4話 甘えん坊なスカーレットお嬢様
「レーゼ! これを飲むのじゃ!」
「こ、これは……何ですか?」
あれからお嬢様を追って走ったのですが、お嬢様の足の速さは本当に叶いません。しかも追い付いたと思えば、皆さんからは何故か暖かい目が向けられて、挙句の果てには【先輩! 大丈夫ですかぁ!?】、【お前ロリコンだそうだな】、【無理せず有給取れよ?】、【入院の手続きをして置いたぞ】、【お身体大丈夫ですか?】、【ロリコンが治ると良いのぉ】とか色々な声を掛けて頂き、もう穴があったら入りたい気分ですよ……とほほ。因果応報、私が巻いた種ですが、まさかここまで大きな事態に発展するとは。お嬢様に少しだけ意地悪したかっただけなのに……ぐすんっ。
「うむ、レーゼのロリコンを治す為のお薬りなのじゃ!」
ロリコンに効く薬って何ですか? これどう見ても凄くお高いポーションなのでは無いでしょうか? 恐らくこれ1つで、私の年収かそれ以上のとんでもない高価な代物の筈。いくら何でもそれを頂くことは出来ません。
「え、えぇぇ……お嬢様、実は私ロリコンでは……んん!?」
「良いから黙って飲むのじゃ!」
「ゲホッゲホッ……おぇぇ」
「ほら、全部飲むのじゃ!」
何これ……めっちゃ苦くて不味い。思わず脳裏にお母様の作る料理が過ぎってしまいました。お母様は料理を作るのが趣味ですが、その……料理の腕が壊滅的なのです。普通に料理を作れば、見た目はヘドロのような紫色の異臭を放つ悍ましい物が出来たり、プリンを作ると爆発したり、カレーを煮込むと屋敷中に毒ガスが蔓延したりと……色々と伝説があります。お母様が作ったお菓子で何人病院送りになった事やら……色々とそれはもう凄まじいの一言でした。
「良し、無事飲んだな。身体はどうじゃ?」
「ええ、何だか力が漲って来る様な……」
「これでロリコンなる病も時期に完治するじゃろう!」
「…………」
もう何も言わないで置こう。これ以上言うと墓穴を掘りそうな気がしてきました。しかし、私の清廉潔白で真面目なイメージが、音を立てて崩壊して行く様な……後日皆さんにはしっかりと謝ろう。
「ふわぁあああ……んん」
「あらあら、お嬢様お休みなさいますか?」
「んむ」
可愛い欠伸ですね♡ もう夜も遅い、いつもならお嬢様がスヤスヤと寝ている時間です。私も明日に備えてそろそろ自室に戻って寝ようかな。
「レーゼ、妾の抱き枕になるのじゃ」
「はい♪」
うふふ♡ お嬢様は日が増す毎に甘えん坊さんになっていますね♪ こんなに主に求められる何て、私は何と幸せな女なのでしょう♡ ママのおっぱいが恋しいお年頃……でも、このままだとお嬢様は大きくなっても甘えん坊さんのままな気がします。
「ん!」
「お嬢様失礼します」
お嬢様は私に抱っこしろと言わんばかりに腕を上げていますね♪ お嬢様のアホ毛がぴょんぴょんしてる姿を見ると本当に分かりやすい子です♪
「妾の許可無く……勝手に居なくなるのはダメなのじゃ」
「はい♪ よしよし♪」
本当に私は恵まれています。元公爵令嬢と言う人間の私を……身も心もボロボロで、奴隷同然の様な私を拾って下さり、ここまで良くして頂いたのです。魔王様を始め、魔族の方達も優しく、人間の私を暖かく迎え入れてくれました。
「はわわ!?」
「チュッ♡ むぎゅう♡」
「く、くるしいのじゃ!」
スカーレットお嬢様のお陰で、私は暖かな心を取り戻す事が出来たのです。経緯はともあれ、今回も私の身体を心配して下さり、家族同然の様に接して下さるお嬢様が私は大好きです♪ 皆様には返し切れない恩を受けました。
「うふふ♡」
「顔が近いのじゃ! な、何じゃその顔は」
「何でもありません♪ さあ、ベッドに参りましょう♪」
レーゼリアはお嬢様を抱っこしながら寝室へと向かう。道中、レーゼリアはお嬢様の背中を優しくトントンとしながら寝かし付けようとすると……
「んにゅ……」
「あらあら、寝室に行く前にお寝んねしそうですね」
「んん」
何だか私がママになった様な気分ですね。私が幼い頃は、お母様もこんな風に私を抱っこしてたのかな? はぅ……幸せ♡
「すぅ……すぅ……」
「ごゆっくりとお休み下さいませ。チュッ♡」
今でも家族に会いたいと言う気持ちもありますが、それ以上に今はスカーレットお嬢様の成長を間近で見届けたい……お嬢様が将来恥じる事の無い、立派なご令嬢になるように元公爵令嬢である私が、全身全霊を持ってお仕えするのです。
「お嬢様、ベッドに着きましたよ」
「んん……」
今日は1人で寝れそうかな? 本当は私もお嬢様と添い寝したい所ですが、毎日一緒に寝てたらお嬢様は何時まで経っても1人で寝る事が出来ません。それに私も半年間、自分の部屋のベッドで寝て居ないのです。
「ふにゅ……」
「甘えん坊さん♡ チュッ♡」
仮に自分の部屋で寝たとしても、深夜にお嬢様のお花摘みに同行したり、怖がりなお嬢様が寝付くまで傍に居たりと……結局お嬢様の傍に居た方が良いのです。
「お嬢様、ベットに……あらあら♡」
「すぅ……すぅ……」
これは困りましたね。お嬢様が私の服の袖を力強く握っています。こんな事をされてしまったら、もう一緒に寝るしか無いじゃないですか♡ お嬢様はいつも私の心を掻き乱して来るのです。ずるい御方……
「ぐずっ……ううっ」
「お嬢様、起きてしまいましたか……」
「一緒に寝るのじゃ……ぐすんっ。何処にも行かないでぇ……」
「うふふ♡ お嬢様の傍に居ますよ♪」
「腕枕……」
「はい♡」
私と2人の時だけは、お嬢様も甘えん坊さんなのです♡ 普段は強がって居ますが、お嬢様はとても寂しがり屋さんで、甘えん坊な上に恥ずかしがり屋さんです。本当のお嬢様を知ってるのは、メイドである私だけかもしれませんね。
「明日は城下町を散歩するのじゃ」
「またお忍びですか?」
「うむ! 最近街で流行りの【しゅーくりーむ】なる食べ物を食べたいのじゃ!」
魔族と人間……容姿は違えど、中身はそれ程変わらない。争いばかりでは無く、人間と魔族が手を取り合える世の中になったら、どれだけ素晴らしい事なのかな。むしろ、人間の方が醜い生き物の様に思えてしまいます。
血で染められた権力争い、欲に溢れる社交界、飢える民、奴隷、弱者から搾取する強欲な貴族等……それに比べて魔族の方は、同族意識が強く奴隷と言う制度は無く、魔族領に住んでる民はみんな活気に満ち溢れており、お互い助け合っている為、飢える民は居ない。それに魔族の方はお優しい方が案外多いのです。
「仕方ありませんね。また魔王様には内緒ですか?」
「うむ!」
「うふふ♪」
お嬢様が密かに城下町行く時もしっかりと魔王様には報告をしています。魔王様は知らぬフリをしていますが、本当は一番スカーレットお嬢様の安否を心配なさっています。お嬢様の前では、いつも内緒と言っておりますが、本当は全て筒抜けなのです。
「パフェも食べに行くのじゃ! それと出来たてのパンやクリームシチューも食べるのじゃ!」
「お嬢様、食べ過ぎは良くありませんよ?」
これはまた寝かしつけるのに時間が掛かりそうですね。お嬢様が寝た後が、私の本番だと言うのに……じゅるり♡
「レーゼ♡」
「あらあら、ぴったんこですか♪」
「暖かいのじゃ」
ぐふふ♡ 可愛い……お嬢様が寝た後は、私のお楽しみタイムです。キスし放題の上にぺろぺろだって出来るのですから♡ お嬢様を裸にして、お胸やあそこの発育もしっかりとチェックしなくては……ぐへへ♡ これもお嬢様の身体の異変が無いかチェックする為の必要な行為。
「レーゼ、何か絵本を読むのじゃ」
「では一冊だけですよ?」
「うむ!」
スカーレットとレーゼリア……2人は主と従者と言う関係だが、傍から見ると世話の掛かる娘を見守るお母さんである。