帰るときに見つけたぬいぐるみ
その後、やまねのことは好きだけど、恋愛とかそういう好きではないからね、と美雨に言いまくってなんとか美雨を落ちつけ、それからは平穏に部活が終わった。
「うゆゆまたね」
「今度はほたる児童館で会おうね〜」
「さよならー」
小学生三人と、昇降口のところで別れ、僕と美雨と……あ、それから大野さんは駐輪場に向かう。美濃はバス通学だから美濃ともここでお別れ。
大野さんも自転車通学か。まあそうか。僕の家の近くだから僕と通学方法が同じなのは不思議ではない。
「ゆー先輩は幸せですね」
大野さんがこそっとした感じで僕に話しかけてきた。
「幸せ……?」
「ちゃんとお二人で帰るんですよ? ちゃんと帰るんですよ二人で」
「いや、三人で帰ろうよ普通に」
「ダメです! そんなんだから美雨先輩のおっぱい触れないんですよ。毎日ぬいぐるみを抱くように美雨先輩を抱くことも……」
「何二人で話してるの?」
「いや特に何にも!」
大野さんってこんな人だっけ……。
そういや今思い出せば、ずいぶん前だけど前会った時も僕を結構からかってたな。
「あ、私は駅で買い物帰りのお母さんと待ち合わせしてるので、ここから駅に向かうので失礼します」
「え、あ、じゃあね雫ちゃん……」
美雨がそう言っている間に自転車にひょいと乗り、漕ぎ出した。
行ってしまった……。
「私たちも行こう」
「おお」
大野さんに言われたことはよくわからないが、大野さんを気遣わせてしまったならよくない。次はちゃんと一緒に帰ろう。
大野さんもぬいぐるみ部のメッセージグループに入ったし、みんなで仲良くなれたらいいな……と、小三と一緒にいたからか、小三のような目標を立てつつ、僕は自転車に乗った。
そして美雨も乗った。
「あ……」
漕ぎ出そうとして僕と美雨は同時に気がついた。
一つのぬいぐるみが落ちている。
これは……レッサーパンダのぬいぐるみだ。
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