コンビニに来たヤンキーの話
「いらっしゃいませー」
入店してきたのはガラの悪い、所謂ヤンキーと言うやつだった。
指輪腕輪をじゃらじゃら鳴らし、金髪にグラサンとかいうまんまのやつだ。
(まあ、こんな時間帯だし、別に変でもないか……)
どうせ客も少ないので、レジから奴を観察してみることにした。
ヤンキーくんは、入店するなり早速左に九十度曲がり、雑誌類のコーナーに歩き出した。
(エロ本でもあさりに来たのか……?)
ヤンキーの生態に少しばかり興味があった手前、ヤンキーの普通の客となんら変わらない動作にがっかりしつつ、レジから結構乗り出してしまっていた自分に気づいてちょっと恥ずかしく思いながらいつもの場所で直立する。
そのとき、ことが始まった……。
「おいそこのにぃちゃん」
そのドスの効いた、聞いただけで下腹部のすぼまるような声音は、俺を含めたコンビニにいた人の思考を止めた。
「ホラ、その持ってるスマホ、さっさと俺によこしな」
たかりだ。さっきまであいつに少しだけ持っていた興味は吹っ飛び、恐怖に思考を支配されてしまった。
「え…………やっ……やですっ! ……えと……え……?」
「いーやー? は? お前何言ってんだ? てめぇが何考えてようが関係ねぇっての」
あっちでなにが起きてるのか、俺は見えない。くじを売っている棚で隠れて見えない。いや、見てない。見ようとしてなかった。
店員のくせして、さっきまであのヤンキーを内心ナメてたくせに、足が動かない。助けなきゃ、逃げなきゃ、あのヤンキーはなんでスパイク履いてんだ? いろんなことが頭をよぎるけど、体がまったく動かない。
「いっ、いや! なんで僕があなたに携帯を渡さなくちゃならないんですか! 意味がわかりません!」
早くも持ち直した少年が反論の言葉を並べる。
ダメだ、そんなに刺激しちゃ――
「ああ⁉ てめえよくそんな口聞けるなぁ……!」
お怒りになってしまった……!
「お前がさっき撮ってたの、忘れたとは言わせねえからな!」
⁉ 喧嘩でも撮られたってことか……!
だったらなおさらタチが悪い。少年くんには気の毒だけれど、喧嘩の盗撮のツケ払いを店でやられちゃたまらない。
俺が追い払わないと……!
そう思うと不思議と足が動くようになり、俺はレジを離れられた。
「お客様ー!」
今、店には後輩のバイトくんもいるんだ! かっこつけるチャンスじゃないか! なにがヤンキーだ。そんなの法律名適当に言っときゃ帰るだろ!
「あぁん?」
「他のお客様のご迷惑となr」
「はあ⁉ 店員サンはレジでやることあるでしょう⁉ なにしてんんすか!」
「え? あっ、はい」
スタスタ
え?
「先輩、さっきなにしに行ったんです?」
「え?」
「え?」
え?
「あー!! お前逃げんじゃねー!!」
え?
「そっ、そこの金髪の人っ、追っかけないで! ちょっと話がありますのでー」
後輩が声を張り上げる。
「はぁ⁉ 何をのんきなこと言ってんですっ⁉ 話をするならなおさら捕まえないと!」
「いやっ、悪いことしたのは君でしょっ⁉」
「はぁぁぁぁあ⁉ 頭おかしいんですか? だってあいつ……」
「雑誌の中身撮ってたんすよ⁉」
台風で怖くて寝れなかったので思いついたのを勢いで書いたのがこれです。
ちなみに初投稿です。