1話 魔王の娘スカーレットの侍従、メイド長のレーゼリア・システィーナ
職を探さねば……やばたにえん:(っ`ω´c):グヌヌ
今準備してる新作とはまた違う作品ですが、箸休め程度にサクサク読んで頂けると幸いです(*・ω・)*_ _)
―――人間と魔族―――
両種族は互いに相容れぬ存在だ。東のトライリア大陸に住まう人間族と西の大陸ルフリムに住む魔族。争いの歴史は長く、その歴史は血に染められ見るも無惨な物だ。これは激動の時代の中を生き抜いた元公爵令嬢の物語である。
――――――――――――
私の名前はレーゼリア・システィーナ。種族は人間で、元公爵家の令嬢だった女です。8年前に馬車で遠方に出掛けた際に私と護衛達は不幸にも盗賊に襲われました。護衛達は全滅……そして、私だけが捕らえられてしまい、その後はご想像通りの悲惨な結末が私を待って居たのです。盗賊達の慰み者にされ、服も着させて貰えずに性奴隷の様な扱いを受け牢屋に鎖で繋がれてました。私は尊厳とプライドや数多くの物をズタズタに踏みにじられて、早く死にたいと強く心から願って居ました。
やがて盗賊達は飽きるまで私を貪り尽くし欲望の赴くままに弄んだ後、奴隷商に高値で売ったのです。私は【傾国の美姫】とも呼ばれたお母様の血を色濃く継いでいるので、闇オークション会場では目が飛び出でるような高値で取引されました。
お母様ゆずりの金色に輝く艶のある長い金髪、顔のバランスは理想の黄金比と呼ばれる程に整っており、まさに眉目秀麗。自分で言うのもあれだけど、体型も出る所は出たメリハリある体型で、殿方と擦れ違う度にいつも欲望の視線を感じておりました。
しかし、性奴隷となってからは……肌もボロボロに荒れ、性病までも患ってしまい本当に人生落ちる所まで堕ちて泥沼の様な生活を送る事に……そんな中、あちらこちらへと私の意志を置き去りにするかのように、気付けばこの身は魔王領へと流れて来たのです。
その時、私はいよいよ人生の終わりを感じました。魔族は人間からすれば憎き敵だ。しかも、魔族の中でも一番恐れられている恐怖の象徴……魔王アドラーゼルスが統治する首都ザナルカンドに連れて来られたのだから……私はたまたま人間の公爵令嬢と言う肩書きを持って居た為、魔王様の目に止まったのです。
―――しかし、その出会いが私の人生を180°ガラッと変えたのです。
「メイド長レーゼリアよ、娘は何か言っていたか?」
「いえ、何も仰ってはおりません」
「ほ、本当か? そろそろパパが恋しいとか……」
「いいえ、何も仰っておりません」
魔王様は私が思ってたイメージとは真逆の存在だった。もっと悪逆非道で人間をおもちゃのように扱う様な御方なのだと勝手にイメージしていたのですが、現実は理知的で気性も穏やかであり、柔軟で物事を多角的に見る事の出来る視野の広さ、相手を思いやる精神に細やかな気配り、争い事は好まない、更には人間側とも有効関係を築きたいと言うお考えもある素晴らしい御方でした。しかし、そんな魔王様には大きな弱点があったのです。
―――それは親バカ……超が付く程に幼い娘のスカーレット様を溺愛いしているのです
しかし、魔王様は余りにも不器用で、娘さんとの関係が良くありません。魔王と言う立場もある為、変なプライドや見栄があり、スカーレット様に対して愛情表現やアプローチをするのが超が付く程に下手くそです。最早絶望的と言っても過言ではありません。見てるこちらが目を覆いたくなるくらいに酷いのです。
「スカーレットの事をどうか宜しく頼む。逐一報告をしてくれ、朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯は何を食べたか、今日は何をして遊んでいたのか……とにかく全てを報告しなさい。報告書はなるべく1枚に纏めるようにな」
「は、はい……(圧が凄まじいわね)」
毎晩お嬢様の身の回りの出来事を報告書で作成して、翌朝に魔王様に提出するのが毎日の日課の1つです。正直かなり面倒ですが、魔王様には返しきれない大きな恩があるので、魔王様の命令とあれば何でもするつもりです。
「すまない、そろそろ公務に戻る」
「はい、私もこの辺で失礼致します」
良し、今日もお嬢様のメイドとして頑張ろう。不思議と今の仕事が私は大好きで、公爵令嬢をしていた頃よりも今が一番充実しています♪ 今の私を例えるなら、鳥籠から解き放たれた鳥だ。
―――――――――
「お嬢様……脱いだ下着はちゃんと籠に入れてくださいませ。お菓子のゴミもそのまま……また礼節の作法の基礎からやりましょうか?」
「う、うるさいのじゃ! 妾は魔王アドラーゼルスの娘じゃぞ!?」
「はい、知っています」
本当にスカーレット様は我儘で手が焼けます。スカーレット様の年齢はおいくつなのか分かりませんが、人間の年齢で例えると推定5歳くらいと言った所でしょうか? しかし、魔族は人間よりも成長するのが早いのか、言語や知識の吸収力には驚かされる一方です。
その為、私がしっかりと教育を施さなければスカーレット様の今後に大きく影響します。魔王様は娘に甘い為、習い事も強制させず好きな物を何でも買い与えていたそうで……はぁ。これは私が鬼になるしかありませんね。
「お嬢様、して此度はどの様なご用件でしょうか?」
「妾は今からお昼寝をするのじゃ」
「そうですか。ごゆっくりとお休みなさいませ」
「…………」
「ん? どうなされましたか?」
「お昼寝!」
うふふ♡ 本当に分かりやすい子ですね〜お嬢様たら超可愛い♡ 燃えるような深紅のボブカットヘアーのサラサラな髪、大きな愛らしいぱちぱちとした目にプルンとした貪りつくしたい唇、国宝級の美しい白い肌……チラチラと見え隠れしている八重歯やぴょんぴょんとしているアホ毛もお嬢様のチャーミングポイントですね。身長は私の太腿ぐらいの高さで、力の無い私でも軽々と抱っこする事が出来ます。
「むうっ……だから!」
「どうしたのですか? そんなベッドをバンバンと叩いて」
「妾が一緒に寝てやるのじゃ! 光栄に思うが良かろう!」
「そうですか。それは光栄で御座いますね」
「べ、別に寂しいからとかでは無いからな!? レーゼが抱き枕として、たまたま……たまたま最適なだけじゃ! 別にお主の変わり何ぞ沢山居るのじゃからな!? 自惚れるで無いぞ!」
「そうで御座いますか。では、他の者を呼んで参ります」
「ふぇ……?」
ふぇ……!? あぁ……行けません。内心ニヤニヤが止まらないよぉ♡ 一旦深呼吸して落ち着かねばなりませんね。まさかここで【ふぇ……?】をぶちかまして来るとは……いきなりお嬢様の【ふぇ……?】は心臓に悪過ぎます! ただでさえ可愛いが過ぎるのに、お嬢様の鈴の音が鳴る様な麻薬ボイスで【ふぇ……?】は反則です!
「妾と寝るの……嫌なのか?」
「はうっ……♡」
私の表の顔は、いつも冷静沈着の雰囲気を装ってはおりますが、私の内心はいつも黄色い悲鳴を上げて高頻度で発狂しております。そろそろ三途の川が見えて来てもおかしくはありません。
「妾とおひるね……ぐずんっ」
「わ、分かりました。お嬢様、泣かないで下さい。よしよし♪」
流石に意地悪が過ぎましたね。私は急いで泣きそうなお嬢様を抱っこして、よしよしとあやしました。私の腕の中でお嬢様は目に涙を浮かべながら私の顔をじっーと見ています。この上目遣いからの涙目……あぁ、私がイケナイ事をしているようで背徳的ですよぉおおおお!
「いじわるっ……レーゼなんて嫌いなのじゃ! ふんだ!」
「ええ〜そうなのですか? では、一緒に寝るのやめます?」
「そういう所!」
「うふふ♡ すみません。では一緒にお寝んねしましょう♡」
素直になれないお年頃なのでしょうね。私はお嬢様との付き合いも結構長いので、お嬢様の考えてる事は何となく分かります。お嬢様のお母様は、身体が元々弱く、お嬢様をご出産なさった際に命を落としたそうで……お嬢様の境遇も聞けば聞くほどに悲しいものです。
お嬢様は我儘で攻撃的な性格ですので、他のメイド達は萎縮しております。なのでお嬢様の面倒を見るのは私のお仕事なのです。お嬢様が、本当は心根は優しく素直な子だと言うのは私は知っています。だから、私はお嬢様がせめてありのままの自分で居られるように精一杯お仕えする所存です。
「…………」
「チュッ♡」
「はわわ!? こ、こらレーゼ! いきなり妾の頬に許可無くキスするな! しかも無言で!」
「では、キスしますね」
「言えば良いと言う訳では……ぷぎゃあ!?」
「んんっ〜マッ♡ チュッ♡」
お嬢様は愛情を求めている反面、甘え方が分からず下手くそなのです。だから、私が常に一緒に寝たりお風呂に入ったりとお嬢様が寂しくない様に傍に寄り添っています。
「では、お嬢様失礼します」
「うむ、腕枕するのじゃ……それと頭も撫で撫で……ちて」
「はい♪」
魔族も人間も見た目は違えど、中は人間と変わりません。私とお嬢様の関係は主と主従……ですが、不思議と主と言うより世話の掛かる妹の面倒を見ている様な感覚です。
「……」
「うふふ♡ お嬢様は甘えん坊さんですね♪」
「甘えん坊じゃないもん! むぅ……」
「よしよし♪」
あぁ……ちょろ過ぎる♡ 可愛い子を見るとつい意地悪したくなるのは最早人間の摂理かもしれません。お嬢様のメイドとなってから、段々とイケナイ方向へと私の性癖が歪められて、私の中の貧相な罪悪感が……ごほんっ。これ以上言うと墓穴を掘りそうなので止めて置きましょう。
「レーゼ……」
「どうしました?」
「あくまで噂で聞いた話なのじゃが……レーゼは結婚してしまうのか?」
「はい?」
え、何その噂? 私、そもそもお相手がおりませんよ? 20歳を超えると世間では【行き遅れ】と言われるこの世知辛い世の中、私の年齢は21歳。もう半ば結婚何て諦めて居ますよ……とほほ。
「根も葉もない噂で御座います。私は独身で御座います」
「そ、そうか……なら良かった(ボソッ)」
「お嬢様、今何か言いました?」
「な、何でも無いのじゃ! まあ、レーゼは容姿端麗じゃが、もう賞味期限が切れた行き遅れじゃもんな! だが、心配するでない。例えレーゼが行き遅れになろうとも妾が、け、けけ……けっこんちてやるのじゃ(ボソッ)」
「まあ♡」
あらあら♪ お嬢様の顔が赤くなりましたね♪ しかも、最後の方に結婚と言う言葉が聞こえましたね♡ 前にお嬢様に【結婚は殿方だけでは無く、性別問わず結婚出来ますよ♡ 一番大切なのはそこに愛があるかどうかです】と冗談で言ったつもりが、まさか純粋に信じちゃってると言うの!? 何と言う……こんな可愛いお嬢様からそんなふうに言っていただけるだけで、私の股間が濡れちゃうじゃないですか♡
「レーゼ! 妾の許可無く結婚は許さないのじゃ! レーゼは妾の……」
「んん? 妾の?」
「…………」
あぁん♡ 本当、何なのこの子は!? このままでは、いつか理性を失った獣になってしまいそうだわ! はぁ……はぁ……思わずお嬢様を力強く抱いてぺろぺろしちゃいたくなる衝動が……うぐっ。静まれ、私の中の欲望と言う名の荒ぶる大魔王よ! いくら何でもメイド長たるこの私が、主であるスカーレットお嬢様をめちゃくちゃにするのは言語道断!
「ふんだ! 何でもないのじゃ! この行き遅れメイド!」
「ほほう?」
気の所為で無ければ、先程から【行き遅れ】、【賞味期限切れ】と言う少々解せないお言葉がはっきりと聞こえましたよ? 少しお仕置をして分からせてあげる必要がありますね。
「お嬢様、足の裏に何か付いておりますよ?」
「へ? 何も付いて……あはははははははははは!! や、やめるのじゃ! あははははははは!!!」
「あらあら、これは大変」
「んみゃあああああああああ!?」
レーゼは満足するまでスカーレットの身体をこちょこちょし続けた。スカーレットは悶絶しているが、この時のレーゼの笑顔は、公爵令嬢の頃よりも遥かに輝いていたのである。
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