大団円?
「……って、え?」
「ホント、にぶいんだから」
香織は笑っていたが、声は震えている。
「『頂上で必ず言う』って、しかもビックリマーク三つで、あの内容?」
「え……とね」
「どこのクライアントでもNGだよ、それじゃ」
「あのそれは実は」
真っ赤になってことばを詰まらせていた和人、はっと我に返る。
あの着ぐるみだ。あれ、煙草の匂いでなぜ気づかなかったんだろう。
シゲノブの野郎め。
それで俺は上着を脱いで、とっさに手を出してきたミナちゃんに預けた。
その時、落とした……いや、だったらシゲノブがわざわざぶつかるか?
ミナちゃんと、シゲノブ……グルだったのか?
「ねえ、」
香織が静かに続ける。
「本当のことばを、聞かせて」
顔を上げた和人は、もう迷っていなかった。
「香織、じゃあ言うけど……
これからもずっとそばにいてくれ」
「別に……いいけど?」
小首を傾げて見上げた香織を、彼はぎゅっと抱きしめた。
しばらく抱き合ってから、香織は「ごめん」と涙を拭いてどこかにメールをしたようだった。
すぐに電源がすべて復旧する低い唸りが響き、ゴンドラがかすかに揺れた。
「今のメール何?」
香織は画面を和人に向けた。相手はミナとシゲノブ、文面は簡単に
『ОK!』
和人は絶句して思わず立ち上がる。
遊園地の面した湖上、いくつもの白い光がゆらめき立ち上がり、暗い夜空にいくつもの光の華を咲かせた。
真ん中に淡いピンクの光がハートマークを浮かび上がらせる。
「な、なんなのあれは」
上ずった和人の声に、香織がふふ、と楽しげに答えた。
「お祝い、じゃない?」
「お、おいわい??」
次々と上がる花火の輝きに照らされ、香織はうるんだ瞳の中にいくつもの星をたたえながら、いたずらっぽくこう答えた。
「うん。ミナちゃんのパパ、ここの総支配人なんだ」
(了)




