寄りかかる美雨
「ん……わっ」
「あっ」
起きたらすごい近くに美雨がいて目が合った。
「ごめん、寝てた……」
「うん寝てたね」
「なんでこんな近くにいるの?」
「あ、ちょっと観察というか……」
「あ、観察な、このカピバラ、かなり顔とかこだわってるから、観察したならアドバイス欲しいな」
「あ、その観察……? うん。かわいいと思うよ」
美雨は少し拍子抜けした風に、ゆっくりと僕と普通の距離をとった。
「あれ、美濃と女の子は?」
「女の子は帰ったよ。夜も遅いし。つばきはお菓子買いに行ってくれてる」
「お菓子……はいそうですか」
てことは美雨とこの部屋に二人か……。この部屋ってそういえば女子の部屋だし。
いやでもぬいぐるみ部のときだって美雨と二人きりになったことはあるし普通だな。
しかし美雨はパジャマで時計を見ると夜も十一時。
しかも気がつけば美雨が僕のすぐ隣で壁に寄りかかって座っていた。
「優に寄りかかって……いい?」
「な、なんで」
「ちょっと眠いんだもん。でもね、お布団で寝るほどじゃないんだよ」
「じゃあ、いいよ」
「やった」
美雨が僕の左側から寄りかかってきた。
結構ぬいぐるみが作りづらくなってしまった。
美雨がすごい嬉しそうな顔をして目を閉じているので、そのまつげを見て、針を持った手は止まったままになってしまった。
やばい。僕、美雨に見惚れてるわ。
「ただいまお菓子到着ですー、あ、美雨大胆に優に甘えてますね〜」
美濃の声で僕はやっと美雨から目を扉の方に移せた。
「美雨は優くんにくっつくので忙しいからとりあえず私が食べちゃいましょうかね」
美濃は真ん中の机に袋を置くと、早速開封し始めた。
すると美雨がかすかに動いて……。
お菓子の方に行かなかった。
「優、食べさせてほしい」
「どうした、急激に動かない人になって」
「別にいいじゃん。眠いの、でもお菓子も食べたいの」
「そうかよ」
でも僕も美雨に寄りかかられている状態が結構好きになってしまっていたので、僕はとりあえず美濃にお土産屋のクッキーを数枚もらった。
さて、どうやって食べさせればいいんだろうね。
適当にクッキーを美雨の口に近づけてみた。
美雨が口を開いてくわえて、クッキーが美雨のお口の中に回収されていった。
なんだこれ、かわいいけど。なんか可愛い生き物に餌をあげたときの可愛さの方向に向かっちゃってるな。