表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】婚約者の浮気現場を見ちゃったので始まりの鐘が鳴りました  作者: えひと
第3章:花が咲いちゃったので新しい旅の始まりの鐘が鳴りました
72/146

23.ひとりぼっちのヴィクトリー

ついに書籍発売です!有難うございます!!

ということで記念更新です。

読み飛ばしにご注意ください。




 不思議な赤い男と出会い、ソフィーリアの見る景色は一変した。

 あ、ロマンチックなラブロマンス開幕! とかではないぞ。もちろんだ。安心したまえ、ソフィーリアの初恋は、リヴィオニスの前に弾けて花咲いた脳みそ殉職事件である。あれは劇的であった。もはや劇薬。


 そんなんでなくて、隠喩でなけりゃ皮肉でもなく。文字通り、がらりと、ソフィーリアの目に映る景色は一変したのだ。


 だって、なんか光ってる。

 きらっきらだ。


 赤い男のように息が止まるほどの印象的な光はなかったが、誰しもが光を纏っていた。偉そうなお大臣様も街ゆく親子も、ワンコさえも。

 いや、生き物だけじゃあない。

 植物にも、時には無機物にすらその光はあった。図書室にある本が光っている様なんか幻想的でちょっと感動的。

 

 ソフィーリアは新しい景色をすっかり気に入ったわけだけども、人々はそのソフィーリアの変化に気が付かなかった。

 バレるわけにゃいかんので、ソフィーリアはいたって普通に暮らしていたので。

 ただちょっとした時間、意識を逸らしたい時間。馬車で揺られる時や父親の怒鳴り声がうるさい時などなど、ちょっとした時に、よいしょとめいっぱい集中して、赤い男と手を繋いだ時の感覚を思い出しながら目を凝らせば、ソフィーリアの目に映る世界は全く違うものに変わったのだ。


 少しずつ、明確に、鮮明に、はっきりと視えるようになる光は、ソフィーリアの心に吹き抜ける風のようだった。

 まるで、庭園で出会った少年と過ごしたあの一時のように。

 

 ソフィーリアの世界が色を変えた14歳。

 男の走り書きの通り、ソフィーリアは本に書いている事が理解できるようになった。

 んで、まあ、理解出来れば実践したくなる。そりゃあそうだろ。人の性よな。

 んなわけで、ソフィーリアは、こっそりと魔法の練習を始めたのである。が。


 心を殺せと叩きつけられるようなクソ忙しい日々の中に、魔法を練習する時間なんて無いに等しかった。だあって毎日笑っちゃうくらいにやることが多すぎるんだもの。多忙で出来たケーキに多忙でできたシロップをたんまりかけたクソまっずい日々。うんざりする暇さえありゃしない。


 それでも。

 それでも、ソフィーリアは隙を見つけては魔法の練習を重ねた。

 毎日へとへとで、必死で、ぼろぼろだったけれど、それでもやめられなかったんだ。


 なぜって?

 魔法の練習をするその瞬間は、全てを忘れることができたからだ。

 自分の存在価値なんて、役割なんて、うんざりする事はなんにも考えなくていい。頭を使って頭を空っぽにする、なんていうと変だけれど。頭が痛くなるくらい魔力を練ることに集中している瞬間だけは、ソフィーリアはソフィーリア以外の何かでいられた。


 繰り返し、繰り返し、繰り返しソフィーリアはその本を読み、魔力を練り、防御魔法を覚えた。


 ああ、そして。

 ──初めて魔法を使った日の事を、ソフィはよく覚えている。

 なんつっても、父親の拳を防いだ記念日だもの。

忘れようもない。あの、身体から湧き上がるような感動と、父親様の驚愕に彩られた顔!

 思い出すだけで丸まった背筋が伸びるような、口元がによによしちゃうような気持ちに、ソフィーリアは達成感と名付けた。


 まあ、父親はソフィーリアが魔法なんか使って、あまつ父親の拳を弾いたもんで激昂し、結果ソフィは酷い目にあったんだけれど、今となっちゃあ、それも良い思い出だ。中途半端な魔法ではいかんと、ソフィーリアは魔力を練って練って練りまくって、防御壁を磨き続けたのだ。おかげさまで、殴られたフリが上手くなり、傷を負う事はなくなった。ドヤ。

 しかも今は旅の途中。リヴィオの足を引っ張らないようにするには、欠かせない力だ。


 つまりソフィにとっちゃ、輝かしい勝利の記憶なのだが、な? 楽しい話ではなかろう?

 楽しいで満ち満ちたこの部屋に、憐れみはいらない。


 んなわけで、ルネッタに問いかけられたソフィはただ、「その後は本を見ながら練習を重ね、防御魔法が使えるようになった」とだけ話した。

 ルネッタはこくん、と小さく頷く。


「誰の本か覚えていますか?」


 無論である。

 ソフィを助けてくれた魔法使いの名だ。忘れるはずもない。


「ルーベニスよ。家名はなかったわ」

「ルーベニスですか……! それは良いですね」


 そうなの? とソフィが首を傾げると、ルネッタは頷いた。瞳がキラキラしている気がする。うーん、無表情なのに可愛い。


赤雲(せきうん)の魔女ルーベニス。弟子は取らず、本を書くことを好む魔女だそうです。私も彼の著書を読みましたが、わかりやすくて、かつユニークな魔法式の組み方が好きです」

「そうなんです! とてもわかりやすかったの! だって、知識のない私でも魔法が使えるようになったんですもの」

「では……ソフィは魔女ですね」


 ん?

 そんな話だったろうか、とソフィは首を傾げる。

 自分は独学だ、という恥ずかしい話のつもりだったので、思いもよらぬ台詞にソフィは瞬いた。


「言ったでしょう。ようは、魔女から魔法を学べば魔女なんです。魔女の魔法の使い方や思考が身体に染みついていれば、魔女ですよ」

「でも、本で読んだだけですよ? そんなことを言ったら、世界中魔女だらけになりませんか?」

「これから魔法を覚えようという人で、魔女の本を手に取る人は少ないでしょうし……それに世界中魔女だらけでも、べつに良いんじゃないですか?」


 それはそうだ。そうだな。

 そうなんだけど、魔女ってもっと特別なものなんじゃないのか。一子相伝、師匠から受け継がれる秘儀とかあるんじゃないのか。魔女認定とかないの??? なんだろうなあ。英雄が実は近所のおっちゃんだった、みたいななんともいえない落胆を抱え、ソフィは曖昧に頷いた。


「そもそも、本を読んだだけで魔法を使える人は珍しいそうですよ」

「そうなの……?」

「そう聞きました」


 誰に? とか、じゃあルネッタは誰に魔法を教わったの? とか。

 ソフィの頭には疑問も浮かんだが、なんとなく。なんとなく、その言葉が出てこなかったわけだが。



 そんな細かいことを話してもしゃあない。

 エーリッヒとエレノアの貴重な時間をだらだらと奪うのも気が引ける。


 ってわけで、ソフィが簡単に、赤い男との出会いや本を見ながら学んだ話をすると、レイジニアンは、「うそでしょ」と目を見開いた。


「その男がルーベニスよ!」

「……え?」


                                                   え?                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

緊張で胃が痛いくらいドキドキする日をついに迎えました。

記念に、皆様に何かお返ししたいなと思い考えたのですが、やっぱり本編を進めるべきかなあと思い至りました。


そこで、発売日の10にかけて、10日間限定で連続更新を実施します。


10日間よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙絵
書籍2巻発売中です!
たくさんの応援有難うございます!

巻末と電子限定の書きおろしは、
両方を読んでいただくとより楽しめる仕様にしてみました。
ぜひお手に取っていただけましたら嬉しいです。
よろしくお願い致します!

【マッグガーデンオンラインストアはこちら】
【Amazon購入ページはこちら】

【コミカライズはこちら】
― 新着の感想 ―
[一言] 発売おめでとうございます。 書泉・芳林堂限定S Sが読みたくて、紙で購入しました♪ やっぱりソフィーリアとリヴィオニスは、可愛くて最高です。 これからも、更新を楽しみに待っています。
[一言] 書籍発売、おめでとうございます。 私も電子と紙、両方買い求める予定。まだ買えてない(^o^;) 最近は紙で買うのをやめててケータイで電子書籍ばっかり買ってましたが、久々に本を買います。 こ…
[一言] その人と本を書いた人一緒なのでは…?と、ルネッタとの会話の回想シーンを見ながら思ってましたが、やっぱり!!!! そういうところソフィ運持ってますよね、その人も自分の書いた本を読んでる女の子…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ