濡れるか濡れないか
「ハウステンボス、でかいな」
「ですね〜なんか、新しい世界に来たみたいですー」
「人も少なめな気がするね」
「平日だからかもね」
「たくさん遊べそうです」
「うん……」
ハウステンボス駅から、ハウステンボスまで橋を渡って歩いて来た僕たち。
あれ、稲城が会話に入って来てないな。
振り返ると、写真を撮っていた。
あ、そういえば割と写真撮るの好きなんだよな。
まあどこかにWiFiを発見次第そこに居座る気もするんだけど。
「まず、小型遊覧船に乗ってみたいです」
「って五回くらい言ってるな」
「言ってますよーだ。だってすごいんですよ。水陸両用バスなので、陸を走って海にざばーんっていくんですよ」
「あ、そうなのか」
「楽しみー! 濡れるのかな?」
美雨は濡れたそうな口調でそう言って、その声が聞こえたのか、パソコン大切人間稲城は、少し嫌そうな顔をした。
立派なケース持ってるんだからちゃんとしまおうな、それか預けるか。
美濃の提案通り、入場してからまず、小型遊覧船のチケットを買った。普通のバス停のようなところが乗り場だった。
ほんとに水陸両用なんだな。
稲城はチケット受付のお姉さんにパソコンを預けていた。
流石に遊覧船の中でパソコンをするのはやめたようだ。
船の形のバスのようなのが来て、僕たちはそれに乗る。お客さんは半分ものっていなかった。
しばらくは普通のバスのように走って、そして気づいたら海へと降りるスロープみたいなところに来ていた。
そして、
ぶおおおおおん!
ざばーん
「ざばーんって行きましたね」
美濃が頭から水をかぶりながら言った。
こっちはあんまり濡れなかったな、濡れたかったな。
「さ、寒い……」
美雨もしっかり海水まみれになっている。あ、厚着だから透けたりはしてないよ。
稲城は濡れなかったのを喜んでいた。
それから周辺の海に関する解説のアナウンスが流れながら、沖へと進んでいく。
小さな小島が見える。ハウステンボスの建物も小さく見える。
そして、水のしぶきが近い。
でかい遊覧船と違って海面が近いのもいいなと思った。
三十分ほどぐるっと海を回って来て、スロープのところに戻ってきた。
ちゃんと海から陸も上がれるんだな。
その後、また陸上を走って、行きとは違うバス停のようなところまで来て、おしまい。
「次どこ行きますか?」
髪が濡れたままの美濃が元気に言った。
水遊びをしても元気なままの小学生みたいだなと思いながら、僕はマップを広げた。
「うーんと、この辺はどう?」
屋内系アトラクションが集まっているところを僕は指した。