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多発する場所2(実話怪談)

 以前32歳の時、勤めていた靴屋での怪異について「多発する場所」として書きましたが続編です。

 以前に書いた様に「配属になった時に店長からここは色々な幽霊が出るけど取り乱さない様にと注意される」とか「靴を磨いていたら棚の向こうを歩く人の足。いらっしゃいませと声をかけると誰もいない」とか「レジカウンターでバイトの子と仕事をしていたら、子供たちの声がして2人の前を3人の半透明の子供たちが走り過ぎて消える」とか「バイトの子がバックヤードに入ろうとして、ドアを中から押されて開かない。確認に行ったら誰もいない」と言う事案を報告させて頂きましたがその続きです。

 他にも軽微な事は多々あるのですが、それらは些細な物ですので忘れたりあったなぁ程度なので放っておいて、最大のトンデモない事案を今回は書きたいと思います。

 その男性は、ほとんど毎夜出るので出ないとどうしたのかなと思ってしまう程でした。

 夜、閉店してからレジカウンターでは、社員だけが残って清算作業をします。正社員は店長と私だけなので交代でやっていました。

 最後まで店長も私も残っている時は、何故か店長が先に帰ってしまうという状況。

 店長は、とにかく幽霊とかが大の苦手で、それで逃げるように帰ってしまいます。

 清算している時は、レジカウンター周りだけ電気を残し他の店内は消灯していました。

 そこの店に配属されて半月位経った時でしょうか?

 私が清算作業をしているとレジカウンターから7~8m位離れた紳士靴コーナーにジッと立つ人影を発見しました。

それは、初めはぼやけていたのですが日が経つにつれて段々とはっきり見える様になりました。

 歳の頃なら40代でしょうか?

 男性は、パンチパーマに赤い柄の入ったオフホワイトのニットにスラックス。靴は皮のカジュアル。ただ青白い顔をして俯き加減に立っているだけの方でした。

 毎晩閉店後にそこに現れました。動くでもなく、こちらを見るでもなく……

 ただただ一人、毎日俯き加減に立っているだけの男性。

 私は、幻覚だと思い私のいない時には、さすがに清算作業をしている店長に聞くと知らないとの答え。

 ですけど、毎晩毎晩、私の清算の時には付き合うようにそこに立っている。

 段々と私も慣れてきて、幻覚だと思っているせいもあってか、帰る時には「帰るね。後よろしく」などと声をかけて帰ったりしだしました。

 そもそも先に書いた様にお客様や子供はいないのに、棚の向こうを歩く足や遊ぶ子供の声などは日常茶飯事でしたので、店長とあのドアを押されたバイトの女の子以外のバイトの子たちは、至って普通に「ああ、またか」と言った具合に慣れてしまっていたし、みんなで「幻覚だろうし2人以上が同時に体験しても集団幻覚・集団幻聴だろう」と。もしも本当に幽霊だとしても、誰にも被害が出ていないしなぁ~という状態。

 まぁ、被害と言えば1日の売り上げが平均1~2万とどん底だという位。それも関係ないだろうし……

 そんな事もあって、更にエスカレートした私は、その清算作業の時に現れる男性に向かって、作業中も話しかけるようになってしまっていました。

 もちろん男性は、無反応。見る人から見ればただの独り言。

 まさか私は、これが後悔に繋がるとは正直思ってもいませんでした。

 売上どん底が続き閉店が決まり最終日は最後まで店長もバイトの子全員も残って閉めようという事になり、その前日は最後の私1人の清算作業になっていました。

 当然、いつものように男性は立っています。男性に声をかけながら作業も終わらせ、帰り道に銀行の深夜金庫に売上を預けて帰る算段をしてから、男性に言いました。

「今日でお別れになるね。幽霊さんならこんな言い方も変だけど元気でね」

 私は、帰り際に初めてその男性に近づきました。そして心の芯から冷え込み肝を潰しました。

 男性の赤い柄のついたオフホワイトのニットですが、近づいた時に良く見るとそれは柄ではなく血だったのです。それも何か所も刺された様にまだ濡れてジクジクと赤い血が溢れていて……

 そしていつも俯き加減だった男性は、初めて私をはっきりと見たのです。土色の顔でとても暗く冷たく淋しい瞳……

 私は、後ずさりしてバックヤードに駆け込むと、裏口の鍵を慌てて締めて車で銀行に急ぎました。

 あの男性に向かっていつも親しげに話をしていたと思うと身体の震えが止まりませんでした。

 次の日、閉店してその翌日は本部からも人が来て撤去作業。

 その作業中に急に気持ち悪くなり倒れました。救急箱にあった体温計で計ると38.5度。1時間程横にさせて貰ったら落ち着き作業復帰出来ましたが、因果関係は分かりませんがもしかしたら男性の影響が……

 いやいや考え過ぎでしょう。あれは幻覚だと思っています。というか思い込もうとしています。本来私はガラス製の心臓の持ち主ですから……

 今は、雑貨屋さんになっていますが、重ね重ね本当にその店の方々のご無事を祈り申し上げております。


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