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魔法少女全滅スイッチ  作者: 君涙
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Target No.010 黒金 赤(1)




 敵からの魔法による遠距離攻撃を掻い潜りながら、黒金赤(くろがねあか)は夜の街を走っていた。


 そこは、人影のない歓楽街。

 見上げればバニーガールを模したネオンが、態とらしく男達を誘っており、妖しい雰囲気が街全体から絶える事はない。

 なのに、幾ら見渡しても周りには客の姿も、客引きの鬱陶しさからも無縁という、見た目違和感しかない場所である。


 しかし、不夜城の象徴のような歓楽街なのに、何故ここまで閑散としているのか、などと考える呑気者はココにはいない。


 何故ならココは、小異世界ダイバーワールド。

 タイプ『歓楽街』のバトルフィールドだからだ。


 電子的な仮想空間ではない、現実的な異世界にして、他でもない魔法少女達が集う戦場。

 それが、このダイバーワールドだった。



 「傀儡は? どこか分かる?」


 「フメイフメイ」


 「もう、このノロマ! 早く見つけなさい!」



 今日の敗者が、周囲を見渡しつつ、名を傀儡とされている敵対モンスターを探している。

 彼女の属性は、金属『レアメタル』

 イメージ通りの形状を、想定した金属にて生成できる魔法少女だ。



 「ハッケンハッケン! ポイント216、23!」


 「だからいっつもそれじゃ分かんない言ってるでしょうが! ちゃんと方角で言いなさい!」



 馬の合っていない黒金赤の相棒マジデンは、タイプ『マシンバード』

 索敵にはそれなりの精度を誇る個体だが、コミュニケーション能力に欠ける、まぁ、低ランクのマジデンだ。


 マジデン……普通の人間に、魔法少女としての力を与え、ダイバーワールドへのゲートを開く事のできる、魔法少女のパートナーマスコット。

 稀代の天才にして天災、天王寺マドカによって作られた忌むべき存在である。



 「クル! クル! ミギ!」


 「ああもう! また、アンタのせいでまた先制取られそうじゃないのよ! ちゃんと仕事しなさいよポンコツ!」


 「ノー! アイム、クロウ!」


 「今それ訂正するとこ!?」


 「イエスイエス!」


 「イエスなわけないでしょ! この真性ポンコツが!」



 などと、諍いを起こしている間に、傀儡が黒金赤へと近づいていく。

 傀儡のタイプは、『マジックスパイダー』

 魔法による遠距離攻撃を得意とする蜘蛛で、俊敏かつ縦横無尽な動きで相手を撹乱してくる、少しだけ面倒なモンスターだ。



 「ほら! 行くよ!」


 「イエッサー! イエッサー!」



 まだ、敵傀儡視認できていない筈だが、そのまま攻撃態勢に入る黒金赤。

 どうやら、遠距離タイプの傀儡が、せっかく接近してきてくれるのだからとカウンターを仕掛ける試みらしい。

 やれやれ、勝ち気な事だ。



 「生成! ダマスカスナイフ!」



 音声入力の要領で、彼女は両手に特徴的な模様の入ったナイフを作り出す。


 『ダマスカス双剣』

 

 それが、黒金赤の通り名であり、今だに完全再現には至っていないダマスカス鋼によるナイフが、黒金赤のトレードマークであった。

 

 

 「キョリ50! セッテキマデカウント3!」


 「だから遅いのよアンタは! 自動貯蔵!」



 諍いを続けつつも、コンビは迷わずに敵傀儡の近づいてくる方向へと高く高く跳び、ようやく蜘蛛の姿を視認する。

 同時に、2本のダマスカスナイフを投擲し牽制を仕掛けていた。


 本来なら、その程度で傀儡の足が止まる事はない。

 しかし、残念ながら彼女の作成する武器は特別性。

 ナイフ全てに魔力的な繋がりが存在し、遠距離であっても、柄の部分の間にオンオフ可能な金属糸を張ることが出来る仕様。



 「ヌオオオオオ……」



 結果、敢えなく足を絡めとられて転倒してしまう蜘蛛。

 8本足である事も災いし、計足3本の自由を失って、愚かにも再行動までの時間を稼がれてしまっていた。

 馬鹿が。

 そもそも遠距離タイプが、接近戦を仕掛けてどうするというのか。



 「ほらチャンス! コアポイント検索!」


 「ラージャ! ラージャ!」



 この機を逃す筈もなし。

 黒金赤は、マジデンに命じて弱点であるコアの位置を探らせる。


 コアさえ潰せば、対傀儡戦のゲームは黒金赤の勝利だ。

 自動的に、ダイバーワールドはまた一つ消滅し、苦々しくも天王寺マドカの目指すゴールへと近づいてしまうのである。

 全く持って忌々しい。


 無論、敵の動けなくなっている間にも、黒金赤は、貯蔵し続けているダマスカスナイフを無詠唱で出現させては、蜘蛛の四方八方にナイフを投擲、蜘蛛相手に糸攻撃を仕掛けては雁字搦めにしていく。

 このゲーム、もはや黒金赤の勝利は揺るがないだろう。



 「この私さえ、いなければね」



 さぁ、今日も、私が魔法少女を否定しよう。




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