腕の長い女(実話怪談)
「Horror Holic School 怪奇な図書室」 (竹書房怪談文庫刊)収録作
これは、友人から聞いた話です。仮にAさんとしましょうか……
とある広島市内のJRの線路のガード下で、彼女に起こった出来事だそうです。
会社の営業をしているAさんは、その日、仕事が上手くいかず、夜遅くまで電話営業をしていたと言います。
深夜になって、Aさんは、やっと帰宅を始めました。
会社から自宅までは、約1キロ。いつも歩きで通勤していましたが、その途中に問題のガードがありました。
その夜、Aさんがそこを通ろうとした時の事、雨が降り始めたそうです。
濡れるから急ごうと小走りにガード下に入ったAさんでしたが、ガードの向こう側に誰かいる事に、Aさんは、気が付きました。
こんな夜遅くに女性?
最初、Aさんは、そう思いいぶかしく感じたと言います。
ですが、その女性は、何かがおかしい事に気が付きました。
灰色の汚れたワンピースを着た女性の両腕が、異様に長い。
その腕の先は、膝下をはるかに超えた位置にあったそうです。
しかも、女性は、ゆっくりゆっくりふらふらと、だんだんAさんに近づいて来ているようでした。
Aさんは、あまりの恐怖に動けなくなってしまったそうです。
そんな時、Aさんの後ろで……
「どうかしましたか?」
ふりかえると、それは警察官でした。
こんな夜中に女性一人が立ち止っている事を不審に思って、警察官は声をかけたようです。
Aさんは、安堵して腕の長い女性の事を知らせようと、ガード下の先を指さしました。
しかし、あの腕の長い女性は、もう消えていたそうです。
あれが一体何だったのか?
Aさんは、あれ以来、その女性を見ていないそうです。