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神ノ社  作者: 空橋 駆
2章 少女と来人
6/36

6話 懐かれるまでの距離へ

久しぶりに朝早く起きた一日。

違うか、朝早く叩き起された一日だ。


いつもとは違う何かがあると思い、目が覚めていた。

そこに、一つの異変が紛れ込んでいた。

僕は正直、最初は現状について把握できていなかった。


抱き着かれていた。

里遠ちゃんが僕の布団に入り込んでいて、

僕を抱き枕にしながら眠っていたのだ。


「とりあえず何が起きているんだ?」


首が絞められているわけではないので苦しくは無い。

ただ、この状況を巫女さんに見られると不味かろう。

主に色々と弁解が必要になるという点を踏まえると……



「起きて離してくれないか、里遠ちゃん」

「うにゅぅ~」

「とりあえず抱きつくのだけは止めてくれ」

「おにーさん……」


哀しげな表情で僕を見てくれるな。

どうしてそんな表情をしているのか、聞きたくなるだろう?


「いっしょにねよっ」

「行動に移してから言っても意味がないぞ」


聞きたくなるけど聞かないのも優しさ……


「こわいゆめみたの」

「怖い夢か、なるほどね」

「いっちゃやだ、どこにもいかないで……」

「何を突然言っているのやら……」


確かに記憶が戻れば僕はここを出るかもしれないが、

今のところそんな状態とは程遠いと知っているはずだろう。

夢で、見た可能性があるな。


「どんな夢だったのかい?」

「おにーさんが、いきなりきえてなくなるの」

「突然消えるってどんな状態かな。

 消失にも色々種類がある」

「あさおきて、おにーさんがいなくなるの」

「それだけ?」

「うん、それだけ」


それは僕が来る前の話ではなかろうか。


「ゆっくりときえていくの……

 おにーさん、いっちゃだめ」


震えながら僕に抱きついてくる里遠ちゃん。


「僕は今はまだここに居るよ」


口ではそう言えた。


「こわいよぉ……」


本当にそんなことが起きるのか?


「ももこも、おにーさんも、いなくなっちゃうの……」

「夢だろう、それは?」

「うん、ゆめだけど……

 ひとりは、こわいよ」


どれだけの時間二人で居たのかは知らない。

ただ、寂しさではなく怖さを語るという事は、

独りぼっちの経験があったのかもしれない。


だから、確かに僕の存在を確かめるために抱きついて確認したくなったのか。

わざわざ理由を考える必要も無かった。

寂しいから、人の温もりを求めた。

それだけの、事。だから僕は諭そう。


「確かに、独りは怖いね……

 しかも、目の前で知っている相手が居なくなるってとても怖いと思う」

「みゅぅ……うぅ……」


今にも泣き出しそうな里遠ちゃんの顔。


「よしよし、怖い夢が本当にならないように……

 もう少しだけ一緒にいてあげよう」


思いつく限りの優しい声で、僕は里遠ちゃんを諭してみた。


「ふぇぇ……うぇぇ……」


軽く頭を撫でてあげると、泣き出してしまった。


「いなく、ならないでぇ……」

「大丈夫、僕はそう簡単に居なくならないよ。

 巫女さんもそう、理由も無く居なくなるわけがない」


確約はできなくとも、言わねばならない事はある。

可能な限り、この言葉は嘘になどしたくはない。


「怖い夢は、やっぱり夢でしかないのさ」

「ふえぇぇぇぇぇ……」

「泣くのは結構だけど、

 夢を信じて泣いていたら、本当になってしまうかもしれない。

 だから、そうはならないと願えばいい」

「ねがう?」

「そう、願うんだ。

 心から願えば、そんな悪い夢も追い払われる」


根拠は無い。だけど巫女さんと呼んでいる人が居るのだ。

悪い気など、追い払ってくれればいいのだが……

他力本願でもいけない。


「ふえぇ……それでも、こわいよぉ……」


僕は必死になだめようとしたが、泣き止んではくれなかった。

あまり子供を相手にする事が無かったからなのかもしれない。

こうなれば、最終手段だ。


「よしよし、ほら、大丈夫かい?」

「ふぇっ……」


抱き着かれている状態から、僕が軽く抱きしめる状態へ。

彼女の目から流れる涙が、胸元に染みてくる。


「落ち着いてくれたかな?」

「あったかいの……」


薄っすらとだけど、うっとりとした表情を浮かべていた。

涙がまだ少しだけ浮かんでいるが、もう大丈夫だろう。

少しだけ、ほっとした。


ただ、こんな夢を見ていた事だけは覚えておこう。

この後何かが起きる可能性も否定できないのだから。


里遠ちゃんの顔を見る。泣いた跡はあるけど顔はもう笑顔だった。


落ち着いてから、朝食を食べに行こう。

朝からいきなりこんな事があったので、気持ちを整理しないと。

そう思った矢先に……


「どうしましたか?

 朝食の方、既にできていますよ?」

「あ、ああ……」


どうやら心配になった巫女さんが僕の部屋まで来ていたらしい。


「あら……」

「こ、これは……

 巫女さん、言い訳させて貰えますか?」

「いえ、まだ私は何も言っておりません」


少々声に棘がある気がするけど……

一応事情があってこうなっているので説明すれば解ってくれるだろう。


「何も言わなくて結構です。

 少し前から様子を見ておりましたから。

 ただ、何があったのかだけは聞かせていただけますか?」


優しく里遠ちゃんに語りかけてくれていた。


「みゅぅ……こわいゆめ、みたの」


それを聞いた巫女さんの表情が、心配そうな顔に変わった。

思い当たる節でも何かあるのだろうか。


「怖い夢……ですか。

 それと来人さんは何の関係がありますか?」

「まあ、要するに朝から僕に泣きついてきたんだ。

 怖いから、一緒に居て欲しいとも言っていた」

「抱きしめていたのは……」

「途中で夢の事を思い出して、泣き出してしまったからね……」

「そういうことですか」


里遠ちゃんはこくりと頷いた。

僕もまた、そうだと言ったら巫女さんは納得したらしく……


「珍しい光景なのですよ、この娘が泣くのは久しぶりの事ではないかと思います」

「そんなに珍しいのかな?」

「ん……そうかも……」

「私も、この娘が怖い夢を見ていた事は幾度か聞いております。

 しかしまさか、来人さんの所に行くとは思いませんでした」


巫女さんの表情が少しだけ暗いのが気になった。

やはり、彼女は何かを知っているのではないのだろうか?

根拠なんて今は何も持っていないのだが、彼女から語り始めた。


「この前、それを確かめる為に一度一緒に昼寝をしたのですが……」

「うにゅぅ……」


里遠ちゃんのその反応……

その時点で大体結末が予想できる。


「私も一緒に寝てしまったのです。

 本当は寝ているときにうなされていないか確認するべきだったのに、

 何故か眠気に誘われてしまい……」

「一緒に寝てしまっては意味が無いですよ」

「はい、その通りです……」

「しっかりしてほしいよね……」


なかなかしっかりとしていると印象付けられていたのに、

意外な所で抜けているのだなと思った。


ただ、巫女さんも里遠ちゃんもそれを笑って話しているのは、

少なくとも一緒に寝た結果一人ではなくなっていたから……

それはそれでよい結果を呼び込んでいたのかなと思っているのだろう。

真意は、二人だけの物だから僕には解らないが、そうであって欲しいと願う。


「ときどきぬけてるんだよ、ももこって」

「話を聞いている限りだと、そうみたいだね」


まあ、世の中には完璧超人なんていないと思うので、

そうやって抜けている所がある方が良い。


「そ、そんなに私って抜けてますか?」


当の本人はそんな言葉が出たのを驚いたらしくそんな事を言っているが……


「ときどきすごいしっぱいをするんだよ~」

「ひ、否定できないのは辛いですね」


すかさず里遠ちゃんが放った一言が効いたらしい。

巫女さんは思わず苦笑いをしていた。

というか、これは完全に困り果てているのだろう。

珍しい、こんな顔をする巫女さんはあまり見かけない。


「あはは……面白いな、全く」

「何がおかしいのですか、来人さん?」


里遠ちゃんの方を向いていたはずの巫女さんがいつの間にか僕に視線を向けていた。


「い、いや、まあ……」

「口を濁さないでください」


強い言葉で巫女さんは言う。

傍目で見ると、里遠ちゃんが少し笑っている。


「巫女さんの困った顔は珍しいと思ってね。

 意外と色々な表情を見せてくれる物だなと……」

「か、からかわないでくださいなっ!」


今度は照れた顔。

本当に、巫女さんは意外と表情が豊かで面白いと思う。


「と、とりあえず……

 このままですと、朝食が冷めてしまいますよ?」


照れ隠しも含んでいるとは思いつつ、

確かにその為に巫女さんはここに来ているのだと再確認。


「それでは、行きますか」


僕達は朝食を食べて……

食堂で話を始めた。


「きょうは、いっしょにいるの~」

「そうだね、怖い夢を見た日は一緒に居た方がいいかな」

「ありがとう」


率直にお礼を言われると照れるな。


「私も一緒の部屋に居ても良いでしょうか?

 怖い夢を見た時は、なるべく近い場所に居てあげた方が良いですから」


巫女さんが何を言い出したかと思ったが……

やはり、気になる事があるからそんな事を言ったのだろう。


「みんないっしょなの……」

「嬉しいかい?」

「うんっ!」




満面の笑みで答えられると、少し拒もうと思っていた心が引っ込む。

そのままだと笑っていられない状態になりかねないんだがな……

まあ、何にせよ少し様子を見ておいた方が良いだろう。


里遠ちゃんの部屋で寛ぐ二人が見える。

僕は、少し離れた場所でそれを見ている。


二人がぴったりとくっ付いているならば問題ないが、

この前と同じで二人は少し離れた場所で座っていた。

理由はよく解らないが、それがこの二人の距離なのだろう。

今の僕に、それをどうにかする術は無い。



暫くして、予想通りというか何というか……

見事なまでに里遠ちゃんは寝てしまっていた。

とりあえず、巫女さんは静かにその姿を見て……

いや、見ていたと思ったら少し違うみたいだ。


「巫女さん?」

「ん……はい、何か御用ですか?」


眠そうな顔で反応してくれる巫女さん。

いや、無理して反応してもらわなくても構わないのに。


「このままこうしていると、寝てしまいそうです」


既に寝ていませんでしたかと言いたい所だが、

余計な事を言って説教でもされたら堪った物ではない。


「来人さん、後を任せても良いですか?」

「後を任せる?」

「あの娘に何か悪い事が起きないか、見てあげてください」


眠っている間に何かが起きたならば、真っ先に対応しなければならない。

巫女さんも巫女さんで、疲れているのだろうか。

何にせよ、断る理由なんて無い。


「んんっ……ふあぁ……」


巫女さんが口を手で押さえながら欠伸をしていた。

どうやら、本当に眠いのだろう。


「そのまま寝てもらって構いませんよ。

 里遠ちゃんの様子は僕が見ています」

「はい……それでは……お言葉に甘えて……」


暫くして、巫女さんの静かな寝息が聞こえてきた。

里遠ちゃんも寝ている、うなされる事も無く。


「平和だなぁ……」


思わずそう呟いてしまうほどに、見えている光景はとても穏やかで。

ただその光景をずっと見ていると、僕もまた少し眠くなってきてしまう。


(駄目だ……流石に、寝るわけにはいかない)


一応頼まれているのだ、眠気に負けるわけにはいかない。

巫女さんが目を覚ますまではせめて起きている必要がある。


(それでも……眠いな……)


本当に、場所こそ離れて眠っていたとしても……

この長閑で静かで穏やかな雰囲気を考えると、

この二人の間にある溝はいずれ埋まるのではないかと思えてしまう。

気休めの楽観論だと言いたければ……それでも良い。


「みゅぅ……んん?」

「おっと、目が覚めたみたいだね」


巫女さんが目を覚ますかと思っていたら、

里遠ちゃんの方が先に目を覚ました。


「おにーさん、おはよぉ……」

「そろそろ昼の時間なんだけどね……」

「ももこは……どうしたの?」

「ん……ああ……」


僕が中途半端な返事を返したら、途端に里遠ちゃんの顔が変わる。


「そっちだ。そこで寝ている」

「いっしょに……いてくれた」


少し哀しげな表情を浮かべている里遠ちゃん。

その反応はつまり、今まで……


「おにーさんも、いてくれたの?」

「ああ」


止めておこう、多分それを聞くのは野暮だ。


「いっしょにいてくれて、ありがとう」

「どういたしまして」


笑顔で返すと、里遠ちゃんも笑顔になってくれる。

こういうやり取りが、意外と大切だと知っているのかもしれない。

それならばこの少女は意外と賢いのだろう。


賢いなら、独りの寂しさを知っていても不思議ではない。

本質的に寂しがりやだったとしても、

巫女さんと二人だけでいるならば、それを表に出せはしない。


「少しだけ聞かせてもらって、良いかな」

「うん、なんでもきいて」


笑顔を向けている少女に聞く質問ではないだろうが……

ここは聞かねば、前には進めない気がした。


「独りは、寂しいかい?」

「うん、ひとりはさびしいよ。

 いっしょにいるのがももこでも、うれしいよ」


ああ、少し棘のある言い方に聞こえてしまうのは、

やはり内心では少し良くない感情を持っているからなのだろう。


「里遠ちゃんは案外寂しがり屋なのかな?」

「ん……そうなの、かな?」


少なくとも自分の殻に閉じこもる性格ではないだろう。


「だけど、ももこしかいなかったから……」

「それもそうだね」


独りを寂しいと思うには条件がある。

独りで無い時の楽しさや嬉しさを知っていて、

尚且つ独りである事を知り、それを寂しいと自覚する必要がある。


当たり前のように知っているとは思えない。

里遠ちゃんは孤独の存在を知っている。

何処かで孤独だった時間があったかもしれない。

それが一体何時、何処で得た物なのかは知らないが……


もしそうならば、もう少し深く里遠ちゃんの事を知ることができそうだ。

怖い夢を見た、その理由にも迫れるかもしれない。


いつの間にか僕の心には、それを解決できないかと思う心が芽生えていた。

尤もこの時はまだ、単なる探究心の延長だとも考えていたが……



「ずっと二人きりで、寂しくなかったかい?」

「ちょっとだけ、さびしかった……」

「だから、僕が来た事が嬉しくて仕方なかったんだね」

「うんっ!」


やっぱり、本人の口から聞くと嬉しさも倍増だ。


「それなのに、消えてしまう夢を見てしまったから……」

「いまはみなかったよ。でも、このまえはみちゃった。

 ひとりになるの、こわいよ……」


当面は誰かと一緒に寝てもらう方が都合がいいかもしれない。

状況的に、巫女さんが適任だと任せきるのも不安が残る。


「その夢は、いつも見るわけじゃないのかな?」

「ほとんどみない……」

「という事は、これまでにも何回かは見た事になるのかな」

「うん、はじめてじゃないけど、ひさしぶり」


頻度として考えればそんなに回数は無いのだろう。

ただ、忘れてしまって大丈夫なほどの現象でもない。

それよりも重要なのは……


(僕が来る前からそんな夢を見ていた過去があった事)


これ以外に、何を考えるべきだろうか。


「その時の夢には僕なんて出ていないと思うが……」

「そうだよ、ももこがいなくなるゆめ」

「巫女さんが居なくなる……か。

 確かにそれは穏やかではないね」


二人しかいない環境、食事などを作って貰っている関係。

完全に仲違いしているかと問われれば、

そうでもない関係なのだろうと考えた。


そんな綱渡りにも近い状態の中に居るのだから、

当然巫女さんが居なくなるという恐怖は計り知れないだろう。


「いつ頃から見始めたのか、覚えているかな?」

「ううん、おぼえてないよ……」

「そうか……」


なかなか……情報という物は思った通りには集まってくれない。

手掛かりらしい何かが掴めたという感触が薄い。

巫女さんに教えてもらった事のすり合わせにしかなっていない。


複雑だ……

一筋縄では到底上手くなど行かないだろう。

段階を踏んでいかねば真実は表には現れてなどこない。


その取っ掛かりとなる、里遠ちゃんの夢。

覚えておけば、いずれ使う時が来るだろう。


巫女さんは……


「すぅ……すぅ……」


寝息を立てながら静かに寝ていた。

起こすべきだろうか、そろそろ時間もご飯時に近付いているであろうから。


「巫女さん、そろそろ起きてください、昼が近いので……」

「んんっ……もう少し、寝かせてください」


反応の良さで、既に頭が少し覚醒気味と踏んだ。


「って、目が覚めてるんじゃないですか?」

「ん……今目が覚めたところですよ」


寝起きなのか微妙に意識が十分に覚醒していないみたいだ。

どうやら寝起きが悪いとは言えないみたいだが、

あまりすっきりと行かない理由でも隠れているかもしれない。

まあ、個人的なことが多そうなので詮索するつもりは無い。


「この娘と何か色々と話していましたか?」

「寝ながら聞いていた?」

「いえ、あの娘が割りとしっかりと目を覚ましていたので……」

「そうですね、色々と話を聞かせてもらいました」


一応嘘は言っていないはずだ。

主にこれまであまり手に入らなかった側面からの情報。

でも、結局そんなに良い情報が手に入ったとは思っていない。


「総じて、巫女さんが教えてくれた程度の事しか知れなかった……」

「それは、残念でしたね」

「仕方ない事です。とはいえそこまでがっかりはしていませんよ」


一応これで、上手く立ち回れた気がする。


「昼食の時間が近くありませんか?」

「そうですね、準備に行くのですか?」

「はい、そうさせていただきます」


そう言って巫女さんは立ち上がって廊下へ出ようとする。

後ろから、里遠ちゃんが声を掛けた。


「ももこ~おねがいね~」

「はい、待っていてくださいね」


巫女さんはそれに笑顔で答えて、

そのまま外へと出て行ってしまった。


「僕も少し手伝えれば良いのだけどね……」

「てつだってみたいの?」

「まあ、自分で何ができるか理解していないから、

 その延長線上ということでね……」

「そうなんだ~」


ある意味、話題が無い時の話題として取っている事。

本当に使う機会は限定されると思うが……

いつか本当にそんな機会が来るのなら、やってみよう。


「巫女さん……張り切ってたね」

「うん、ごはんがたのしみ」


そう言っては居るが、待つことも重々承知なのだが……


「おなかすいたよぉ~」

「仕方ないね、もう少し待とう。駄目なら食堂へ向かおう」


里遠ちゃんが駄々を捏ね始めており、少し悪い状態。

このままここに居るのも辛いので、思い切って食堂に向かった。


「もうすぐできますので、待っていてくださいね~」


台所から声が聞こえて、大丈夫だと確信した。

これで、美味しい昼食にありつくことができそうだ。



その日の昼食は、確かに少し遅くなって待ってしまったのだが、

いつもよりも豪勢な食事になっていた気がした。

気のせいではないと信じたい。

里遠ちゃんも嬉しそうに食べていたのを見て、

ようやくこれで今度は僕が静かに眠れる時間をとれるかな……と思った。


その後の一日もまた、本当に静かでのんびりした物で、

思わず何をしていたのかを忘れてしまいたくなるほど平和な一日だった。


こんな平和な一日が、もう少し繰り返されますように。

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