ぬいぐるみは買えた
「あ、優発見ー」
「発見です。あ、知らない女の子と仲良くなってます!」
仲良くなってないからね。匂いフェチ認定されてるからね。
でもナイスタイミングで来てくれたな美雨と美濃。
まあ夕食の時間だから通りかかって当然なんだけど。
というか美雨と美濃が来るまでに素通りした人たちは、いくら僕と仲良くないって言ったって匂いフェチ認定されてるんだから助けてくれてもいいのにな。
そもそもそんな状態になってることに気づかないか。
「いつもこの二人の女の子の匂いを堪能してるわけあんた」
店員の女の子は、美雨と美濃に気づいてすぐにこう言って来て、ついでに僕の手のぬいぐるみを奪って、袋に入れた。
あ、買うことは許してくれるのかよ。
そういやこの人は、この旅館の人の娘っていう認識でいいよね。よさそうだからそれで行こう。
「「?」」
というか美雨と美濃の様子に今更気づいたけどすごい。さすがの美雨と美濃も、あんまりよくわかってない。
そりゃあそうだよな。僕美雨と美濃の匂いとか……かいだことはあるけど、それはそっちからくっついて来てるんだからな。
「……えーと……」
「匂いフェチの友達はなんか買わないの? あ、で、匂いフェチは、早く千円だしてくんない?」
「あれ、六百円じゃなかったっけ……」
「四百円は私へのチップ。私の可愛さは、渋谷のと原宿のJKの上位1パーセントにも勝てるくらいだから。まあ私JCなんですけど」
「……」
「……なんで優、匂いフェチって呼ばれてるの?」
あ、やっと美雨が訊いてくれた。
「いやなんかぬいぐるみ観察してたら、匂いかいでるって思われて……」
「ああそういうこと」
「なるほど。優くんらしいです」
え? そんなことないよとか言って、否定してくれはしないの?
「あら、みんなぬいぐるみをきっかけにとても打ち解けていていいですね」
と、匂いフェチって決めつけてくるうざい女の子のお母さん。ぬいぐるみがきっかけだとお思いになりましたか。
そのまま夕食会場の方へと行ってしまった。
色々忙しそうだしいいんだけど、匂いフェチって思われたままなのはつらいなあ。
「どーぞぬいぐるみ。匂いかいで妄想するんでしょキモ」
店員の女の子は、いつの間にか手袋をはめていた。
手渡しするの嫌がりすぎ。ここまで勘違いされて嫌がられたのは初めてだな。
クラスでぬいぐるみ大好きロリコンだと思われてるのが、すごいましなことに感じてきた……。