呟いている姿とかを」

「いいえ、私の覚えている範囲では見ていません。

 仮に見ていたとしても些細な事として忘れているかもしれません」

「そう……ですか……」


この言い回しが、妙に引っ掛かる。

今まで話している雰囲気や、行動を考えて見ると、

巫女さんが里遠ちゃんの事を気にも留めていないとは思っていない。

だが……


「私は、自分の事で精一杯になってしまいやすいと自覚しておりますので、

 代わりに見ていただけるのは本当に助かっているのです」

「なるほど……」


自分の非を先に認められてしまって、参った。

先手を打たれて、これ以上の追求が出来ないと僕は悟った。


「僕は、時折寂しそうな顔をする里遠ちゃんを見て、

 どうにかしてあげなければと、思っています」

「それで、遊んであげていたという事ですか」

「そうですね」


内心では、それだけではなかった。

ただ遊んであげるだけでは解決しないと思うから、行動に移したいと思っていた。

だけど、切り口が見当たらない。


里遠ちゃんに言われた事が、また頭の中を駆け巡っている。



次に、何を言えば言いのだろう。

同様に、巫女さんの事も見ているとでも言えば良いのか。

動揺してる僕を見ながら、巫女さんは告げた。


「本当に、優しい人なのですね……」


目が覚めた。

まるで全部の考えを読まれていたかのような一言だった。


「前にも言ったと思いますが、僕自身にはあまり実感らしい物はありません」

「それは純粋に素晴らしいことではありませんか?」


更に、追い討ちを喰らった。

何故、ここまで褒めてその気にさせる事が出来るのか。


「おにいちゃんは、やさしいひとだよ?」

「照れるね……そこまで言われてしまうと」


里遠ちゃんにまでそう言われてしまった。

僕としては、純粋にそれは嬉しいのだが……

元来から言われ慣れていないのだろうか、照れ臭かった。

しかし、不思議と悪い気分ではない。


今なら……言えるかもしれない。


「里遠ちゃんも確かに放って置けませんが、

 僕としては巫女さんの事も放っては置けませんね」

「は……はい?」


僕の言葉で、巫女さんは驚いた顔のまま硬直していた。

照れているのか、それとも呆れているのか……


「じょ、冗談もいいかげんにしてください!」


照れているのか、怒っているのか判断の付かない大声を叩き返された。

この感じだと、後者の方が可能性は高そうだ……

その様子を見ていた里遠ちゃんが戸惑っている。


「ももこ……なんで……」

「僕、何か不味い事でも言いましたか?」


こんな反応をされてしまうとは思わなかった。

言ってしまった事を後悔するつもりは無い。それでも……


「私の事は……

 私の事は、心配なんて、しないでください」


振り絞るような声で、巫女さんが言った言葉が耳に届いて、

より一層、巫女さんの事を心配しなければならないと思った。


「それは、どうして……」


だが、僕の頭と口は、ただ嘆く事しか出来なかった。


「まだ、信頼しているわけではありません。

 土足で心に踏み込むような事は、止めてください」

「そう……ですか……」

「ももこ……」


そして、明確なる、拒絶。

それを何とかする方法を、今の僕は持ち合わせてなどいない。


「それならば、仕方ないですね」

「おにいちゃん!」


諦めようとする僕を、里遠ちゃんが押し留めてくれる。


「ももこも、どうしてそんなこというのっ!」


里遠ちゃんが巫女さんに詰め寄ろうとしたので、

僕は慌てて押し留めた。


「止めてくれ、里遠ちゃん。これは、仕方の無い事だと思っている。

 だから、今はこれで良いんだ」


精一杯の所で、僕はそう答えていた。

その言葉を聞いていたのかは知らないが、

巫女さんは立ち上がって、僕の部屋を出て行ってしまった。


「あきらめちゃ、だめだよ?」

「大丈夫だ、諦めてたまるか」


虚勢だった。

踏み込んで、完全に拒まれた。

共に居た時間が短すぎたから駄目だとは思いたくなかった。


最初から、やんわりと拒絶される事は想定していたのに……

出てきたのは、強烈な拒絶の心。



そして、そんな姿を見た僕の心は、大きく揺れていた。

さり気なく気に掛けていくべきか。

大きく踏み込んでいくべきか。


「里遠ちゃん……ごめん。

 少しだけ、一人で考えさせてくれないか?」

「うん、わかった……」

「巫女さんの所に行っても良いけど、

 くれぐれも蒸し返さないようにね」

「うんっ」


元気の良い返事を聞いて、僕は安心していた。

そのまま部屋を出て行くかと思ったが、

途中で振り返って……


「そういうところが、やさしいんだよ」


笑顔で、僕にそう言ってくれた。


「ありがとう」


ほんの少しだけ、救われた気持ちになった。

もしかすると、本当の笑顔の魔力とはこういう物を言うのかもしれないな……


そんな事を思いながら、僕は決断の出ない悩み事へと意識を集中させていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ