過剰包装と久々で大人っぽくなっていたJC
「で、そろそろ始めよう活動を」
僕は漢字練習帳を閉じた。さようなら大きな「乳」。
「あ、その前に……優、あーん」
美雨が僕の口に……何かを押し込んだ。
甘い。ぽわーんと、ぬいぐるみが僕の頭の中でぐるぐるする。甘いチョコレートだ。
???
美雨の童顔が、いたずらっぽい幼い女の子の顔になっていた。
おかしい。好きな女の子にチョコレートを食べさせてもらったのに嬉しくない。
嫌な予感センサーが、ぬいぐるみの毛が全て逆立つくらいに作動する。
「はい。優も食べたね。と言うわけでお菓子のゴミ捨てじゃんけん参加権を得たよおめでとう」
いやあ、せこい!
「はいさいしょはぐ、じゃんけんぽい」
素早くじゃんけんを始められて僕は慌てて出したのがグー。美雨と美濃はパーパー。
負けたんだけど……。
ぽんと、お菓子の空袋のかたまりを渡される。過剰包装って良くないとこの時改めて思った。
僕は手を振って見送ってくれる美雨と美濃を背に音楽室楽器置き場裏を去った。
見送り方は新幹線で遠いところに行く時並みなのに、やらせてることはせこすぎて、僕はお菓子の空袋を覗き込んでため息をついた。
音楽室はお菓子を食べるの禁止ゾーン。音楽室楽器置き場裏はセーフだと思いたい。
でもなんとなくこそこそと僕は音楽室を通り過ぎて、廊下へと出た。
廊下の階段の近くに設置されたゴミ箱までたどり着き、そこに捨てる。
「あっ、ゆー先輩、お久しぶりですね。うん、はいっ、長いこと見てなかったけどやっぱりゆー先輩ですね」
音楽室楽器置き場に戻ろうとした僕は聞いたことのある声を聞いた。
「おお、こんにちは」
割と僕はびっくりした。
大野雫。家がすぐ近くで小学校は同じだった。でも学年が違えば話さないのが普通で、実際そこまで話したことがない。
だから突然話しかけられて驚いたってことだ。というかこの学校にいたことも知らなかった。
僕が通っている学校は渚ヶ丘学園という名前で、中高一貫。
ちなみに美雨も美濃も僕も高二で、三人とも高校から渚ヶ丘に入学した。
「あれ、大野さんは、今……」
「中ニです」
なるほど。そうか。まだ中ニか。若くていいなあ。
「ゆー先輩って食いしん坊立ったんですね。意外なかんじです」
「……?」
「あ、いやあの、さっきゴミ箱にたくさんお菓子の袋を捨ててたのでそうかなって思ったわけです」
大野さんは、ゴミ箱を指差した。
「違う違う。あれはほとんど僕の友達二人が食べたやつだから」
「あ、そうなんですか、ということはゆー先輩には放課後を一緒に過ごすお友達がいるということが推察できますね。一人でぬいぐるみを作って自給自足していると思っていたので意外です」
「おお……」
自給自足って……。僕ぬいぐるみ食べないからな。まあさっき食べようとしてる人たちがいたわけだけど……。
「じゃ、僕は戻るね」
僕は音楽室の方へと歩き出したが、そうしたら、大野さんもついてきた。
「あ、もしかして音楽部?」
「音楽部? 私は超音痴ですよ。私がこっちに歩いてるのはゆー先輩にくっつくためです」
そう言って物理的にもくっついてくる大野さん。大野さん、小学生の頃に比べてなんかすごい大人っぽくなったな……。
あとずっと思ってたことがあるんだけど、スカートが短めで、太ももが窓から入る放課後の日差しを反射しまくりでああ美しい。
「ゆー先輩、私の脚がどうかしましたか?」
「ああ……違う。考え事をしてたから頭が傾いてただけ」
「考え事ってなんですか?」
「お、お菓子の過剰包装の問題についてかな」
「なるほど。お菓子の過剰包装が良くないと思いながら太ももの過剰包装も良くないと思ったわけですね。露わになっている太ももが男の子は好きなんですよね」
「……」
つまりは僕の考えてることがバレていたわけですね。いち早く音楽室楽器置き場裏に着きたい。
で大野さんはどこまでくるのかな。
「……音楽室入るけど」
「はい」
「??」
「あっ。 言っていなかったですかそういえば。私、ぬいぐるみ部に入りにきたんです」
「え? うおおおお!」
新入部員! ついに後輩が、ぬいぐるみ部に入った!
嬉しすぎる。もちろんJCにくっつかれていることよりも嬉しい。たぶん。
これはさぞかし美雨と美濃もぬいぐるみが宙を舞うくらい喜んでくれるだろうな。
お読みいただきありがとうございます。
相変わらず低頻度で申し訳ございません。
ぬいぐるみ部に後輩が入りました。