79.希少なりし縁
事故ったので再投稿しています。
不完全な状態でご覧になった方いらっしゃいましたら申し訳ありません。
改めて読んでいただけましたら嬉しいです。
ゆっくり頷いたソフィに、エーリッヒは「わかってくれるか」と両手で顔を覆った。
ソフィはもう一度頷く。
王の責任や人としての責任と同じくらいモリモリな恋人の両親に気に入られたいって下心、わからいでか!
ソフィだって、できるならリヴィオのご両親に気に入られたい。それが無理ならばせめて、大事な息子さんを連れ去ってすみませんと謝罪を受け入れてほしいんだけど。無理かな。無理だろな。いや、いやでも、送り出してくれたのも逃亡用の服を一式用意してくれたのも、リヴィオの生家であるウォーリアン家の皆々様だ。詫びは当然のことだが、それ以上に感謝の意を全力でお伝えしたいとソフィが思っても仕方がないんじゃないかな。
リヴィオを産んでくれた感謝、リヴィオを育ててくれた感謝、あの日あの庭でリヴィオと出会わせてくれた感謝、リヴィオとあの夜引き合わせてくれた感謝、そして温かい旅路へ背中を押してくれた感謝……。
考えれば考えるほど、リヴィオの両親への感謝が湧き出てくる。これはもう両手を組んで膝をついて頭を垂れ、深々と感謝を捧げるしかない。リヴィオという天使をこの世に与え給うた慈悲に今こそ、
「もともと、エーリッヒの誕生日を祝うパーティーに招待をしていたんだ。そのための滞在が早まっただけなのに、朝からずっとこの調子なんだ」
はっとしたソフィは、膝の上で組んでいた両手をほどいた。あっっっぶない。リヴィオの両親という偉大な神々に膝をついて感謝の祈りをこの場で捧げるところだった。最近の浮かれ脳みそ君は、リヴィオが好きすぎて暴走しがちなので困ったもんである。
「おかしいだろう?」
笑うエレノアに、ソフィは高速で首を振った。なんっっにもおかしかない! 恋をすれば人はいろんなことが気になるし、いろんなとこへ暴走しちまうもんだってことを、ソフィはそれを身をもって証明するところだったんだもの。危ない。
エレノアも恋をする乙女であるのに、なぜそれがわからんのだろうかという疑問はさておき、ソフィはエーリッヒの気持ちを考えてみてほしいとその心境を説いてみるが、エレノアは首を傾げる。
「わかるが、ピューリッツが逃げたことの方が重要じゃないか」
そうだけど。そうだけど、そうじゃない。そうじゃないんですエレノア様。
「エレノア様が他国の魔導士に、それも王族の指示で呪いを掛けられたなんて国際問題になりますよね?」
男心がわからぬとてこれならどうだ、とばかりにリヴィオが援護射撃をするも、エレノアはあっけらかんと笑った。
「言わなきゃバレない」
無茶苦茶言うなこの王女様。ソフィが眉を下げると、反対にエーリッヒはキッと目を釣り上げた。
「そんな騙し討ちのような真似、できるわけないでしょう。エレノア、君のご両親だよ? 俺は、君の伴侶としてご両親に認められたい」
エーリッヒは、そっとエレノアの手を握る。エレノアは自分を見つめる、エーリッヒの真摯な瞳をうっとりと見返した。
「エーリッヒ……」
「エレノア……」
見つめ合う二人。エレノアのブルネットを緩やかに揺らす風。エーリッヒの髪で反射する陽光。
美しい絵であった。
これ見てていいのかしら、とソフィは思ったけれど。
ソフィは、二人の距離はどこまで近づくのかなってドキドキワクワクしながら息を殺す。
ソファの上でアズウェロが、うーんと伸びをした。
「良い事を言いますね」
「!」
雷に打たれたように静止した二人、だけでなくソフィも驚いて振り返る。全身真っ白仕様のルールーが、不機嫌そうに立っているではないか。
良いところだったのに……と思ったソフィはけれどそれを顔には出さぬよう、にっこり微笑む。
「まあ、ユヴェルティーニ様もご一緒ですの」
ルールーの後ろから顔を出したアドルファスは、ひょいと眉を上げた。
いつの間に入って来たんだろう、とソフィは思うがしかしリヴィオもアズウェロも驚いていない。気づかなかったのは二人の世界にいたエレノアとエーリッヒ、そんな世界を盗み見ていたソフィだけなのだろう。
「深刻そうですね? 突然の祭りで、予算ぐりをどうしようかと思い悩む私より深刻なお悩みですか?」
「嫌味だなあ、このメガネ」
「嫌味の百や二百くらいお受けいただかないと。今日こそ俺は娘と妻を抱いて寝てみせる」
「た、大変そうですね……?」
ははは、と乾いた笑いを上げる二人が怖くて思わず間に入ってしまうソフィに、アドルファスは「それなりに」と大仰に頷いた。
「ソフィ嬢が送ってくださった『銀色の海』が色々と都合をつけてくれて助かりましたよ」
「まあ!」
思いもよらぬタイミングで、思いもよらぬ「回答」をもらったソフィは手を叩いた。なーるほど!
「どうやったら急に大きな祭りができるのか不思議だったんです」
「元々、陛下の誕生日を祝う祭りを予定していたので、その予算と準備を前倒しで使いました。とはいえ、内乱が続いていたこの国にとっては、陛下の誕生祭も重要なイベントですからおざなりにはできません。『銀色の海』のお力を借りられたのは大きいですよ。まあ、借りも大きいですけど」
「だが、今まで不定期だった彼らの船を、定期的に呼べるのはうちの利にもなるだろう」
「利益にしてみせますよ」
「そっか。あのクソ貴族の護衛をお願いしたパーティーは商団の一員でしたね」
捕らえた子供を攫う「クソ貴族」を、アドルファスの元に送り届けるための「護衛」を依頼したパーティーは、『銀色の海』という商団のメンバーで、陸を旅して希少アイテムを集めたり買付をしたりする仕事をしているらしい。
エーリッヒの「お願い」を「快く」引き受けてくれた彼らは、新たな取引を結んだのだろう。色々と大人のやり取りがあったらしいことにソフィとリヴィオが頷くと、アドルファスは笑った。
「まったく、人の縁とはおもしろいものです。陛下を心配した方が魔女を寄越し、エレノア様を起こしてくださったかと思えば、『銀色の海』と引き合わせてくれ、ドラゴンが阿呆をとっちめてくれるし、魔女が強大な魔法から国を護ってくださったんですから! 物語にしたって、ご都合主義がすぎるのでは?」
「え、ええと……」
そう言われるとそんな気がしてくるが、ソフィはただ目まぐるしいスピードで流れていく現実を前に、置いて行かれぬように騒いでいただけなのだ。ソフィちゃんときたら、泣いたり怒ったり、リヴィオの笑顔に爆散しそうになったり、自分の事で手いっぱいなんだもの。
アドルファスの口から語られる旅は他人事だ。たしかにたしかに。言われて見りゃ、不思議だわな。
「人生って愉快なものだったんですね?」
なんだかおもしろくなってきたので、ソフィも思わず笑いながら言うと、アドルファスはくしゃりと笑った。眉を下げて、大きな口で笑う顔はちょっぴし可愛い。
「そうですよ! でなけりゃ、毎日あくせく働くもんですか」
けっ! と悪態吐く顔はやっぱり楽しそうだ。
「!」
素直な笑顔と素直じゃない言葉を操るアドルファスの隣で、ななな、なんとルールーは小さく笑みを浮かべた! 素直じゃない人代表みたいなルールーが!
ンでも、指摘すりゃプンと顎上げてどっか行っちまうだろうなってことはあきらかだったので、ソフィは目を逸らす。だって、素直じゃない人代表だもん、このドラゴン様。
「で? 結局アドルファスは何の用なんだ」
見上げるエーリッヒの言葉に「ああ」と反応を返したのはルールーで、彼はリヴィオに視線を合わせると、目を細めた。
「愉快な馬たちを連れて来てあげましたよ」
感想のお返事は後ほどさせていただきます。
遅くなってしまい申し訳ございません…
うまく書けない時や落ち込んだ時はいただいた感想に元気をもらっています。
いつも感想や評価有難うございます!!





