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1月のある日① 外食は情報交換の時間

家→学校→家→学校の順で書こうと思っていましたが、1月はずっと学校にいたので、1月は学校での話が続きます。

1月になると毎日朝から夕方まで学校漬けになった。

まあ、いつも通りである。


教室の席はまばらに埋まり、意識高い系の人たちが勉強している。

14、15日の共通テストが意識されているのか、勉強中は皆本当に静かだ。


「ちょっときゅーけー」


僕は自分の集中力が切れたと思ったタイミングで小休止を挟むことにした。

ちょうどお腹も減ってきたような気もする。

集中できないときは勉強効率が落ちるため、適度な休息によって精神力を回復させねばならない。

決して、そう、決して勉強がダルいから逃げたのではない。


「あぁ、もうお昼かー」


ショウも数式を書く手を止め、時計を眺めた。

同じく休憩にはいった友達が僕らの席の近くに来て、声をかけてきた。


「昼飯、外行こう?」


ショウは首肯し、僕が尋ねた。


「いいねぇー」


「どこ行く?ラーメン?」


「うーん、じゃあ、岩北ラーメンとかどう?

俺らの他に四人くらい一緒に来るし、テーブル席あるところが良いでしょ」


ショウも僕も友達の提案に賛成し、少し離れたラーメン屋に行くことに決まった。

前回ラーメン屋に行ったときは惨事があったから、今回は皆自転車で行くみたいだ。

というのも、徒歩で来たのにお腹いっぱいまで食べた友達がいて、帰路で吐き、どうにもできず放置して帰るしかなかった。

ちなみに、わざとではない形で路上に出してしまった場合、片付けなくてもいいらしいです。もちろん、わざとやった場合は犯罪です。


ふと視線を感じ窓際を見ると、ヤマちゃんが真顔でこっちを見ていた。

誘って欲しいのだろうか、あまり表情から意図を読むことができないが、友達として、一応声をかけに行った。


「ヤマちゃんは昼ごはんどうする?

僕らと一緒にラーメン行く?」


ヤマちゃんは以外と性別を気にするから、断るのかもしれない。

今からラーメンを食べに行くのは全員男だし、そもそもラーメンの脂ぎった感じや油が跳ねるを気にする女の子も多いだろうし。


「……いや、いい。行ってらっしゃい」


やはり、と言うべきか、ヤマちゃんは遠慮してきた。

そしていそいそと弁当箱を取り出した。


「あ、単に弁当があるから断ったのね」


僕が一人で納得していると、ヤマちゃんがキッと僕を若干涙目で睨み付けてきた。

仲間はずれにされた、と感じているのだろう。

不機嫌なような、悲しんでいるような、どうしたらいいかわからないという顔を見せてから、ヤマちゃんは自分の弁当に向き直った。

そしてこちらに顔を向けないまま、教室中に通るほどの声量で言った。


「食べに行くとき、前もって伝えて。

そしたら私も行けるから。

さすがにぼっち飯は寂しい」


誘って欲しい理由はそれだけじゃないような気もするが……。

まぁいい。皆一緒の方が楽しいのはその通りだ。

かといってヤマちゃんの後ろにまるで金魚のフンのようについていき、「皆一緒がいいから」とトイレへ集団行動するのはまた違う話だけれど。


そういえば確かに、取り巻きだった男女の多くは自宅で勉強する派なのか、姿が見えない。

かつては食事中のヤマちゃんのご尊顔を拝謁するために、取り巻きたちはヤマちゃんの席の回りに各々の弁当を持ち寄っていたものだったが、今はヤマちゃんは一人で黙々と箸を進めている。


っと、ハムスターみたいなヤマちゃんを眺めるのはやめて、ラーメン屋に行かなければ。

午後も勉強を頑張るためのスタミナが欲しい。


「岩北ラーメンまで自転車で何分くらい?」


聞くと今から共に行く友達の一人が答えてくれた。


「速くて10分くらいかなぁ。

信号次第でもっと遅くなる可能性もあるけど」


「すぐ行けそうだな。

それじゃあ行こう」


―――――――――――――――――――――――――――――


ラーメン屋に到着すると、みんなは食券機でラーメン中とライスを頼んでいる。

一人「地獄ラーメン」というスープが真っ赤なラーメンを購入していて、口の中が火炎地獄にならないか心配になった。

みんなに見習って、僕もラーメン中とライスの食券を購入した。

ラーメンの種類がラーメンの他に地獄ラーメンとつけめんしかなかったから、とりあえずのラーメンだ。


水をセルフで取りに行き、ラーメンが出来上がるのを待つ間、話に上るのは志望校の事。

僕は友達が話しているのを側で聞くだけだが、皆抱える悩みは同じだ。


「志望校のランク下げようかなぁ……」


「おいおい、どないしたのよ。

逃げ腰はいかんよ」


「でもなぁ、数学の過去問、まじで俺と相性が悪いし」


「共テの得点で決めたらええやろ。

今目標下げるのは早計よ」


「でもなぁ……」


怖いのはわかる。

問題集を開けば、そこはわからない問題だらけなんだから。

でもここで志望校のランクを落としたら、たぶん彼は、これまでのような本気を出さなくなる。勉強への熱意を失う。

それは自分の今までの努力を裏切ることになるし、なにより受験が終わったあとで必ず後悔するだろう。

だから僕は「京都大学」という高いハードルを設定しても、その高さを変えるつもりはない。


「共テ終わったあと1ヶ月以上時間あるんやし、その期間で過去問対策、一緒にやろうよ。

お前の実力なら絶対受かるんだから!」


友達として言える最高の励ましを言った友達は、店員が持って来たラーメンを前にいそいそと割り箸を割った。

兄からガンダムの水星の魔女を見させられています。

画面にへばりついていると、目が悪くなりそうです……。

まぁ、見てて楽しいからいいんだけど。

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