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chapter 5-4「異変の謎を追いかけて」

 どうやらあの白い光線に直撃すると、急激に老化して化石になってしまうみたいね。


 骨でできた恐竜のようなモンスターが目の前に現れ、雄叫びを上げながら私たちを威嚇する。


 化石恐竜の大きな体に強靭な尻尾と足、腕がちょっと貧弱だけど、あの大顎に噛まれたらひとたまりもないわ。しかもあの光線まで撃ってくるのよね。


「アリス! 化石が自分で起き上がったぞ!」

「……嘘でしょ」


 さっきまで死に絶えたことを示すように倒れていた化石が起き上がり、バラバラになっていたはずの骨のパーツが繋がっていくと、化石と化した動物さんやモンスターが私たちを取り囲んだ。


 私とパルドーは縮こまるように固まった。


「パルドー、私が合図したら、森まで走って」

「分かった」


 段々と全方向から化石たちが迫ってくる。


「……今よっ!」


 パルドーが走り出すと共に私は箒を構えた。すると、空から無数の羽が飛んでくると共に大爆発を起こした。私の周囲にいた化石たちはバラバラになっていく。私は慌てて箒にスイーパーモードを命じた。


「【放水掃除(ウォッシュスイープ)】」


 吸い込み口から鋭く細長い聖水が勢いよく発射され、爆撃による森への飛び火を防いだ。


「ふぅ、間に合った」

「アリス、大丈夫か?」


 声をかけてきたのはハンナだった。どうやら私だけ家を飛び出したのに気づいていたらしい。


「ハンナ、助けてくれたことには感謝するけど、森を燃やしちゃ駄目」

「す、済まない」


 しかし、この大爆発によってバラバラになった恐竜が真っ先に起き上がり、次々とバラバラになった骨のパーツが元の状態へと繋ぎ合わされていく。


 ハンナはすぐに森を燃やさないように気をつけながら爆撃を繰り返すが、それでも化石は時間が巻き戻ったかのように何度も復活し、再び私たちは追い詰められた。


 ――爆撃で破壊してもすぐに復活するなんて、恐らく魔力が込められているんだわ。


 だったらその魔力を取り除いてやれば。


「ブルームモード。ハンナ、下がってて」

「何をするつもりだ?」

「このモンスターたちはあいつの白い光線で化石にされた後、あいつの思い通りに動いているの。だから白い光線によって化石にこびりついた魔力を取り除くわ」

「そんなことができるのか?」

「ええ、やってみせるわ」


 私は箒を持ちながら大きく振りかぶった。


【お掃除の時間よ。魔力掃除(マジカルスイープ)】」


 箒からキラキラと輝く魔力が周囲に飛び散ると、それらの魔力が化石と化したモンスターたちに一斉に襲いかかり、モンスターたちから魔力を全く残さず吸い取っていく。


 すると、モンスターたちから吸い取った魔力が箒に吸収されていく。化石と化したモンスターたちは修正力を失い、バラバラになって崩れていく。


 諸悪の根源となった化石恐竜だけが残ったが、魔力を失ったとはいえ、あの巨大な骨の体で攻撃されればただでは済まない。


 そう思った途端、化石恐竜が爆破されて木端微塵に砕け散った。ハンナの翼に装備された魔弾砲が決まったために。


 魔力を全て吸い取られているのか、もう復活する様子はない。


「あんたって本当に無茶苦茶ね」

「私はもっと無茶苦茶な奴を知っているがな」

「ハンナ、どうしてここが分かったの?」

「さっきパルドーの話を聞いていた。湖がピクトアルバから西にあることもな。アリス、そんなに私たちが頼りないか?」

「夜遅いから起こすのが悪いと思っただけよ」

「緊急事態なら誰も怒りはしない」

「それでも、私にできることは私がやるわ」


 私を連れて帰るのを諦めたかと思いきや、こんな時にまで私についてくるなんて。


 まるでずっと()()されているみたいだわ。


 そんなことを考えていると、さっきまで森に避難していたパルドーを始めとした動物さんたちがひょっこりと様子見で顔を出した。黒ヒョウ、ハイエナ、猿、ウサギといった多種多様な顔が揃っている。


「アリス、ありがとう。おかげで助かったよ」

「あなたはここの救世主よ」

「一体何があったのか、教えてくれない?」


 私は動物さんたちから話を聞いた。何でも、突然骨でできた恐竜、人間、ゴブリンといったモンスターたちが洞窟から現れ、仲間たちの一部が犠牲になったという。


 その洞窟まで行けば、この謎が解けそうね。


「パルドー、その洞窟に案内して。ハンナはこのことをエドたちに伝えて」

「分かった」


 ハンナは翼を広げると、猛スピードでピクトアルバへと飛び立っていく。


 私は居ても立っても居られなかった。エドたちはいずれここまで助けに来るとは思うけど、まずは洞窟の謎を調べないと。


 動物さんたちに洞窟の入り口にまで案内してもらった。パルドーもここから先へは恐れ多くて入れないらしい。


 場所は湖のすぐ近くであり、青と黒の石が固まってできたような場所だった。しばらく洞窟の中を歩きながら手探りで目的地を探すことに。


 ふと、私は最後に女王陛下とお会いした夢の中の内容を思い出した。


 ――ん? 洞窟? 湖? ――!


 ここ、この前見た覚えがある。確か夢で見た湖と洞窟とよく似ているわ。洞窟の入り口も夢の中で見た洞窟と一致していた。中までは覗けなかったけど。


 そうよ。確かここは、女王陛下が逃げ込んだ場所じゃない! 


 ようやく手がかりが掴めたわ。きっとこの先に女王陛下がいらっしゃるはずよ。何故みんなが女王陛下にまつわる記憶を忘れてしまったのか、その原因さえ判明すれば、きっと女王陛下に会えるわ。


「ここからは私1人の戦いね」

「何言ってんだよ。俺がついてるだろ」

「さっきまでモンスターにビビって喋れなかったわよね?」

「細かいこたぁ気にすんな。アリスならやっつけてくれるって信じてたぜ。でも変だよな。ハンナがアリスを守るメリットはどこにもないはずだ。なのに何故助けたのかが気になるぜ」

「そんなの仲間だからに決まってるでしょ」

「でも俺としてはさー、あの妙に親切なところが逆に怪しいっていうか――」

「私はハンナを信じてる」

「やれやれ、後でどうなっても知らねえぜ」


 ラットは妙に勘が鋭いところがあるから困りものね。


 そんな予想が当たった日には目も当てられない。ましてやハンナがよからぬことを考えているとはとても思えない。


 私はそんなことを考えながら、青袋から取り出したランプで洞窟内を照らすのだった。

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