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3話 駆け巡るお嬢様【スカーレット視点】

 


 現在、魔王城では新たな噂で持ちきりとなっている。あの冷静沈着でどんな物事にも動じないメイド長が、不治の病【ロリコン】と言う噂が……


「大変なのじゃ!」


 レーゼが病気……確かに人間は身体が弱く直ぐに病気に掛かるとは聞いておるが、まさかあのレーゼが……今思えば、確かに病の兆しはあったのやもしれぬ。レーぜは妾とお風呂に入る際、抱っこされた時や一緒に寝る時とかも常に顔を赤くして息を荒らげながら【はぁ……はぁ……】と苦しそうに悶えて居たのじゃ。レーゼの主として、部下の健康状態にもっと早く気付くべきじゃったわ……



 ―――スカーレットは鬼気迫る様な表情で、魔王城の廊下を裸で駆け抜ける。そして、タイミング良く1人のメイドとすれ違うのであった。



「お、お嬢様!? 衣服はどうなされたのですか!?」

「おう、ユリネ! 今はそんな事どうでも良いのじゃ! レーゼの一大事なのじゃ!」

「どうでも良くありませんよ! 丁度洗濯を終えた衣服がありますので、取り敢えずこれを着てくださいませ!」


 スカーレットに話し掛けて来たのは、メイドの1人である犬獣族のユリネだ。白銀の長い髪に犬耳と尻尾が生えた童顔の女性である。


「レーゼが……レーゼが!!!」

「お嬢様、落ち着いて下さいませ! レーゼ先輩がどうしたのですか?」

「不治の病に罹ったのじゃ!」

「ええええええええぇぇ!?」

「恐ろしい名をした病気なのじゃ……どうやら、【不治の病(ロリコン)】と言うらしいのじゃ! 前々から前兆はあったのじゃ……妾が腑甲斐無いばかりに」

「ロリコン……ですか。聞いた事がありませんね。人間族特有の病でしょうか? どんなご病気なのですか?」

「恐らく……【身食い(プラム)】に似た物じゃと思う」

「それは深刻で御座いますね……」


 もしかしたら、エリクサーだけでは治らぬかもしれぬな。魔王直属の医療チームも緊急招集じゃ! 魔王軍の四天王の1人である【原初の悪魔姫】リーフェ・オルトリンデも呼び寄せるのじゃ! あの者は医療にも明るい……絶対にレーゼは死なせぬのじゃ! レーゼは妾の大切な……


「私の方からもメイド達に伝えて置きます」

「うむ、頼んじゃぞ!」


 仕方無い……苦手ではあるが、あの過保護なバカ親に頼るしか無い。レーゼの命が助かると言うのなら、妾は土下座でも何でもしてやるのじゃ!





 ――――――――




 ◆魔王城・最上階、魔王軍幹部会議にて◆



 魔王と幹部達が集まり、首都ザナルカンドの内政や人間族との前線への対応や今後の戦略について侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論へと発展していた。


「パパ! 一大事なのじゃ!」

「おおおおお!? 愛しの我が娘、スカーレット! スカーレットが話し掛けて来てくれる何て……我は今、猛烈に感激しているぞ! あぁ、明日魔王城に隕石が落ちるやもしれぬな……ぐずっ。それで、どうしたのだ? 新しいおもちゃが欲しいのか? それとも寂しくなったか? パパと遊び……」

「魔王様、会議中で御座いますが……」

「ヘルツ宰相よ、我が娘が尋ねて来てくれたのだ。無粋な事を申すで無い」

「パパ大変なの!」


 スカーレットは鬼気迫る表情で父の元へと駆け寄って、レーゼリアの容態を説明した。


不治の病(ロリコン)か……聞いた事の無い病気じゃな。レーゼが確かにそう申して居たのか?」

「そうじゃ! レーゼが……レーゼが!」

「スカーレット、落ち着きなさい」


 スカーレットと父である魔王の話しを聞いていた大臣達がレーゼリアの病気について各々意見を述べる。


「あのレーゼ殿が?」

「あの面倒見が良く、真面目で心根が純潔のメイド長が申した事だ。ロリコンとなる病は人間族の中でも相当恐ろしい病であろう」

「動悸……【はぁ……はぁ……】と苦しそうに悶えて居たとあらば、心臓の方に巣食う病なのかもしれぬな」

「いや、原因は心臓では無く別にある可能性も捨てきれません」

「ふむ、ここは我が軍の四天王である【原初の悪魔姫】リーフェ・オルトリンデ様の知見が必要じゃな」

「リーフェ様は最前線で、宗教国家イスタール法国の特殊部隊【火滅聖典】と交戦中。現地で指揮を取っておられるかと」

「そうか、しばらくは戻って来られるな」


 レーゼリア・システィーナは、人間族でありながら頭は切れる上に仕事も出来る為、周りの魔族達からも一目置かれているのだ。常に冷静沈着、高材疾足(こうざいしっそく)、皆からも頼りにされる存在である。


「パパ! あれちょーだい! 【精霊女王の泪(ハイエリクサー)】!」

「スカーレットよ、あれは……莫大な富とエルフの女帝に我が国の交通利権を引き換えに手に入れた国宝級の中の至宝だ。流石にいくらレーゼリアとも言えど、あの薬は渡せぬ」

「むぅ……パパ、お願いなのじゃ♡ チュッ♡」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!! 娘の為ならば、やもえない」

「ありがとう! パパ大好き!」


 ふふ、妾の父はこう言えばチョロいからのぉ〜精霊女王の泪(ハイエリクサー)はとても高価な物で、それを飲むとどんな呪いや病でも綺麗に打ち消してくれる優れものじゃ。しかも、寿命も遥かに伸び老化も止まり、魔力量や魔法技能も格段に向上するであろう。人間であるレーゼも老ける事無く、妾とこれからも一緒に元気で暮らせるのじゃ!

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