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転生したら悪女だった6

「おいしいです」


 私はソーダーブレッドを食べて笑み崩れた。

 スクランブルエッグにベーコン、ソーダーブレッドにチーズとミルク。デザートにオレンジまである。


 メイド控え室で、仕事仲間と一緒に食卓を囲む。修道院のときみたいで楽しい。

 

「伯爵令嬢だともっとおいしいもの食べてるでしょうに」

「お貴族様は私たち下々の人間とは違うからね」

「ドロシー、ロレインさんに絡むの、いい加減になさいよ」

「ふんっ」

「ロレインさん、ちゃんとやっていますよ。今朝も誰よりも早く起きて掃除をしていたわ。偉いですよ」


 メイド長が言った。

 デザートのオレンジを夢中になって食べていると、執事さんがたくさんの革袋を持ってやってきた。


「みなさん。今日は給料日ですよ。お疲れ様」


 小さな革袋を、メイドさんたちに配って歩く。


「わあ。うれしいっ!」

「ドレスが買えるわ」

「私は田舎に仕送りよ」

「お祭りのときにつける髪飾りを買いたいわ」


「ロレインさんは、一日分ですぞ」

「え? お給料を貰えるんですか?」

「当然です」


 革袋の中には、銅貨が一枚入っていた。パンケーキ菓子が15個買える額だ。


「ありがとうございます……」


 生まれて初めて貰った給料にじーんと来る。銃弾の飛び交わない安全な屋敷で生活できて、おいしいご飯に個室にお風呂、楽な仕事、さらに給料まで。

 女神様、転生させていただいてありがとうございます!

  最高の人生です!!


 革袋を大事にポケットに入れてから、食べ終わった食器を持ってキッチンに行く。


「入ってこないで」


 リラさんが言った。


「食器を下げたいんです」

「あなた王太后様を毒殺して死刑になったんでしょ? 毒を扱うような人に、キッチンには入ってほしくないの」


 毒殺? 王太后様って旦那様のお母様よね? 伯爵令嬢が暗殺? この世界の私って何者なの?


「ロレインさん。この手袋を差し上げるわ。この手袋、毒に触れると変色するの。キッチンに入るときは手袋をしなさい。みんなの安心のために」

「はい。メイド長、ありがとうございます」


 私はメイド長から頂いた手袋を、エプロンのポケットにいれた。


「午前の掃除は窓拭きよ。午後は水くみをしたあとは休憩時間だから、休憩時間になったらメアリのお願いを聞いてあげて」

「はい」


 メアリさんのお願い……ダンスを教えるっていうやつね。大丈夫かな。


 庭に出て、メアリさんと一緒にお屋敷の外側から窓を拭いていたときのことだった。

 ざわめきが起こった。


「フレデリックはいるかね」


 屋敷の前で止まった馬車から、妙にキラキラした男性が息を切らして降りてきた。騎馬の護衛騎士が4人もついている。

 旦那様とよく似た顔立ちだが、偉そうなオーラを全身に纏っている。


 メイド長が平服した。


「国王陛下。ご尊顔に廃し奉り光栄至極に存じます」

「仰々しい挨拶はいい。弟はいるかと聞いているのだ」

「兄上。どうしたんだ? 急に。話なら屋敷の中でしよう」


 殿下が出てきた。

 こうして並ぶと、顔立ちがよく似ている。

 私はメアリさんと並んで、窓を拭いていたウエスを持ったままで垂頭をしていた。


「絞首刑、失敗したそうじゃないかっ!?」

「ああ。兄上、ロレインは私の預かりになっているんだ」

「なんで失敗したんだ?」

「わからない」

「偶然だとでもいうのかね?」


 陛下は殿下と話しながら、私の前を通り過ぎようとして、私に気づいてビクッとした。


「ロレイン・ハワード伯爵令嬢……」


 陛下は10センチほどその場で飛び上がった。化け物でも見たような驚きようだ。いや違う。驚いているというより、怯えている?


「許してくれっ!」


「え?」


「許してくれと言っているんだ!」


 陛下は土下座しそうなほど深く頭を下げた。


 何があったの?

 この世界の私は、いったい何をやったのよ?

 メイドさんたちも、護衛騎士も、みんなぽかんとしている。

 私もどうしていいかわからず、立ち尽くしていた。


 国王陛下はまだ私に向かって頭を下げている。

 おじぎが、おじぎが長すぎますっ!

 沈黙が重い。視線が痛い。私は耐えきれず言った。


「陛下、頭をお上げください。おそれながら申し上げます。私はただのロレインで、掃除洗濯担当のメイドです。伯爵令嬢ではありません」


 私が言うと、陛下はビクビクッとした。


「か、金か? 金なら私のポケットマネーから出すからっ」

「お金なんかいりません。私は今の仕事に満足しています。過去のことは忘れました。どうかそっとしておいてくださいませ」

「君はほんとうに、あの悪女ロレインなのか?」


「兄上、そのう、彼女、記憶が混乱してるんだ。なんか人が変わったみたいに、おとなしくなってしまって。ショックなことがありすぎてぼーっとなっているだけかもしれないけど」

「後で脅されることはないんだな」

「大丈夫だと思う。俺が見張っておくから安心してくれ」


 脅す? 国王陛下を? 私が? いやそれ無理でしょ。私はただの掃除婦なのよ。

 何か秘密を知っているのならまだしも。


 ……って、ロレインは秘密を知ってる? だから処刑された?

 怖い……。

作者より、読者の皆様に大切なお願いがあります。

10秒程度で終わります! すぐなので、よろしくお願いします。


・面白かった

・続きが気になる

・応援してあげたい

・ロレインどうなるんだろう?


と思って頂けた方がもしもいらっしゃったら、この下(広告の下)にある「☆☆☆☆☆」を押して評価をしてくださると嬉しいです!


すでに評価をしてくださっている読者様へ。

応援ありがとうございます! 面白い作品をお届けできるよう頑張ります。必ず最後までアップします!

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[良い点] やっ! ちょっと油断して、見ていなかったら、えらく話が進んでいる!! 国王陛下が、ロレインにビクついている! 何があったのだ! ヒロインでなくても、気になる!!!
[良い点] 女性視点の可愛らしく善意が表に出ているところが良い。 作者が書きたいことを書いている感じがしますが、それが読者の読みたいことに合っているので、ストレスなく、うなずきながら読み進められます。…
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