幽霊ヨット
これは、私が友人と夜の船釣りに行った時の話です。
その夜は、月明かりもなく、海の上は真っ暗でした。
船主の船長が魚群探知機で魚の群れを見つけて、そこで私たちは糸を垂れました。
だけど、1時間経ってもまったく釣れません。
船長は、申し訳なさそうに、場所を変えようかと提案してきました。
その時、友人が海の向こうを指さして、
「あれ? あそこにヨットがある」
と、言い出しました。
目を凝らして見ると、たしかに薄っすらと三角の帆が見えました。
そのヨットは、段々とこちらに近づいて来ているようでした。
船長は、
「ここを離れましょう。この辺りで幽霊ヨットを見ると死人が出ると噂になってます」
と、慌てた様子で釣り道具を仕舞うように即してきました。
半信半疑な私と友人。
私たちが釣り道具を仕舞うと、船長はすぐにエンジンをかけて、ヨットとは反対方向に船を走らせます。
しかし、そのヨットはどんどんと近づいています。
おかしいと思いました。ヨットからのエンジン音は聞こえず、風だけで走っているようなのに、全速力で走る漁船よりも遥かに速かったからです。
ヨットが近づいて来て、間近に迫ってきた時、それがヨットでない事に気が付きました。
それは、巨大なサメの背びれでした。3メートルはあったでしょうか?
私たちはパニックになっていました。
背びれから考えてもサメはおそらく全長が20メートルはあったと思います。
喰われたくない!
私たちは船長にもっとスピードを出すように促しました。
生きた心地はしませんでした。
その時でした。海が突然光って、船の前に円盤のような光が飛び出してきました。
そして、そこから青い光線が放たれ船を包み込みました。
その途端、船が高く持ち上げられたのです。
そして、サメが大きな口を開けて海面に。
強い円盤状の光から、そのサメめがけて赤い光線が飛びました。
サメは眼の辺りを焦がし、慌てたように反転して逃げて行きました。
船は、光に持ち上げられたまま、気が付けば何十キロも離れていたはずの港に降ろされました。
そして、その光は、またサメのいた海域に向かってものすごいスピードで飛び去りました。
この話は、後に色々な人に話しました。ですが、誰に話しても未だに信じてもらえません。
私が聞く側であっても信じないでしょう。
メガロドンに襲われて、UFOに助けられたなんて話、誰が信じてくれるでしょうね……