夕食会場
結局警戒されっぱなしのまま、店員の女の子と目も合わせられずにお土産屋さんを出た。
夕食会場にはすでにおいしそうすぎな料理が並んでいた。いい匂い。僕匂いフェチじゃないからこういうのに鼻つかうんだよ。わかってほしかったなあ。
その料理の写真を様々な角度からとっている人が一人。
「田植楽しそうだなまじで」
「料理の参考になるな……そしてすべての料理はお子様ランチに通ずる……」
田植凛太というのがこの人の名前で、僕と稲城と同じ部屋の人である。とても変人で、料理が大好きだという所まではまともだが、お子様ランチを作るのが特に好きで、小学生がもぐもぐしているところをうっとりと眺めていたという目撃情報がある。というか僕も目撃した。
だけど、料理やお子様ランチに対する情熱があるのはほんとだから、その点ロリコンと勘違いされてしまっている僕と似ているところがあるのかもしれない。
「で、写真撮るので忙しいのかもしれないけど、一つ思ったことがあるから訊いてもいい?」
「なんだ……?」
「僕たちの班の食器が隣の班とすごく離れているんだけどこれは何かあったの?」
「ああ……配膳を手伝う当番の生徒が気を遣ってくれたんだと思う……僕が写真撮りやすいように……」
「それほんと?」
絶対僕たちが変人だからこうやって離されてるんだとおもうんだよね。
いや……稲城はどう思う?って聞こうとする前に、稲城はパソコンを広げていた。
「自分がここで、パソコンを操作できるように気を遣ってくれたんだろうな」
……二人ともポジティブだな……だから変人のままなんだよ分かる? 僕みたいに匂いフェチだと思われて落ち込むのが正常だからな。
時間はそろそろ夕食直前。ほぼ全員が集合していた。
だけど、僕たちの班のあと一人の変人が来ない。
どこ行ったんだろうな。
「班全員そろったの?」
「え?」
見れば、旅行委員の人がいた。名前は知らないけど、結構かわいいといわれている人な気がする。だけど明らかにイラついていた。
「あ、まだ一人来てなくて。ごめん」
「迷惑だよそういうの。ご飯食べ始めるの送れるでしょ。小1の給食じゃないんだからね」
「すまない……」
写真を撮るのをやめて田植が謝った。
「あんまり自分勝手なことしてるとみかんに言いつけるよ」
「それは困る……」
みかんというのは田植の幼馴染で彼女だ。どうして付き合いが続いているのかはあんまよくわかんない。
「部屋で寝てるかもしれないから、僕呼ぶよ。だから、先食べてて」
僕は、急ぎ足で夕食会場を出て、部屋へと急いだ。