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第十話【精鋭突撃】

周囲の部隊に同行し、一時的にノアールの本部に戻るフィンとキャリー。


「いやぁ、生きてて良かったぁ!初めての戦場、死ぬかと思ったよ!」

「キャリー、なんでそんなに元気なのさ……」


そんな他愛もない会話をしている内に、やがて本部が見えてくる。


「おい、あそこにいるのベルじゃね?」

「あいつも生きてたか!まぁ、死ぬような奴じゃねえよな〜」


そう言う2人の視界には、確かにベルがいた。

……彼は何やら正座していたが。

その原因は、すぐ隣にあった。


「早く戻って……って、ぎゃぁぁぁぁっ!!」


突然絶叫するキャリー。


「おい急にどうし……って、うわぁぁぁっ!!」


ベルのすぐ隣。

2人を睨みつけてるレナがいた。





「バカッ!アンタたち、命令聞けないの!?」


帰還後すぐ、レナの怒声が本部中に響き渡った。


フィン、キャリー、そしてベルの3人は、全員並ばされ、頭を下げていた。


その傍らでは、チャラついた男──神蔵が「ま、ま、抑えて抑えて~」と苦笑している。


……そもそも、彼らの向上心を煽った犯人も彼だったが。


「違うんです……あのビークルが本部に……」


フィンは必死に弁解する。


「命令違反に理由はいらないッ!!」


レナの怒りは完全にガチだった。


「フィン、ベル、キャリー。アンタたち、まだ訓練生でしょ!?見学って扱いの!待機命令は絶対!なに勝手に前線出てんのよ!」


「す、すみません……」

「ご、ごめんなさい……」


フィンとキャリーが小さく謝った。


2人がしっかり反省を示す中、ベルは……微動だにしない。


「ベル、あんたも!」


「……。」


「おいっ!!」


神蔵が慌てて口を挟んだ。


「まあまあまあ。確かに命令違反はあれだけどさ、あのビークルの破壊、めちゃくちゃ助かったし?戦果としては一級品だし?ね?レナもそこは認めてやんなって」


「そ、それは……ぐ……!」


レナはしばらく言葉を失い、顔をプルプルさせていたが、やがてふいっと顔を背けて言った。


「……今回だけは、軽い罰で済ましてあげるからね。次やったら、問答無用で降格処分だから。」


(ツ、ツンデレ……)


フィンは反省していたが、思わず心の中で呟かずにはいられなかった。



ちょっとしたトラブルの後、即席テント内の作戦室にて現状の共有が行われる。


ノアールの部隊は、輸送船12隻を使って敵本部の包囲を完了。

レナたち先鋭部隊による「点」の撃破が進み、戦況は完全優位だった。


敵兵はおよそ300名以下、大型魔獣は全滅。勝ち戦は濃厚。……だが。

残る主戦力は本部の集中バリア内に固まっているため、重火器による遠隔射撃が封じられているのが唯一の懸念点。


「本当はこの場面、戦闘機の軌道爆撃がベストなんだけどね……。」

「アンタ、ノアールのエネルギー事情忘れたの?本部突入は私と神蔵、この中での最精鋭2人がやるから。新兵4人、今度こそは──待機しなさい。」


大斧を担ぎながら放たれたレナの発言に、フィンたちは素直に頷いた。

わずか10分前にブチ切れられた身。

さすがに、今度こそは逆らえない。


「じゃ、いっちょ派手にいってきますかー!」


神蔵がナイフを両手に回しながら笑った。


「派手にしすぎないでよ、バカ……」


レナが呟き、2人は静かに姿を消した。




──ここからは、レナ視点でお楽しみください。


———



足元の岩肌が、次々と砕けていく。


「新しく買った反重力ブーツ、やっぱり走り心地いいわね!給料日に奮発して正解だったわ!」


風を切るような速さで、レナは駆けていた。


隣では、神蔵が笑いながらナイフを軽く回している。


「おいおい、飛ばしすぎじゃない?」


「アンタが遅いのよ。」


「いやいや、俺も最高速なんだけど……。てか、そっちは大斧持ってるよね!?これですらその速さってどーいう……」


そのとき、前方に三人の敵兵──黒装束のシン兵が姿を現した。


「敵数3人、排除するっ!。」


レナは斧の戦闘システムを展開し、神蔵は片方のナイフを逆手に持ち替えた。


「いっくよー、レナ!」


「言われなくても!」


次の瞬間、風が裂けた。


ーーゴッ!


レナの斧が、一撃で巡回兵の一人を吹き飛ばす。


斧に当たったというより、“空気ごと”持っていかれたような感覚だった。


「……こっちもだ!」


神蔵は舞うように走り、残る二人の喉元にナイフを滑らせた。血が飛び散る前に倒れ込む。


「……なんとか、片付いたな。」


「ふん。何が『何とか』よ、いつものことじゃない。くれぐれも油断しないでよ、ここからが本番なんだから。」


レナは斧を再び肩に担ぎ、少しだけ頬を染めて神蔵から目を逸らした。


神蔵はそれに気づいているのかいないのか、まるで空気のような笑顔を浮かべていた。


「このまま一気に突っ込もうぜ。集中バリアの縁、もう見えてきてるし」


「うん。あそこを突破したら、私たちの勝ち。」


戦況は極めて良好。

だが、シン勢力があっさり全滅するわけがない。

レナも神蔵も、そう簡単には油断しない。


戦場の風が、二人の足元を撫でた。


「……行くよ、神蔵。」


「おうよ。ツンデレお嬢の後ろは、俺が守るぜ?」


「は、はあ!? 誰がツンデレお嬢よ!!」


ツンとした声が、戦火の中で溶けていった。


次回は、23時を目処に更新します。

お楽しみに!

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