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階段を案内

 僕は先ほど通ったお土産屋さんの前を急いで通る。


 すると、また会った。


「あ、匂いフェチ! どうしたの? キモすぎて夕食会場追い出された?」


「違う……一人いないから呼びに行くんだよ」


「大変だね〜」


 店員の女の子は、手に作りかけのぬいぐるみを持ったままにやにやして僕をみた。


「やっぱり、ぬいぐるみを作るのが趣味なのか」


 僕は女の子の手元を見て言った。


「ふん。別に。本当は毎日都会をぶらぶらしてタピオカ飲みたいし」


 女の子は裁縫セットとぬいぐるみをお尻の後ろにかくした。


「僕タピオカ飲んだことないよ。渋谷も二回しか行ったことない」


「嘘? 都会でもぼっちだとそうなんだ。なんか安心したし」


「……」


 うざい言い方だなと思ったけど急がないとと思って、僕は女の子と別れ通路の先へと急いだ。


 エレベーターホールに着く。


 エレベーターの位置と進行方向を確認すると、しばらく来る気配がないことが発覚。


 階段ってどこだろう……?


 さっきの女の子に聞くか。また色々言われそうだけど。


 僕は引き返した。ちょうどお土産屋さんの前くらいで女の子に追いついた。


「な、なんかもどってきたし!」


「階段ってどこ?」


「階段……? つ、ついてきて。少し離れて私の匂いかがないで」


「はい……」


 匂いフェチだと思ってる人を案内してくれるとか親切じゃん。


 女の子は敵を監視しているなんかの小動物のような動きでさっさと歩き出した。


 エレベーターホールのさらに先に行き、一番廊下の突き当たりまで行って扉を開いた。


「はいここ」


「ありがとう……」


 僕のお礼と同時に大きな扉が閉まる音が響いた。


 女の子と僕は小さな踊り場に二人きりになる。


 僕は女の子が手に持っているぬいぐるみをよく見てみた。


 作りかけだけど……おそらく花だ。


 花を作ろうとしている。


「じゃ、これで。さようなら」


「おお……ありがと」


 女の子が扉を開けて出て行って、扉がまた音を響かせ閉まるまで、僕はぼーっとしていた。


 やばい。五階に急がないと。


 僕は階段を登る。


 すると、上から人が来た。


「ふああ。エレベーター全然こなくて、階段できたわ。てかよく寝たなあ」


 マイペースの我が班員の白深しろみだった。一応自分で来る意思はあったようで、まあよかった。


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