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al fine  作者: 骨折
2/2

Duet


「ああ、恐ろしい。夜は出歩かないようにしましょう」

「そうねえ、あなたお子さん気を付けてね」



店を出る女2人の会話が耳にはいる。

夜は出歩かないようにといいながら、今はもう既に夜だ。


レストランの隅にあるテレビに目を向ける。

昨日のニュースについて報道されていた。



<…殺害された篠田裕子さんは、検視の結果、殺害後に性的暴行を受けていたという事が分かりました。財布等の金銭は盗まれておらず、犯人の動機は金目当てでは無いと思われます。…>



篠田は黙々と肉を食べている。

とてもおいしそうとは思えない食べ方だ。



<…殺害された裕子さんの兄、篠田健斗さんのインタビュー映像です。


「…自覚ですか、そりゃあありますよ。死体見ましたから。…ええ、そうです。…特に無いですが…、まあ、嫌いでしたので死んでくれて嬉しいですね。」


以上です。…>





篠田は肉を食べ終わったようだった。

俺の顔をじっと見て、俺が話し始めるのを待っている。


仕方なく口を開く。




「…お前さ、もっと気の利いた事言え無いの。」

「…例えば」

「優しい妹だったので、とても悲しいです。…とか。」

「俺は頭が良く無いから、そんなにすらすら嘘を付けない。」

「これは…常識だろう。」

「君、俺を常識人だと思っていたの。」


両手を顔の前で組み合わせ、首を横に傾ける。

これはこいつの癖で、人を馬鹿にしているときの仕草だ。


最も、自分では気がついていないのだろうが。




俺も篠田も牛の死骸を食べ終わったが、帰る雰囲気にはならなかった。



また俺が口を開く。

篠田といると、喋り始めるのはいつも俺からだった。


特に喋りたい事は無いが、俺は沈黙が嫌いだ。



「…あのさ、俺レポートやるから帰るわ。」

「なんで俺が家に帰らないか知ってる?」

「マスコミがいるからだろ…」

「知っててソレ?」



こいつ、俺に何を求めてるんだ。


「…まあ、いいけど。俺ももうすぐ死ぬだろうし。」

「それは、悲しい、な。」

「はは、偽善者だねぇ。」


篠田の話は先が読めない。





水を飲み干し、篠田が席を立つ。


帰るのだろうか。


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