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「さあ、次はどこに行こう」
声を励まして言ってから、
―― マジックショーが13時からなんだってさ。
和人がそう続けようとした時、ねえ、と唐突に香織が口をはさんだ。
「ちょっとここで待っていてくれる?」
和人は、ぽかんとした表情で立ち止まる。
「ここで? なんで?」
ベンチがひとつ、丸噴水を背に置かれている。
香織の声がわずかにイラつく。「お手洗い、すぐ戻るから」
「あっ……てことは」
香織はとっさに和人を睨みかけたが、即座に気持ちを切り替えたらしく、
「すぐ戻るから」
にっこりと笑ってまた言い直し、小走りに木陰の建物に向かった。
「あっ、い、急がなくていいからね」
和人があわてて声をかけた時には、すでに彼女の姿は消えていた。
和人の脇にいたミナも急に
「あ、アタシも!」
とその後を追った。
和人は、はあ、と大きくため息をついて、ベンチに座り込んだ。




