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はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!  作者: さとう
第六章

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ガイアルーン王国にて

「ここが、ガイアルーン王国……」


 黒鉄レオンは、高くそびえ立つ『塔』のような建物……ガイアルーン王城を見て呟いた。

 王城、というよりはダンジョンのような塔。

 城下町のど真ん中に立ち、その周囲をドーナツのように街が囲んでいる、今までにないタイプの国。

 城を見上げていると、悪女神フォルトゥーナことエルフ族のラーズハートが言う。


「この国の勇者についてはご存じですか?」

「いえ……ファルーン王国にいた時も思ったんですけど、他国の勇者についての情報は知らず……というか、召喚されていることも知りませんでした」

「だよなあ。ファルーン王国ではクラス召喚だったけど、他国は数人とかなんだろ?」


 鎧塚金治が、城下町で買った肉串をガフガフ食べながら言う。

 ラーズハートはクスっと微笑む。


「勇者はある意味、国の最終兵器ですから。魔王軍との戦いは膠着状態で、もう何年も魔王どころか四天王も動きません……あるのは小競り合い程度。だから五……いえ四国は、魔王軍を悪い意味で放置し、それぞれの国の顔色を窺いつつ、好機を狙っているんです」

「……好機? なにそれ。あ、これどう?」


 相川セイラは、城下町にあった香水店で買った大量の香水の匂いを嗅ぎながらご満悦。ちゃんと話は聞いていたのか、ラーズハートに香水を勧めつつ聞く。

 ラーズハートは、甘いミルクのような香りの香水を満足そうに嗅ぎながら言う。


「……四国は、それぞれ機を伺っています。アグニルーン、エイルーン、ガイアルーンは豊富な水資源のあるシャオルーンを、そして三国を手中に収めるため、ファルーンは勇者の一人をシャオルーンに送り込んだ」

「───……まさか!!」

「そう。有馬慧……彼は恐らく、ファルーン王国がシャオルーンを手にするために打った先手」

「マジか……有馬の野郎」

「本人に自覚があるか不明ですがね」


 ラーズハートは苦笑する。

 そして、ぼそりと呟いた。


「でも……まさか、あれほどまで『摸倣(コピー)』に馴染むヒトが存在するとはね。しかも、私たち七女神じゃない、得体の知れない寵愛を受けている……くそ」

「ラーズハートさん?」

「あ、いえ……何でもありません」


 悪女神フォルトゥーナことラーズハートはにこっと微笑む。

 そして、目の前にある『塔』を見て言った。


「とにかく、私たちがなすべきことは一つ。新たな魔王となった有馬慧、そして魔王軍との決着です。そのために黒鉄レオン様……あなたは真の勇者として、エイルーン、アグニルーン、ガイアルーンの勇者たちを説得し、仲間に引き入れてもらいます」

「……それが、オレの使命!!」

「はい。いずれは、ファルーン王国の勇者も……そして、悪しき魔王を討ち取り、真の平和を」

「ああ、任せてくれ」


 黒鉄レオンは胸をドンと叩き、気合いを入れる。

 

「へ、オレも忘れんなよ?」

「鎧塚……」

「サポなら得意だし」

「セイラ……」


 鎧塚金治はレオンの背中を叩き、相川セイラは肘でレオンを軽く小突く。

 

「オレは最高の仲間に囲まれている。本当に幸せだよ」


 黒鉄レオンは笑う。

 たとえ、悪女神フォルトゥーナに踊らされていると知らずとも。

 すると、ガイアルーン王城から夢見レイナがやってきた。


「みんな、謁見の申請取れたよっ!!」

「ああ、みんな……行こう!!」


 こうして、ある意味で最悪な勘違いをした勇者レオンの真の戦いが始まるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 そこにいたのは、『少女たち』だった。

 数は四人。その中にいるリーダーらしき少女は、玉座に座りつまらなそうに言う。


「つまんない。帰れば?」

「なっ……」


 謁見の間にいるガイアルーン王国の勇者は、十六歳の少女だった。

 白銅に輝く美しい装飾が施された軽鎧。髪は長い黒髪、鳶色の瞳、ミニスカートなので下着が見えそうだがスパッツを履いているせいか綺麗な足しか見えない。

 足を組み替え、つまらなそうに言った。


「優華、ファルーン王国の勇者ってこれ? クソ雑魚じゃん」

「藍音……あなた、もう少し真面目に答えなさい」


 ガイアルーン王国『勇者』、久寿川藍音くすがわあいねは、黒鉄レオンをつまらなそうに一瞥し、ガイアルーン王国『賢者』の世美川優華(よみかわゆうか)に向けて舌を出す。

 世美川優華。長い黒髪をお団子にした上品そうな少女だ。着ている礼服も品があり、立ち振る舞いも優雅さしか感じない。


「改めまして……ファルーン王国の『勇者』黒鉄レオン様。私はガイアルーン王国『賢者』の世美川優華……あなたたちと同じ十六歳です」

「同い年……」

「ふふ、よく大人っぽいって言われますけどね」

「にゃはは、老け顔ってだけじゃん」


 ギロリと優華が睨んだ先にいた少女が震えあがった。

 ガイアルーン王国『暗殺者』の城山美晴が首をブンブン振る。

 こちらは幼い顔立ちで、くせっ毛で茶色いロングヘアがふわふわ揺れた。


「じょじょ、冗談だよ冗談~……優華は美人さんだって!! ね、すもも」

「……どーでもいい」


 ガイアルーン王国『武術家』の桃井すももは、あくびをする。

 そして、なぜか謁見の間の片隅にあるクッションだらけのベッドに飛び込むと、そのまま寝てしまったようだ。

 全員、十六歳の少女たち。

 だが、黒鉄レオンは感じていた。


(……なんだ、この子たち)


 存在感が、半端じゃなかった。

 それぞれが高レベル勇者。エイルーン王国の勇者も桁違いの強さを感じたが、この少女たちはその上をいく。

 すると、藍音は言う。


「ははっ、ファルーン、エイルーン、アグニルーン、ガイアルーンの勇者が協力して、魔王と四天王をぶっ殺して、さらに新たな魔王とかいう雑魚勇者を倒そう? しかも偉そうに言うのが、そこのクソガキ雑魚能無しボケビビリうんこ勇者の、なんちゃらレオンとか? じょーだんもじょーだん、今世紀最強のクソギャグだわ」

「なっ」

「藍音、いい加減にしなさい。言い方というものが」

「うっさい。こっちは先日取り逃した超カッコいいニチアサ昆虫ヒーローみたいなのを取り逃して傷心してんのよ。あいつらの皮剥いで、変身ヒーローみたいな鎧作りたかったのに」

「またあなたはそんな……それ、近いうちに追撃命令出るわよ」

「まじで!! やったあ!!」

「あの!!」


 と、黒鉄レオンは叫ぶ。

 鎧塚金治も限界が近いのか、歯を食いしばって耐えている。

 相川セイラは静かに睨み、夢見レイナは目を赤く輝かせキレかけていたが、ラーズハートが手で押さえると何故か静かだった。

 黒鉄レオンは言う。


「オレは確かに力が足りないかもしれません。でも……この世界を平和にしたいって気持ちは、誰にも負けません!! お願いします、力を」

「あーっはっはっはっは!!」


 と、藍音が笑い出す。

 そして───どこからともなく『大剣』を抜き、レオンに突きつけた。


「夢見るなら寝たら? うっざ」

「な……」

「あたし、優華、美晴、すもも……ガイアルーン王国の勇者は、つい最近こっちに転移した雑魚の言うことなんて聞かないわ。あんた、レベルいくつ?」

「……22」

「はっ、お話にならないわ。魔王のレベルはいくつか知ってる?」

「35、って……」

「それ嘘よ。レベル35は魔王城を守る雑魚守衛のレベル。魔王直属部隊の平均レベルは90オーバーで、精鋭は100超え当たり前。四天王は150以上で、魔王なんてレベル200以上よ……ま、真偽不明だけどね」

「なっ」

「あたしのレベル、いくつかわかる? レベル128……アグニルーン、エイルーンのヌルい温室育ちの勇者とは、文字通りレベルが違う。それでも、魔王どころか四天王と相打ちできるかもわかんない。いい? 夢見たいなら勝手に行け、で、死ね。捲き込むな……帰れ」


 殺気を飛ばされ、黒鉄レオンは無様に膝を付き、気を失ってしまった。


「こっちは八歳で転移してもう八年。ひたすらレベル上げと修行の毎日だったのよ。あんたらみたいな『お子ちゃま』なんかと肩ぁ並べて戦うなんざ、ゴメンだっつーの」


 藍音は黒鉄レオンたちを謁見の間から叩きだした。

 そして、玉座に深く腰掛ける。


「あーイラついた。なにあれ、主人公にでもなったつもり?」

「異世界に夢を見ているんでしょうね……憐れな子」

「あのさー……藍音、優華、あたしとしてはあのエルフのが怖かったかもー」

「……ぐぅ」


 久寿川藍音、世美川優華、城山美晴、桃井すもも。

 ガイアルーン王国四人の勇者たちに新たな任務が下されるまで、あと数日。 

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最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活
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