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9月のある日② 学歴至上主義

「医者目指すことにする」


僕は母にそう告げ、視界の端で反応を窺った。




最近、本格的に医学部を目指そうと決め、モチベーションがとても高い。

僕は塾に通っていないため、放課後は家で勉強しているのけれど、苦手教科である数学を率先してというか数学ばかりを重点的に取り組んでいた。


今日は母の機嫌が良さそうだったから、頃合いを見計らってちょっとした爆弾を落とした。


「……本気でやりたいなら良いんじゃない?


大学は決めたの?京都府立医科大?」


「うん、近場なら。

遠くだったら高知大とか鹿児島大とか」


「遠くは無理。

そんな金ない」


予想通り、遠方の大学名を出すとそれは断られた。

京都の大学だったらいいよ、と言われ、僕は京都府立医科大学をとりあえず目指すことにした。


大学進学にあたって、僕に課せられた条件はたった2つだ。

1に、実家から通えること

2に、国公立であること


……単純だ。

そして、なるほど、simple is the worstである。


京都の国公立大学は4校あり、賢い順に京都大学>京都府立医科大学≫京都府立大学、京都工芸繊維大学だ。

言うまでもなく、京大は日本のトップ大学であるし、府立医科大は医科大としては非常に古い歴史を持つ重鎮。

京都工繊と府立大は京大不合格者で賢い人たちが流れ込むため、ネームバリューは旧帝大に劣るが、生徒の質はかなり高い。


つまり医者を目指すとなると府立医科大を目指すことになるわけだが、その難易度はキチガイかつアタオカだ。


「自分の学力じゃ受からないだろうなぁ……」


結果の分かりきった合格発表を憂い、ひとつ、ため息が出るのを止められなかった。




「府立医科大行くことにしたんだ?」


トイレに席を立つと廊下で、耳の速い兄が、あたかも僕の合格が決まったかのように話しかけてきた。

こういう「お前なら出来るだろ」と暗にプレッシャーをかけてくるところが、嫌いではないけれど苦手だ。


「行ければいいなと思ってる」


「俺の友達の女の子で府立医科大に行った人いるけど、一浪してたよ。

その子、Sさんっていうけど、五ツ木模試で全国で一桁くらいの成績だったらしい。

……五ツ木模試って何か分かる?

小学生の時に受けた中学受験する人用のやつ。

……あぁ、さすがに分かるか。


Sさんみたいな人でも一浪するくらい難しいところだけど、まぁ、テルなら行けるでしょ。

頑張れー」


言い残すと、兄はさっさと行ってしまった。



「……そんなの、僕ごときが行けるはずないじゃん」



兄は何をしたかったのだろう?

僕の自信を削ぎたかった?

内心、どうせ落ちるって馬鹿にしに来た?


小学校から賢くて地頭のある人でも現役で合格できないなんて、9月になってようやく受験勉強を始めようっていう人が受かるわけない。


兄と話すと合格する未来がどんどん見えなくなっていくようだった。

皆さんは勉強中にお菓子などを食べる派ですか?

勉強後に自分への労いとして残しておく派ですか?


ちなみに自分は二つの意味で黙勉が徹底されていたので、あまり食べながらでは勉強しませんでした。

(自習室にいる他の受験生の迷惑にならないよう、静かに勉強しろというものと、コロナ禍だからマスクをしろというもの)


13日に大っぴらに外せるようなったから良いものの、本当、マスクって邪魔ですよね。

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