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8月のある日④ わくわく♥️トリビア!

"切れなくなった包丁でアルミホイルを切ると切れ味が復活する!?"


これいいんじゃないか?

タイトルからして面白そうな匂いがする。

右クリックして新しいタブとして開けておく。


「さあて、残り雑学99個」




僕は自宅でパソコンと向き合っていた。

露店担当のリーダーとして。

当初は下っ端として仕事をしようと思っていたのだが、露店担当のリーダー役に推薦され、押しきられてしまった。

霞ヶ関さんによって。


霞ヶ関さんは自分の味方を作るのが上手いのだ。


―――――――――――――――――――――


「みんなー!

テルテルになら露店を任せても安心だよね?」


「まぁ、確かに」

「テル有能だし」

「テルが担当なら俺も手伝う」


「うんうん、テルテルなら任せられるってみんなもそう思うよね!

ね、テルテル、どうかな、作品の内容は勝手に決めてもらっていいから、やってくれない?」


―――――――――――――――――――――


と、ちょっとばかしチヤホヤされ、それにのせられてしまったのだ。

みんなの「ダルそうな仕事、お願いだから引き受けてくれ」という雰囲気が僕を断りづらくさせた。


みんなへのちょっとした腹いせとして「わくわく♥️トリビア!」という、全く可愛げのないタイトルの、100個の雑学が書かれた雑学集を露店の商品とすることにした。



のだが。



「頭抱えてどうしたの?」


母にも心配されてしまった。

夜の11時になってもネタが10個も集まらないのだ。

後90数個。

夏休み期間に終わらせられるだろうか。


「何か雑学ない?

文化祭の出し物で雑学集を作るんだけど」


ふーん、雑学ねぇ……と顎に手を当てた母が、ふと何かに気付いたような表情をした。


「!……閃いた?」


まさに猫の手も借りたいくらいネタが見つからないから、つい期待して催促してしまう。

しかし母は、目を輝かせる僕を一瞥して触れてはいけない禁忌の領域に踏み込んできた。



「……雑学集って、需要あるの?」



―――――――――――――――――――――



「なんやそれ?雑学集めた本?

それを露店で売るんや?


え、名前なんなん?……『わくわく♥️トリビア!』?

相変わらず名前つけるのセンスないなぁ、お前。


で、テル、お前、アホ?」


 いや、露店で並べたら、なんか、誰かしらには需要があるものじゃない?


「お前、ごめんけどそれ絶対需要ないで。

断言してもええ。

絶対に売れへん。


形から入っても、そんなん絶対売れへんで。

知らんけど」


 でもほら、原価は紙代だけだよ?純利益がほとんどそのまま売り上げになるんだよ?


「それは売れたらの話な。


まずターゲット層教えてや。……うん、生徒やんな。

お前、学校の生徒の好きなものとか知ってるか?

……知ってるつもり?いや、絶対知らんやろ。

まずな、少なくとも勉強に関することはみんな嫌いやねん…………」



―――――――――――――――――――――



母に改めて尋ねられたとき、夏休みに入り、露店での出し物を雑学に決めたことをコウに伝えたときのことを思い出した。

「僕なら買うけど」という発言にコウは大きなため息をつき、消費者心理について教えてくれたのだった。


母からまた消費者心理を教えられようとしていた。


「あのね、10代の子供が欲しいものってね、勉強道具じゃないのよ?

もっと即時的なもの、例えば流行を追いかけたり、ゲームだったり、アニメキャラのグッズだったり、他には……」


「分かった、分かったから!

雑学に決定したんだから今更言ってもしょうがないって」


出し物は僕の独断で決められるから決定を覆せるのだけれど、「他の出し物は何がいいか」ということに悩むのが面倒だったから、このまま、わくわく♥️トリビア!を出版することにしている。

二度目の消費者心理についての講義が母によって始まりそうだったから、僕は強引に話を止めてパソコンに向き直った。

後期試験は第二週の日曜日が一般的のようです。

試験科目が数学だけ、生物だけという風に、試験科目を絞る大学が多いようです。

共通テストの点数と調査書だけで合否を決定する国公立大学もあります。


共通テスト後、前期と同時期に後期の出願を行うので、一月に決めた目標大学に向かって受験生の皆さんは頑張っていることでしょう。

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