花火の夜に(実話怪談)
Sさんは、その頃、海に近い丘の上にある会社に勤めていました。
そう、先の後姿の話をしてくれた同じSさんの怪奇譚です。
その日は、花火大会で会社から綺麗な花火が良く見えたとの事。
これは、家に帰る道が込むなぁとSさんは思いながら、花火を見たそうです。
花火大会も仕事も終わって、丘の下の街にある家に帰ろうとSさんは、車に乗って海沿いの道を下り出しました。その道の海側は崖になっていました。
花火大会のせいか、込み合ってなかなか動かない車の中で、Sさんがふとサイドミラーを見ると、崖側を歩く人の影が見えました。そこには歩道がなく、歩道は反対側にあるので、そんな所を歩く人なんて誰だろうとSさんは思いましたが、その時はあまり深くは考えなかったようです。ただ、暗くてその人影が男性なのか女性なのか、良く見えなかったと……
やっとの事で家に帰って来て車を降りたSさんの元に、いきなり玄関から彼女の霊感があると言う母親が飛び出してきて、Sさんに勢いよく塩を投げるように振りかけてきました。
そこでSさんは、気が付いたそうです。あの人影がこの世の者ではなかったのだと言う事を……