多発する場所(実話怪談)
あれは、私が32歳の頃に勤めていた靴屋での出来事です。
転属になりその店に配属された初日に店長からその地域の客層等の説明を受けていました。説明が終わろうとした時に店長は言いにくそうに「実は」と切り出したのです。
「この店は幽霊の通り道なのか、色々な幽霊出るけど取り乱さないように」
最初は、転属初日の私への冗談だと思いました。しかし、もし本当であっても私は色々な怪異現象体験をして来ましたので大丈夫だろうと思って聞いていました。
店長の言った事は本当でした。
例えば、しゃがんで棚の掃除や靴磨きをやっていた時に、棚の向こうを歩く人の足が見えて大きな声で「いらっしゃいませ」と言って立ち上がると、店内にお客様は1人もいらっしゃらなくて、他のアルバイトも不思議そうに私を見ているなんて事もザラで、別の日には、いきなり無邪気な声がして、目の前を3人の半透明な小学生位の子供たちが走って行ったりして、一緒に見てしまったアルバイトと顔を見合わせたりという事もありました。
ある日の事です。
アルバイトの女の子が顔面蒼白でカウンターにいる私の所に駆けてきました。
「木本さん。今、バック(ルーム)に入ろうとしてドアを開けようとしたら、中からドアを引かれて開けられない」と言うのです。
私は、すぐに確認に行きましたがドアも開くしバックルームにも、その中のトイレにも誰もいませんでした。裏口のドアにも内側から鍵がかかっていたし……
彼女に状況を詳しく聞こうとしても、震え脅えていて、中々要領を得ない状況で、結局その日からしばらく彼女は、休憩時間も自分の車の中で休憩を取ったりとバックルームに入ろうとしなくなりました。
本当に不思議な事が多い店で、まだまだあるのですが、それはまた後日に。
その店は本社倒産により閉店し、今は雑貨店に様変わりしていますが建物は同じ物です。
今でもそこの店員さんは、怪異を我慢しながら働かれているのでしょうか?
心からその店員さんたちのご無事を祈っております。