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たんそくおじさん  作者: とりどうふ
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第二話

ー皆さんこんにちは。杉本もといジョリィです。

ジョリィって名前、可愛らしいなあなんて思った俺の気持ちを返して欲しい今日この頃です。


彼女の記憶によると院長が命名したみたいなのですが、赤ん坊の頃、顎に毛が一本生えていたそうな。

それでジョリジョリ・・・って適当すぎないか!?


ーいかんいかん、落ち着こう。まったく、人に名前の由来は?って聞かれたら何て答えたらいいんだ。


ちなみにその一本の毛は未だに存命であり、定期的に引っこ抜かないとかなりの間抜け面になる。

(このことは孤児院内でもマイクしか知らないが、秘密が外部に漏れることは決してない。ジョリィはマイクが未だに時々おねしょすることを知っている)


 さてなぜ俺がこんなくだらないことを考えているかというと、暇すぎて死にそうだからだ。

先日大学生のリライフ切符を渡されてから、秒速で荷造りをし今に至る。ジョリィの荷物は元々かなり少なく、下着と着替えが2枚ずつ、あとはペンと紙と絵本が一冊に汚れた縫いぐるみがひとつだけだ。なんというか、年頃の子がそれだけってちょっと気の毒に感じてくるな・・・一回しか着なかったゴルフウェアとか買って満足したワンダー〇アとか、なんだろう物凄く悪いことをした気持ちになってきた。


 院長に渡されたリュックサックに全てを詰め込み、汽車に乗り込んで早3時間、やることが無さ過ぎる。魔法のお菓子の移動販売とか、綺麗なお姉さんがここいいかしら、とか言って向かいの席にでも来ないもんかね。もう一時間程経てば街に着くらしいんだが、何分揺れが酷く寝るに寝れず、考え事でもしてないと酔いが酷くなって気持ち悪く・・・ウエッ


 気を取り直してなんとか大学に到着、さっそく受付で煩雑な手続き書類を渡された。ざっと30枚。

まじかよこの世界でもお役所仕事ってのは変わんねえんだなぁ。まあ特に孤児院出身で奨学金貰ってってのが原因みたいだが。

だが俺は知っている。こうゆうのは悩むより分かっている人に任せる方が早い。Excelなんか俺が1時間かかる入力を、新卒の若手が10分で終わらせるんだからな。

俺は横一列に並んでいる受付から、一番ベテランそうなおばちゃんの窓口を選び事情を説明する。いくつか質問を受け、院長に渡された書類を渡したら数分でOKが出た。感動で涙が出そうだった。


 とりあえず自室に案内され、簡単に荷ほどきを済ませたので報告書を書くことにする。とはいっても無駄な事を書く必要はない。無事入学手続きが済んだことを完結に書き、それと報告書とは別にお礼状をしたためる。これは最低限のマナーだな。


(にしても、この金を出してくれた紳士もといおっさんの事を俺は何にも知らないんだよな)

俺が知っているのは3つだけ、

 Ⅰ背が低く腹が出ている

 Ⅱ金持ち

 Ⅲ俺(正確にはジョリィ)の報告書を気に入った変人


このおっさんの事を何て呼んだらいいかね。あだ名をつけるのは得意だからな。

金持ちだからミリオネアとかにするか?そんな名前の番組昔あったよな。

いや、流石にそんな上辺だけの特徴で呼ぶのも悪いか。やはりもっと本質的な・・・よし、「たんそくおじさん」と呼ぶことにしよう。安心してくれ、これは俺の心の中だけの呼び名だ。本人に言ったら契約打ち切りの可能性があるからな。


 あと2分で就寝の鐘が鳴るようだ。この大学の1日は鐘の音で区切られており、その音で寝食と授業とが進んでいく。まったく素晴らしいシステムだな、昼休みに電話が鳴る事も無ければ定時が過ぎても誰も帰らない世界とは大違いだ。よし消灯しよう。俺はこの世界で健康を手に入れるのだ。


(ーたんそくおじさんに感謝をこめて。ジョリィより)

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