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たんそくおじさん  作者: とりどうふ
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第三話

ー背景、心の中のたんそくおじさんへ

やばいです。大学生最高!どれだけ学食で揚げ物を食べても胃もたれしません。一日校内を歩き回っても膝は痛くならないし、寝る前に読んだ本の内容を翌日の夜まで覚えているのです。

前世での体とどれほど違うか、貴方にはきっと想像できないでしょう。年が違うだけでこんなに見える世界が変わるなんて、夢にも思いませんでした。そして職場で昇進していった同期が今日も会社にこき使われていると思うと気の毒でなりません。


とまあ冗談はここまでにして、俺は自室の窓から見える景色に目を移した。

俺の寮の部屋は高い建物にある。同じ階にはもう2人いて、スターシャとジェニファという新入生の女の子だ。スターシャは優しくとても気さくに話しかけてくれる。ジェニファはまだ俺のことを認識していないようだ。

 この寮の素晴らしいところは一人部屋なことだな。ジョリィの記憶があるから正直自分の体を見ても何とも思わないのだが、流石によそ様のお嬢さん達の着替えや寝顔を見るわけにはいかない。

にしても景色が良い。昼間から窓の外を眺め、読書をしながらお茶を飲めるとは・・・夢見ていた定年後はこんな感じだったのだろうか・・・


***


 その晩スターシャが俺の部屋にやってきた。


「ねえジョリィ、私ホームシックにかかったみたい。辛くて寂しくて・・・ジョリィは平気?」


あーそうか、10代の一人暮らし初めての子だったらそうなるよな。俺も数年前に熟年離婚して妻が出ていった時は流石に胸にぽっかり穴が空いたようだったさ。その時は酒と馬が救ってくれたが、そんなアドバイスを未来ある若者にするわけにもいかないしな。


うーん、何か若手から聞いた話で参考になるものはあったか・・・そうだ

「男を作ってみたらどう?寂しさは人で埋めるのが手っ取り早いって聞いたことがあるよ」

確か2年目のイケイケな林さんがそんなことを言っていたんだが、あれ、これセクハラとかにならないよな?


「え?あぁ、ボーイフレンドってことね。えー私にできるかなあー」

スターシャは最初こそ驚いていたが、途中からなぜか恋バナモードに入ったらしく、この後就寝の鐘が鳴るまで好きなタイプや町で見かけたイケメンの話など散々聞かされる羽目になった。


ーまあ、ホームシックが治ったようでよかったよ。


***


ー背景、心の中のたんそくおじさんへ

人間、世渡りが上手かったら最強だと思いませんか。


 今日授業でミケランジェロという画家の話が出た。正直俺は名前を聞いたことがある程度で、どこのどんな奴で何が代表作かなんて知らなかったのだが、この学校の人達からすれば知っていて当たり前の知識らしい。

教授にこの画家の出身地を聞かれてヒヤッとしたんだが、とりあえず授業前に隣の席の青年と仲良くなっておいたので、コンマ数秒で答えを教えてもらい無事やり過ごせた。いつかこの借りを返そう。

青年の名前は忘れたが今後この講義を一緒に受ける約束をした。いわゆるヨッ友というやつだな。


***


 放課後スターシャとバザーに出かけた。卒業生が不要な家具やら教科書やらを売りに出すのだ。なお教科書を売るのは大学的にはNGらしく秘密裏に行われている。


スターシャとの会話からさり気なくこの世界の貨幣価値を把握した俺は、先輩達を相手に値切りに値切った。

スターシャは最初引きつった笑顔をしていたが、俺が当初の半分の金額でマホガニーの机を手に入れた辺りから尊敬の眼差しを向けてくるようになった。

ーこの子が将来経理課のお局みたいな守銭奴になったらどうしよう・・・


***


 どうも最近スターシャに凄く懐かれている気がする。そして反対にジェニファには嫌われている様だ。彼女は資産家の娘らしく、プライドが高いのか不愛想でこちらに話しかけようともしない。


だが俺は知っている。あれはツンデレというらしい。金髪ツインテールのお嬢様ならほぼ間違いないそうだ。新卒1年目の桂木君がよく飲み会の席で熱心に教えてくれたからな。彼は酒が入ると色々な話をしてくれる。あとPCの入力が早いから営業課内でも貴重な戦力だった。


元気にやっているだろうか。


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