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後輩を連れてきた時の謎の雰囲気


「あ、ゴミ捨ててきてくれてありがとー」


「いやそんなことよりほらすごいぞ! 新しい部員!」


 僕の隣の新しいぬいぐるみ部員に僕の前に立ってもらおうとしたが。


 僕の横よりもやや後ろ、草食動物だったら見えるけど僕には見づらいくらいの位置に目立たない感じで大野さんは立っている。


 まあ……確かに。僕が逆の立場だったら緊張する。


 いきなり見知らぬ先輩二人の前に立つのは。


 僕から軽く紹介すればいい感じに一瞬で馴染めるかな。


「ゆー先輩」


「あ、大丈夫。僕から軽く紹介するから」


「そうじゃなくて、あの、二人の先輩が……特に大きい方の先輩が……睨んできます」


「ん?」

 

 大きい方……。あ、つまりは背が高い方ね。そういうことにしておこう。うん。結果は同じ。大きい方は美雨。図形問題なら図より明らかなレベルでわかる。


 で美雨ね……。確かにぬいぐるみ部員が増えた嬉しさをケンミジンコの卵ほども表してないように見える。


「あの、この人は、僕の家の近くに住んでいる女の子で、いま中二で、ぬいぐるみ部に入ってくれるんだって。歓迎しまくろうな!」


「……」


 美雨が怖い。


 どうした。実は新種の暗号で何か僕に言ってきたりしてるのかなと思うくらいなぜここで何も言わないって感じなんだけど。


 美濃は美雨の肩をたたいてるけど、なんでだろう? 肩もみにしては優しげすぎる。


 謎の状況でどうしようと思っていたら、美雨が口を開いた。


「つまり……その子は、お菓子の袋を捨てに行ったらくっついてきて、だから優はすごくすごくすごく、にこにこにこにこしてんのね」


「そうだけど。何か問題がある……? 小規模部活に部員が入るのは、男子小学生がオオクワガタを捕まえることぐらいすごいことだよ」


 僕が言うと、美雨はほっぺをふくらませて、もともと童顔なのに超童顔になり、


「小学生のことに例えられてもわかんないんだけど」


 童顔のくせに態度の悪いJKな口調でそう言ってきた。


「美雨、ここは……です」


 美濃が美雨にささやいた。もちろん僕は聞こえない。美雨はうんと頷いて僕の鞄に手を突っ込んだ。


 ちょっとなんで勝手に僕の鞄を……。


 声に出す前に美雨は緑の漢字練習帳を取り出す。


「あのね、優はね、女子小学生が書いた漢字を眺めてにやにやしてるんだよ」


「ゆー先輩が……」


「そう。優はね、ぬいぐるみ大好きロリコンなの。だから女子小学生の漢字練習帳を持ち歩いてるわけ」


「ゆー先輩は、ぬいぐるみ大好きロリコン……」


「そういうことだから、すぐにそんな怪しい人とは離れた方がいいよ」


 大野さんが、ドライアイスの塊が滑るようにすーっと僕から離れる。


 それを見て、美雨は満足そうに笑った。


 僕のイメージを下げて何がしたかった。


 わけがわからない状態の僕に対して、大野さんは気づいたことがあるようだった。


「なるほど。面白そうな部活です。入る決意がさらに深まりました」


「そうか! よくわからないけど、それなら嬉しいな」


 僕がぬいぐるみ大好きロリコンだと説明されるとどうして入る決意が深まるのかはよくわからないけど。


 美雨がなぜか満足そうになったことだし、結果オーライということで。

お読みいただきありがとうございます。


また日にちが空いてしまって申し訳ございません……。



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