5.ゴミを強化
翌朝、改めて村長がやってきて、俺にお礼を言った。
そして昼から村人全員が集まっての宴を催してくれた。
子供から大人まで、順番に俺にお礼を言ってきてくれた。
実の父親によって実家を追い出された俺に、その言葉は優しく染み渡っていった。
「本当に、レイ様のおかげでこの村は救われました。この事実は、永遠に語り継いで参ります」
俺は少し恐縮しながら「いえ、そんな……」と頭を下げる。
「本当は、金品でお礼をしたいところですが、残念ながらこの村は貧しく、大したものは用意できません。本当に申し訳ありません」
そう言って村長はさらに深々と頭を下げてきた。
「いえいえ、全然いいんですよ。寝床を貸してくれて、ご飯まで用意していただいて、本当に助かりました」
「たったこれだけしかできず、心苦しいばかりです」
「……ところで、村に何か壊れたものとかありませんか? それをちょっと貸して欲しいのですが」
俺は村長にそう尋ねた。
「壊れた……ものですか?」
「ええ、ちょっと“ゴミの強化”が得意技でして……。もしかしたら直せるかなと思いまして」
俺は、神から与えられたユニークスキル“ゴミ強化”の力を、改めて試してみたくなったのだ。
おそらく、俺の考えが間違いでなければ、ゴミ強化のスキルにゴミ強化のステータス強化がかかって、ゴミのステータスを100倍にできる力になっているはずなのだ。
とすると、ただのゴミが、普通のアイテムくらいにはなるかもしれない。
「それでしたら、錆びたくわなどでしょうか……」
そう言うと、村長は若い者に指示をして、錆びたくわを持ってこさせた。
一面茶色に錆びついて、刃はかけており、到底使えたものではないだろう。確かに、まごうことなきゴミだ。
それを俺は受け取って、スキルを使ってみる。
「――“ゴミ強化”」
すると、くわが光り輝く。
――見た目は、さほど変わらない。
だが。
俺は立ち上がって、少し離れたところに行き、くわを地面に向かって軽く突き刺した。
すると、
――ドカンッ!!
爆音がして、地面に穴が空いた。
「こ、これは!?」
村人たちが驚きの声をあげる。
クワが、まるで魔道具のように強力なアイテムに変わってしまったようだ。
やはり、ゴミであれば、ステータスをものすごく強化できるようだ。
「い、一体、何をされたんですか」
村長が腰を抜かしたという声で聞いてきた。
「いや……まぁただのステータス強化……ですかね? ……多分これだと畑は耕せないでしょうから、モンスターに襲われたら使ってみてください」
俺は強化したくわを村長に返した。
「――ありがとうございます。これは村の宝にいたします」
……ゴミが宝になってしまった。
もしかして、“ゴミ強化”って結構使い道あるのか?