母
母は成績至上主義だ。
テストで満点を取れだの、通知表でオール5を目指せだのと常から言い続けている。
もしテストで60点より低かったり通知表に3があったりすると、遊びが禁止され、勉強するよう言われる。
スマホが与えられたのが高校生になってからだったためこれまでは「勉強しないならスマホ没収」ということはなかったが、図書館に行ったり朝のんびりすると「遊んだ分勉強するんでしょうね!?」と圧をかけてくるのだ。
鬱陶しいし、精神的に傷つく。
「絶対ぐちぐち言われるだろうなぁ……はぁ……」
僕は2ヶ月弱くらい前に受験した模試の結果を眺め、ふがいない結果を母に見られることに緊張して、ふぅーと溜め息をついた。
溜め息をついたからといって緊張が消えるわけではない。
「結局見せないといけないんだ、さっさと出しとこう」
家の規則で、模試の結果や学校からの配布物などは親に提出し、見せなければならない。
僕は所定の場所に模試の結果を置き、そそくさと勉強に戻った。
その日の夕食前、母が僕の名前を呼んだ。
何だろうと顔を上げると母は模試の結果を持っていた。
「これどういうこと?
なんで校内順位5位なの?」
得意教科の生物も全然わからず当て勘で解いたときの模試だ。
いつもは2位の僕が5位ということは、問題自体が難しかったわけではなく、僕自身の問題だろう。(3名のクラスメートがいきなり僕より賢くなったというのは考えにくい)
「だいぶ前のことだからあんまり覚えてないけど、集中できてなかったんだと思う」
「ふん。
たかがあんたの学校の中だけで5位とか、先が思いやられるわ。
スマホ触る時間減らして勉強したら?
勉強できないならお姉ちゃんのときみたいに隔離しようか?」
姉が受けていた扱いを思いだし、僕は震え上がった。
姉が受験生のとき、母はとても厳しかった。
姉には『勉強部屋』が与えられ、家にいるときは基本その部屋で勉強しなくてはならない。
母は姉のおしゃれに多くの時間を取られることを嫌う。
僕ら弟妹には姉の分まで家事を手伝うよう言い、大きな音で姉の邪魔をしないよう気を付けさせた。
今は姉のときよりは態度が軟化しているが、刺激は禁物だ。
「勉強してる。
スマホは自分で管理できてるから大丈夫」
「ふん、どうだか。
じゃあ次のテスト、楽しみにしてる」
厳しい性格の母のことだ、言葉に皮肉が混じっていた。
母は僕を一瞥した後、はぁーと溜め息をついて買い物しに出ていった。
3/15前後、全国の中学校で卒業式が催されています。
めでたいことです。