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chapter 4-8「星と星を繋ぐ道」

 気がついてみれば、私は妖精たちに包囲されて逃げ場を失っていた。


 完全に侵入者だと思われてるわね。早く誤解を解かないと。


「そなた、妙ななりをしておるが、一体どこから来たのだ?」

「私はアリス・ブリストル。さっきドラゴンの巣穴からやってきたんだけど、わけあってコットンシープの綿がどうしても必要なの」

「俺はラット。アリスの連れだ。言っとくけど、俺たちは侵入者じゃねえぞ」

「なに、では密猟者か?」

「違うって。アリス、一度説明した方がいいんじゃねえか?」

「そうね。理由はちゃんと説明するわ。だから聞いてほしいの」

「ふむ、聞いてやろう。私はこのリーフスターの妖精王フェアリウスだ」

「フェアリウス?」

「おいこら! 呼び捨てとは何事か! 無礼者め!」


 突然フェアリウスの隣にいた執事らしき妖精が怒鳴ってくる。


 どうやらこの世界にも身分制度があるらしい。


「まあよい。どうやらお主はこの世界の者ではないらしい」

「この世界の者って――ここはメルへニカじゃないの?」

「メルへニカ? それはどういう場所だ?」

「私が住んでいる国よ。人間が住んでる大都市とか見たことない?」

「いや、どこか遠い星にそなたのような知的生物が住んでいるという話なら聞いたことはあるが、少なくともここはメルへニカという場所ではない。ここはリーフォレスだ」

「そう……」


 どうやらここは、妖精たちの住む星みたいね。


 私たちが住んでいる星はネオアースと呼ばれている。


 ということは――ドラゴンの巣穴を通してネオアースと他の星が繋がっているってこと?


 つまりコットンシープを始めとしたモンスターたちがここから何匹か漏れ出てきたのがメルへニカで野生化している。そう考えればコットンシープが滅多に見られないモンスターであることも説明がつくわ。


 周囲にはコットンシープがたくさんいる。ここではありふれたモンスターということね。


「アリス、今回だけは見逃してやろう。さっさと来た道を戻れ」

「分かったわ。必要なものは手に入ったから」


 なんだ、話し合えばちゃんと分かってくれるじゃない。


 そう思った時だった――。


「「「「「きゃあああああぁぁぁぁぁ!」」」」」


 少し遠くで大きな爆発音が聞こえると共に悲鳴が聞こえた。


「何事だ!?」

「陛下、ドラグノスが出現したようです」

「すぐに避難命令を出せ」

「はっ!」


 フェアリウスの部下らしき妖精が命令を受け、すぐに立ち去っていく。


「どうしたの?」

「またドラゴンが出現した。何度かこの森を襲われたのだ」

「だったら私に任せて。採取のついでにお掃除していくわ」

「危険だぞ」


 私は箒に乗ると、フェアリウスの制止を振り切って現場へと向かった。


 そこではドラグノスと呼ばれる燃えるような赤色のドラゴンが暴れていた。とても大きく、口から吐く炎は目に映る全てを焼き尽くすというメルへニカでは有名な上級ドラゴン。


 ――このドラゴン、さっきノース峡谷で見たわ。ドラゴンの巣に帰ってきたのね。ドラグノスの巣穴はメルへニカのノース峡谷と、リーフスターのリーフォレスと繋がっているみたいね。


 どっちからどっちに入ってきたのかは知らないけど、危険ごみはお掃除するに限るわ。


 すると、後ろからもう1体のドラグノスが現れた。


 このままじゃ、片方を攻撃している間にもう片方から挟み撃ちにされる。どうすれば。


 そうこうしている内に後ろのドラグノスがすきを突くように私に襲いかかってくる。


「しまった!」


 私が咄嗟に身構えたその時――。


 いくつかの銃弾がドラグノスの頭に命中する。


「アリスに手を出すなんて許さないわよ!」

「みんな……」


 空を飛んでいるハンナの背中の上に立っているシモナが小銃をドラグノスに向け、次々と銃弾を浴びせている。


 ハンナの翼にはエドがぶら下がり、地上に降りてくるとすぐに聖剣を鞘から抜いた。


「アリス、こっちは任せた」

「――分かったわ」


 私は1体目のドラグノスに集中し、2体目をエドたちに任せることに。


 今度は後ろを振り返らない。背中は預けたわ。


 ドラグノスが口から猛烈な炎を吐いた。


「スイーパーモード。【吸引掃除(サクションスイープ)】」


 乗っている箒の穂先を前にしてからスイーパーモードを命じると、穂先が吸い込み口へと変わり、炎を全て吸い込んでいく。


 やがて相手の炎が尽きると共に私はすぐ反撃に転じた。


 地上ではフェアリウスを始めとした妖精たちが私たちの戦いを見守っている。


「吸い込んだごみにはこういう使い道もあるのよ。【光線掃除(ビームスイープ)】」


 吸い込み口から黄色い極太のビームが発射され、それがドラグノスの大きな体を覆いつくし、少しの間苦しそうに雄叫びを上げながらもがき、大爆発を起こすと共に木端微塵になっていく。吸い込んだ攻撃をエネルギーに変えて攻撃するから、一度攻撃を吸い込まないと使えないのが欠点だけど。


 ドラグノスの欠片が地上の所々へと降り注ぎ、近くにいた妖精たちが慌てて逃げていく。


「ふぅ、お掃除完了」


 敵の消滅を確認してから後ろを振り向くと、既にエドたちももう1体のドラグノスを倒していた。ハンナの爆撃で弱らせてからエドの聖剣で乱切りにされている。


「やっぱアリスには勝てないか」

「私たちが3人がかりでやっと倒したドラグノスを1人であっさり!?」


 シモナが私の方を向き、木端微塵になっているドラグノスを見て顔が石のように固まっている。


「まあ、アリスならそんなもんだろう。私を倒したくらいだからな」

「今度は信用してくれたみたいだな」

「同じ過ちは犯さないわ。それより、どうして助けにきてくれたの?」

「実はあの後心配になって、こっそりアリスの後をつけてたのよ。そしたらいきなりこんな明るい場所まで来ちゃったわけ。でも凄く奇麗な場所ね」

「最初に言いだしたのはエドだけどな」

「……」


 エドが恥ずかしそうな顔でそっぽを向いている。


 私はそんなエドに近づき、そっと優しく抱きついた。


「ありがとう。エド」


 私がそう言うと、エドはホッとした顔で私を抱いた。


「心配させないでくれ。アリスは僕らの希望なんだからさ」

「……ごめんなさい」


 心配してくれてたんだ。私はそんなエドに帰ってもいいなんて言っちゃったんだ。


 また仲間を無視して自分だけ勝手に行動してた。これじゃメイド部隊でモンスターと戦っていた時と全然変わらないじゃない。


 私は友達がどんなものであるかに気づきつつあった。

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