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静かに集中する雰囲気としましまパンツ


「じゃあぬいぐるみ作ろう」


 美雨の機嫌の悪さと、疑わしげな感じを頑張って無視して、僕は小学生三人に言った。


 三人は返事をすることよりも、裁縫セットを広げることを優先する。いつもよりやる気がすごい。


 三人ともなぎさこどもまつりに向けてのぬいぐるみ作りのことで頭がいっぱいなようだ。


 なぎさこどもまつりというのは、三人が通っている小学校で開催される、まあ文化祭みたいなものだ。一ヶ月後くらいにあるらしい。


 僕も遊びに行きたいのだが、保護者しか入れないらしい。まあそもそもそれ以前に行こうとしたら美雨にどう言われるか考えただけでも怖い。


 


「あ、なるほど! こうやって縫うんですね」


 気がつけば、美濃が大野さんに早速ぬいぐるみ作りを教えていた。


 小学生三人は、ここ最近で急激にぬいぐるみ作りが上達した。今は特に教えることもない。


 というわけでしばらくは僕も自分のぬいぐるみを進めますか、と思ったがその前に忘れないうちに。


「……えりか、あの、漢字練習帳……」


「あ! 前わすれていったの……ありがとう、うゆゆ」


 僕はえりかに漢字練習帳を渡した。緑色の漢字練習帳の表紙には、ピンクの花の写真があって、それがえりかのピンクのワンピースと同じ色だなと思った。


 えりかは、少し前まで、僕のことを「うみがめさん」とよんでいた。理由は、えりかが大切にしてくれている僕のつくったぬいぐるみが、うみがめのぬいぐるみだからだ。


 でもりすとやまねが僕のことをうゆゆと呼んでいるのに影響されたのか、最近はうゆゆだ。


 ちなみに、小学生三人は、美雨のことは「みうみう」、美濃つばきのことを「みつばち」と呼んでいる。


 最近、小学生のあだ名のつけ方いいなって僕も思ってきた。


 だからこの前美雨のことをみうみうって呼んでみたら、なぜか怒られた後にキモいと言われた。


 まあそれはいいとして、このゆったりとした雰囲気がいいよなあ。ぬいぐるみをみんなで作って静かだけど寂しくはなくて。


 僕はあたりを見回す。


 はい、ここで僕たちの活動場所である音楽室楽器置き場裏の様子を説明してなかったので説明すると、人二人ぶんくらいの幅の細長いスペースで、そこに僕たちでお金を出し合って買ったマットを敷いて座っている。


 つまり結構人口密度が高い。で、美雨や小学生もすぐそこにいるからどきどきするとかそういうことを言いたいわけではない。美雨が近くにいると緊張するのは本当だけど。いつチャコ鉛筆で攻撃されるかわからないし。


 ポイント……じゃなくて問題は、マットを敷いてそこに座っているということだ。


 スカートの短い新入部員の方を見るとですね……、見えてしまいましたごめんなさい。しましまパンツ。ぬいぐるみに埋まるほどの勢いで謝ります(心の中で)。 

 

 ……指摘すると面倒なことになりそう。


 僕は視線を手元に戻し、ぬいぐるみを作ろうとする。


 僕はぬいぐるみ作りに関しては集中力がある方だと思う。朝いきなり後ろから美雨がのしかかってきて、むんにゅっと胸が背中に当たっていても集中できる。


 しかし、今はあまり集中できない。


 不意打ちしましまパンツは思っていたよりも威力が強いようだ。

お読みいただきありがとうございます。


半月以上ぶりの更新で、本当に申し訳ございません。



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